第二話 神託の石
強い光が広がった。
一瞬。
だが。
次に空を見上げた時。
そこには少女がいた。
淡い光に包まれながら。
ゆっくり、
空から落ちてくる。
誰も動けなかった。
少女は真っ直ぐ神託の石に向かい落ちていく。
そして。
触れた。
その瞬間。
聖石に亀裂が走る。
一本。
また一本。
音もなく広がっていく。
やがて。
長い役目を終えたかのように。
聖石は静かに崩れ落ちた。
誰も声を出せない。
ただ。
砕けていく石を見つめることしかできなかった。
◇◇◇
体が痛い。
頭も痛い。
というか全身が痛い。
「うぅ……」
私はゆっくり目を開いた。
真っ先に飛び込んできたのは、どこまでも青い空だった。
「……空?」
おかしい。
確か私は学校にいたはずだ。
流星群を見て。
それから――。
そこから先が思い出せない。
私はゆっくりと体を起こした。
そして。
固まった。
目の前には巨大な石があった。
いや。
あった、というより。
壊れていた。
真っ二つどころじゃない。
粉々だった。
周囲には砕けた破片が散乱している。
ものすごく嫌な予感がした。
その時だった。
「ひっ……!」
近くから小さな悲鳴が聞こえた。
振り返ると白い服を着た人たちがいた。
みんな顔色が悪い。
というか。
青ざめている。
壊れた石を見ていた。
私は恐る恐る口を開いた。
「あの……」
誰も返事をしない。
「ここは……」
さらに沈黙。
「せ、聖石が……」
「神託の石碑が……」
「砕けている……」
私はぎゅっと肩を縮める。
そして。
消え入りそうな声で言った。
「……ごめんなさい」
逃げたい。
でも逃げられない。
だってどう考えても私が関係している。
私は何が起きたのか分からず辺りを見回した。
白い服を着た人たち。
砕けた石。
そして。
その中に一人だけ。
落ち着いた様子の男性が立っていた。
白金色の長い髪。
新緑色の瞳。
整いすぎた顔立ち。
現実感がない。
綺麗すぎて。
本当に生きている人間なのか分からなかった。
男性は私を見る。
次に砕けた石を見る。
そしてまた私を見る。
怒っているようには見えなかった。
でも。
何を考えているのかも分からなかった。
長い沈黙。
やがて男性は口を開く。
「ヴァスキ」
「はい」
黒髪の男性が一歩前へ出る。
「任せる」
「承知しました」
それだけだった。
私は思わず瞬きをする。
え。
終わり?
男性は砕けた石へ視線を向けている。
長い沈黙。
「……また仕事が増えた」
誰に言うでもなく呟く。
心底疲れたような声だった。




