第十九話 夫婦
翌日。
ヒカリは呼び出されていた。
目の前にはヴァスキ。
机の上には数枚の報告書。
嫌な予感がする。
とても。
「ヒカリさん、あなたは何故、忠告を無視して暴走をするのですかね」
笑顔が怖い。
視線が自然に床にむく。
「ヴェル、貴方もです。なぜこの文化災害を放置していたんですか」
「災害……」
思わず復唱した。
酷い言われようだった。
「……日傘って、目にも、肌にも、職人にも優しい良いものですよ?」
「良し悪しの話ではありません」
ヴァスキは淡々と言う。
「問題は影響力です」
そして。
すっと視線を横へ向ける。
ヴェルはなぜか普通にお茶を飲んでいた。
「仲良く食べ歩きをして。
新しい日よけの傘を仕立ててもらって。
その傘で空を飛んだ。」
ヒカリは固まった。
見られていた。
思った以上に見られていた。
「……すみませんでした」
「ヒカリだけの責任ではありません」
ヴァスキは言う。
そして。
「ヴェル」
「なぜ止めなかったんですか」
「楽しそうだった」
即答だった。
ヴァスキは頭を押さえた。
◇◇◇
「まぁまぁ」
穏やかな声が響く。
シュルティだった。
「落ち着いてくださいな」
「落ち着いています」
「そうは見えませんよ」
シュルティは微笑む。
そして。
「今度、休みの日にわたくしたちも行きましょう」
ヴァスキが止まった。
「羨ましいとかではないんですよ」
誰も聞いていない。
「……まぁ、行きますけど」
行くんだ。
ヒカリは首を傾げた。
何か。
妙な違和感があった。
今。
聞き逃してはいけない言葉があった気がする。
「ん?」
考える。
「んんん?」
そして。
気付いた。
「あの」
三人がこちらを見る。
「反省より気になることがありまして」
「はい?」
シュルティが首を傾げる。
「お二人って」
ヒカリはシュルティとヴァスキを交互に見た。
「お付き合いされてるとかですか?」
沈黙。
一秒。
二秒。
三秒。
そして。
「夫婦だ」
ヴェルが答えた。
ヒカリの思考が止まった。
「んんんんんん!?」
立ち上がった。
「ふぅーーーふーーーー!?」
自分でも何を言っているのか分からない。
シュルティが目を丸くする。
「あら」
「ご存知ありませんでしたか?」
知らなかった。
全く知らなかった。
「えっ」
「えっ」
「夫婦?」
混乱する。
「夫婦です」
「本当に?」
「本当です」
夫婦だった。
本当に夫婦だった。
ヒカリはしばらく言葉を失った。
その姿を見ながら。
ヴァスキは小さくため息を吐いた。
「まずは日頃の行いを反省してください」
「ふぅーーーーーふーーーー!?」
この国で保護されて早幾月…
衝撃の事実だった。




