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星と呼ばれた少女  作者: さかい
風の神国
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24/53

第二十四話 星の欠片 前


神官の後を追う。


庭園を抜け。


神殿の奥へ。


祭りの喧騒は少しずつ遠ざかっていった。


「あの」


ヒカリは小さく声を掛ける。


「シュルティさんはどちらに?」


神官は振り返らない。


「もうすぐです」


それだけだった。


どこか。


違和感があった。


けれど。


今さら引き返す理由もない。


ヒカリは黙って後を追った。


◇◇◇


辿り着いたのは北の保護区だった。


風が吹く。


木々が揺れる。


見慣れた景色。


「あれ?」


思わず辺りを見回す。


誰もいない。


「シュルティさん?」


返事はない。


静かだった。


その時。


背後で足音がした。


振り返る。


先ほどの神官。


そして。


いつの間にか増えていた神官たち。


ヒカリの心臓が跳ねた。


「あの……?」


誰も答えない。


代わりに。


年配の神官が一歩前へ出た。


その瞳には冷たい光が宿っていた。


「星の欠片」


聞いたことのない呼び方だった。


「……え?」


神官は構わず続ける。


「星の欠片」


「現し世にその姿を現す時」


「神の世は終焉へと向かわん」


静かな声。


まるで祈りの言葉のようだった。


「我らは終焉など迎えん」


意味が分からない。


ただ。


嫌な予感だけが胸を締め付けた。


「何を言って……」


年配の神官がヒカリを見据える。


「貴様は星の欠片」


「終焉をもたらす存在だ」


息が止まる。


「……え?」


頭が追いつかない。


「ゆえに」


神官が一歩踏み出す。


「ここで消えてもらう」


◇◇◇


神官の一人が前へ出る。


その手には細い刃が握られていた。


――あれは。


刃物?


ヒカリは目を瞬く。


どうして。


なんで。


シュルティさんに呼ばれたはずなのに。


祭りの日なのに。


さっきまでみんな笑っていたのに。


私。


殺されるの?


そう思った。


思ったのに。


不思議と現実味がなかった。


まるで他人事みたいに。


頭のどこかが理解を拒んでいる。


怖い。


怖いはずなのに。


身体が動かない。


逃げなきゃ。


そう思うのに。


足が地面に縫い付けられたみたいだった。


その時だった。


「ふわ!」


足元から声が聞こえる。


見下ろす。


小さなフワモだった。


「ふわ! ふわ!」


必死に鳴いている。


まるで。


逃げろと言っているみたいに。


「フワモちゃん……」


神官が一歩前へ出る。


小さなフワモはヒカリの前へ飛び出した。


「ふわっ!」


神官を威嚇するように。


小さな身体を精一杯大きく見せる。


「やめて……」


声が震える。


お願いだから。


逃げて。


ぽよ。


ぽよ。


ぽよ。


気付けば。


他のフワモたちも集まっていた。


皆。


ヒカリの前に立っている。


「退け」


神官が冷たく言い放つ。


フワモたちは動かない。


次の瞬間。


「ふわーーーーーっ!!」


小さな身体が蹴り飛ばされた。


「――っ!」


声が出ない。


駆け寄る。


震える手で抱き上げる。


ふわふわの身体。


いつもなら温かいはずなのに。


ぐったりとして動かない。


「フワモちゃん……?」


返事はない。


「フワモちゃん……!」


喉が震える。


胸が苦しい。


どうして。


どうして。


私なんかのために。


「ごめんね……」


ぽつりと零れる。


「ごめんね……」


私なんかを守ろうとしたから。


私なんかのために。


その時だった。


――パリッ


何かが弾ける音がした。


――パリッ


――パリッ


足元から風が吹き上がる。


光。


淡い光の粒。


それが次々と生まれ。


ヒカリの周囲を渦巻き始めた。


風が強くなる。


草木が揺れる。


神官たちが思わず後退った。


「なっ……!?」


「なんだ……!?」


光は増える。


風はさらに強くなる。


まるで。


何かが目覚めようとしているみたいに。


「貴様……!」


年配の神官が目を見開く。


「何をしようとしている!?」


ヒカリには分からない。


ただ。


胸が苦しくて。


悲しくて。


「ごめんね……」


涙が零れる。


その時だった。


『ダメだよ』


優しい声。


夢で聞いた声だった。


ヒカリは息を呑む。


『落ち着いて』


『キミの力は、まだ眠っているから』


風が弱まる。


光が散る。


その瞬間だった。


轟ッ――!!


黒い嵐が降り立った。

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