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星と呼ばれた少女  作者: さかい
地の神国
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第五話 神力ではない光


 街へ入ってからというもの。


 私はきょろきょろと辺りを見回していた。


 石畳の道。


 木と石で造られた建物。


 道沿いには、今まで見たことのない不思議な装置がいくつも並んでいる。


「なんだか、他の国にも増して見慣れないものが多いですね」


 街並みを見渡しながら、思わず呟く。


「そうだね」


 カグツさんは嬉しそうに頷いた。


「各国それぞれ特色は強いけど、ここは特にそうかもしれない」


「ほら、例えばあの街灯」


 カグツさんが指差した先には、石造りの街灯が一定の間隔で並んでいた。


「あれには『蓄光石』っていう鉱石が使われているんだ」


「日の光を蓄える性質があってね」


「暗くなると、内部の仕組みで光を放つようになっている」


 私は街灯を見上げる。


「……日の光を?」


「そう」


 カグツさんは頷いた。


「神力を使わなくても、こうして夜を照らせるように考えられているんだ」


「すごい……」


 思わず声が漏れる。


 神力ではない。


 けれど、そこには人の知恵と工夫が詰まっていた。


 カグツさんは、そんな私を見て小さく笑う。


「地の神国が神力に頼らない力を発達させたのはね」


「この国に生きる民たちの神力が、もともとあまり強くないっていうのも一つの理由なんだ」


 私はもう一度、街を見渡した。


 人々は誰一人として、その装置を特別なものとは思っていない。


 当たり前のように使い、当たり前のように暮らしている。


「だから、自分たちの手で暮らしを良くする方法を考え続けてきた」


 見慣れない景色。


 けれど、そのどれもが人々の暮らしに溶け込んでいた。


「まぁ」


 カグツさんは空を見上げる。


「この世界全体として、神族も神力も、いつかは少しずつ減っていくんだろうね」


 その言葉に、胸が少しだけざわつく。


(……レンも言っていた)


(神族は、種として生き続けることはできないって)


 あの時の真剣な表情が脳裏に浮かぶ。


「とは言ってもね」


 カグツさんは苦笑いを浮かべた。


「やっぱり、自分たちが滅びに向かっているとなると、問題も多い」


「そう簡単な話じゃないんだよ」


 ヴァスキさんも静かに頷く。


「そうですね」


「特に風の神国では、さまざまな対策を講じていますが、大きな効果は見られていません」


「現在は、こう着状態と言っていいでしょう」


「でもね」


 カグツさんの表情は穏やかだった。


「神族の数は減っても、他種族と共に生きていくことはできる」


「血が混ざり、新しい命が生まれる」


「世界は終わるんじゃない」


「少しずつ姿を変えながら、続いていくんだ」


 滅びるのではなく、変わっていく。


 その考え方は、どこか地の神国らしい気がした。


 失われていくものばかりを数えるのではなく。


 これから生まれていくものを信じている。


 そんな国なのかもしれない。


「いやぁ」


 カグツさんは肩をすくめ、大げさにため息をつく。


「ほんと、王様なんて苦労しかないからさ」


「いっそのこと、廃止になってほしいよなぁ〜」


「カグツさん……」


 思わず苦笑する。


「そんなことを言ったら、火の神国の人たちが困りますよ」


「そうですね」


 ヴァスキさんが穏やかに微笑む。


「カグツ様は、それでも、王であり続けることを選ばれたのですから」


 カグツさんは照れくさそうに頭をかいた。


「そういう真面目なこと言うなって」


「せっかく笑い話にしたのに」


 その言葉に、思わず笑みがこぼれる。


 私も、ヴェル様も、ヴァスキさんも笑っていた。


 神力だけが、この世界を支えているわけじゃない。


 人の知恵。


 人の工夫。


 そして、変わり続けようとする意志。


 地の神国は、神力に頼らない未来を、誰よりも早く見つめ始めていた。


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