第十八話 寂しそうな瞳
城へ戻ると。
「お帰りなさい」
聞き慣れた声がした。
振り返ると、シュルティが微笑んでいる。
「ただいまです!」
ヒカリは元気よく手を振った。
そして。
「あ、そうだ」
思い出した。
「今日、シュルティさんに似た女の人の肖像画を見たんですよ」
「肖像画ですか?」
「はい」
ヒカリは頷く。
「アストリッドって書いてありました」
ぴたり。
シュルティの動きが止まった。
本当に一瞬だけ。
「……そんなに似ていましたか?」
「んー」
ヒカリは少し考える。
「印象は違うんですけど」
「なんとなく似てる感じがしました」
目元だろうか。
雰囲気だろうか。
上手く説明はできない。
シュルティは少しだけ目を丸くした。
「あまり似ているとは言われないのですが」
「従姉妹だったんです」
「親戚だったんですね!」
なるほど、とヒカリは頷く。
だから似ていると思ったのか。
「なんか機嫌の悪そうな表情でした」
シュルティは数秒黙った。
それから。
ふっと笑う。
「ええ」
「きっと機嫌が悪かったのでしょう」
「やっぱり」
ヒカリは思った。
あれは気のせいではなかったらしい。
「そうですね」
シュルティは少しだけ考える。
「じっとしているのが苦手な人でしたから」
「不機嫌が肖像画から伝わってきました」
「それは凄いですね」
どんな人だったのか聞こうかと思ったけどやめた。
シュルティさんも。
ヴェル様も。
どこか寂しそうな瞳をしたから。
上手く言えない。
けれど。
きっと自分の知らない何かがあるのだろう。
そう思った。
◇◇◇
その頃。
別室。
一人の神官が報告書を差し出していた。
ヴァスキは黙って目を通す。
一枚。
もう一枚。
さらにもう一枚。
静かな部屋に紙をめくる音だけが響く。
やがて。
ヴァスキは報告書を閉じた。
そして。
ぽつりと呟く。
「………やらかしましたね」
部屋にいた神官は思わず背筋を伸ばした。
何かが起きたらしいことだけは分かった。




