第三十話 星の夢
その夜。
私は夢を見た。
どこまでも続く星空。
足元にも。
頭上にも。
無数の星が広がっている。
不思議な場所。
けれど。
怖くはなかった。
「おかえり」
声がした。
振り返る。
そこには。
あの少年がいた。
「あなた、声の人、だよね……?」
少年は小さく笑う。
以前より近い。
それなのに。
顔だけは、どうしてもはっきり見えなかった。
しばらく。
互いに言葉を探すような沈黙が続く。
先に口を開いたのは私だった。
「……ねぇ、何か知ってるの?」
少年は何も言わない。
「私は何なの?」
問いかける。
それでも答えは返ってこない。
胸の奥が少しだけ苦しくなる。
「私……帰れるの?」
一番聞きたかったこと。
家族の顔が浮かぶ。
帰りたい。
その気持ちは今も変わらない。
少年は少しだけ目を伏せた。
そして。
困ったように笑う。
「ごめんね」
静かな声だった。
「今は、何も、答えられない」
やっぱり。
少しだけ肩が落ちる。
けれど。
少年は続けた。
「でも」
星空を見上げる。
「いつか」
「キミは全てを知ることになる」
風が吹く。
星が流れる。
私は黙ってその言葉を聞いていた。
「ボクのことも」
「キミのことも」
胸が小さくざわつく。
けれど。
意味は分からない。
「全然分からないよ」
思わずそう言うと。
少年は少しだけ寂しそうに笑った。
「うん」
それから。
優しく言った。
「来るべき時に」
「キミが」
「キミの道を選べることを」
「祈ってる」
キミの道。
その言葉だけが。
不思議と胸に残った。
「私の道……」
呟く。
少年は静かに頷いた。
星が揺れる。
風が吹く。
私はもう一度少年を見る。
「あなたは誰なの?」
少年は少し困った顔をした。
それから。
ふっと笑う。
「それも」
「いずれ分かるよ」
その瞬間。
星空が光に包まれた。
◇◇◇
目を開ける。
そこは見慣れた部屋だった。
窓から朝日が差し込んでいる。
夢。
そう思ったのに。
胸の奥には。
不思議な温もりだけが残っていた。




