第八話 灯る夜
夕食を終えたあと。
私はヴェル様とヴァスキさんに誘われて、夜の街を歩いていた。
昼間の賑わいとは違い、街は静かな時間を迎えている。
石畳の道を照らすのは、街灯に埋め込まれた蓄光石。
柔らかな光が街を包み込み、昼間とはまた違った表情を見せていた。
「何だか三人になるの、すごく久しぶりですね。」
私がそう言うと、ヴァスキさんが穏やかに微笑む。
「そうですね。」
「風の神国では、よく三人で歩いていましたから。」
懐かしさに浸っていると、ヴァスキさんが私へ視線を向けた。
「ヒカリさん。」
「最近、少し修練不足気味ですので、そろそろ再開しましょうか。」
「えぇっ!?」
思わず肩を落とす。
ヴェル様が小さく笑った。
「ヴァスキはしつこいからな。」
「た、助けてください……。」
そんな他愛もない話をしながら歩いていると、ふと疑問が浮かんだ。
「そういえば。」
私は二人を見比べる。
「おふたりって、いつから一緒なんですか?」
「三歳くらいだったな。」
答えたのはヴェル様だった。
「父上がヴァスキを連れてきた。」
「私が竜族というのはお話しましたよね?」
「一族の村が襲撃に遭い、生き残った私を助けてくださったんです。」
「そのまま養子として迎えていただきました。」
「へぇ……。」
「じゃあ、お兄さんはヴァスキさん?」
「いや。」
ヴェル様が即座に首を横へ振る。
「私が兄だ。」
「……いえ、私ですね。」
ヴァスキさんが静かに訂正する。
「違う。」
「年齢は私の方が上ですが?」
「兄らしさの話をしている。」
「年齢の話です。」
「兄らしさだ。」
二人とも真顔だ。
「……。」
私はしばらく二人を見比べる。
男性という枠を超えて美しいヴェル様。
黒髪に少し濃い肌をした、凛々しいヴァスキさん。
うん。
どちらも眼福である。
「うんうん、仲良しなんですね。」
二人は何とも言えない表情を浮かべていた。
そんなやり取りをしながら歩いていると、前方が一際明るく輝いていることに気付く。
「あれ?」
街灯とは違う。
柔らかな光が、一か所へ集まっていた。
近付いてみると、職人街の入り口に、小高く積み上げられた無数の蓄光石があった。
白く、淡く。
まるで夜空から星を集めてきたように、静かに輝いている。
「わぁ……。」
思わず声が漏れる。
「石が光っていますね。」
昼間に見た蓄光石よりもずっと多い。
大きなもの、小さなもの。
様々な形の石が、優しい光を放ちながら積み上げられていた。
「綺麗だな。」
ヴェル様も静かにその光景を見つめる。
夜風がそっと頬を撫でた。
昼間は人々の知恵に驚いた。
そして今は、その知恵が生み出した光に心を奪われている。
地の神国は、本当に不思議な国だった。




