第二話 目覚め
目を開ける。
見知らぬ天井だった。
木でできた天井。
見たことのない部屋。
私はぼんやりとそれを見上げた。
しばらくして。
体を起こそうとする。
少し重い。
けれど動けないほどではなかった。
窓から柔らかな光が差し込んでいる。
どれくらい眠っていたんだろう。
分からない。
考えるのも少し面倒だった。
ふと視線を横へ向ける。
そこに桃色の鳥がいた。
手のひらほどの小さな鳥。
私と目が合う。
「ぴぃ」
小さく鳴いた。
その時だった。
部屋の扉が開く。
視線を向ける。
森で会った少年。
少年は私を見る。
少しだけ目を瞬いた。
そして。
「起きたんだ」
それだけだった。
私は何か言おうとする。
声が出ない。
喉に力を入れる。
けれど何も出なかった。
少年はしばらく見ていた。
そして。
「喋れないの?」
私は小さく頷く。
少年も頷いた。
「そう」
それだけだった。
同情もしない。
驚きもしない。
ただ受け入れただけ。
不思議な人だと思った。
部屋に沈黙が落ちる。
何を話せばいいのか分からない。
少年も同じなのかもしれなかった。
やがて少年は立ち上がる。
「待ってて」
そう言って部屋を出ていった。
残されたのは私と鳥。
鳥は当たり前のようにベッドへ飛び乗る。
そして私の隣に座った。
「ぴぃ」
何かを話しているようだった。
思わず少しだけ口元が緩む。
すると。
勢いよく扉が開いた。
「起きたのね!」
元気な声。
入ってきたのは女性だった。
三十代くらいだろうか。
明るい茶色の髪を後ろでまとめている。
「よかったぁ!」
女性は私の傍へやって来る。
「もう三日も眠ったままだったのよ!」
三日。
そんなに。
私は少し驚く。
女性はほっとしたように笑った。
「どこか痛いところは?」
私は首を横に振る。
「そう。よかった」
本当に安心したような顔だった。
私はその顔を見つめる。
知らない人。
知らない場所。
それなのに。
なぜだろう。
少しだけ安心した。
「何か食べられそう?」
私は少し考える。
お腹が空いているのか。
そうじゃないのか。
よく分からなかった。
けれど。
三日も眠っていたという言葉を思い出す。
小さく頷いた。
「よかった」
女性は笑った。
「今すぐ何か持ってくるから待っててね」
そう言って部屋を出ていく。
扉が閉まる。
再び静かになる。
私は視線を上げる。
少年はまだそこにいた。
壁にもたれかかっている。
何をするでもなく。
ただいるだけ。
少しだけ視線が合う。
けれど。
何も言わない。
私は……声が出ない。
沈黙。
不思議と嫌ではなかった。
暖かな風が吹いていた。
私は小さく目を閉じる。
風の神国で聞いた言葉。
ヴァスキさんの声。
ヴェル様の声。
黒い雷。
胸が少しだけ苦しくなる。
けれど。
今は考えたくなかった。
ただ。
休みたかった。




