第二十八話 神託
「ヒカリさん」
保護区から戻った翌日。
シュルティに呼ばれた。
案内された部屋にはヴェルもいる。
少しだけ緊張しながら席に着いた。
「ヒカリ」
ヴェルが静かに口を開く。
「先日の襲撃についてだ」
自然と背筋が伸びた。
「聞いておきたいか?」
怖い。
思い出したくない。
けれど私は頷いた。
「……はい」
◇◇◇
「実行犯は拘束した」
ヴェルが告げる。
「先王派の神官たちだ」
シュルティが説明を引き継ぐ。
「彼らは古い神託を信奉しています」
そして静かに口にした。
「星の欠片、現し世にその姿を現す時」
「時至りて、神の世は終焉へと向かわん」
聞き覚えがあった。
襲撃の日。
あの神官達が叫んでいた言葉だ。
「先王派は、星の欠片こそ終焉の象徴だと考えています」
私は思わず手を握る。
「だから……私を?」
「その可能性は高いでしょう」
けれど。
少しだけ引っ掛かった。
「でも、その神託って」
二人を見る。
「星の欠片が現れるって言ってるだけですよね?」
「終焉を起こすとは書いてないような……」
一瞬の沈黙。
やがてシュルティが微笑んだ。
「その通りです」
「神託は解釈次第ですから」
少しだけ肩の力が抜けた。
◇◇◇
「犯人達への裁定は終わった」
ヴェルが続ける。
「ただし黒幕がいる可能性が高い」
「まだいるんですか……?」
「分からない」
短い返答だった。
けれど、その声には確信が滲んでいた。
◇◇◇
「あの日の声についても調べました」
シュルティが言う。
「しかし、聞こえたのはヒカリさんだけです」
やはり私だけだったらしい。
あれほどはっきり聞こえたのに。
◇◇◇
「そして最後に」
ヴェルが話題を変える。
「神力についてだ」
「神力?」
「ああ」
ヴェルは頷いた。
「マナを自覚した影響かもしれん」
「目覚め始めている可能性がある」
何だか大事な話らしい。
「試してみるか」
「試す?」
「初めて会った頃のように」
そう言って手を差し出した。
固まる。
手。
また手。
風の神殿での出来事が脳裏をよぎる。
「……なんか恥ずかしいんですけど」
「?」
ヴェルが首を傾げた。
本気で分かっていない顔だった。
「手ですよね!?」
思わず立ち上がる。
「手の話ですよね!?」
その瞬間だった。
ぽわっ。
「え」
光が生まれた。
まだ触れてもいない。
ぽわっ。
ぽわぽわっ。
次々と光が溢れ出す。
「なっ」
「何で今!?」
シュルティが口元を押さえる。
ヴェルは目を瞬いた。
光はしばらくの間、部屋を漂い続けた。




