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星と呼ばれた少女  作者: さかい
地の神国
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第二話 家族みたい


 目を覚ますと。


 馬車は止まっていた。


 窓の外は、夕焼けに染まっている。


「起きた?」


 馬車の外からレンの声が聞こえた。


「……うん」


 扉が開く。


 レンがそっと手を差し出した。


 私はその手を借りて馬車を降りる。


 ずっと座っていたせいか、少しだけ身体が重い。


「休めた?」


「うん。少し、だけど」


 レンは小さく頷く。


 それ以上は何も聞かなかった。


 街道脇には小さな広場があり、みんなは野営の準備を始めていた。


 カグツさんは鼻歌を歌いながら薪を組み、


 ヴァスキさんは手際よく火を起こしている。


 ヴェル様は近くの川から水を汲んできたようだった。


 私はその様子をぼんやり眺める。


 こういう時間も。


 慣れたものになっている。


 不思議だ。


 最初は誰も知らない世界だったのに。


 今では、この光景が当たり前になっていた。


「……ねぇ、レン」


「?」


「レンとはさ、もう一年以上一緒だね」


「……そう、だね」


「最初は、行き倒れていたところを助けてもらって」


「そのまま水の神国まで連れて行ってくれて」


 レンは静かに頷く。


「ふふ」


「あんなに本を見て回ったの、初めてだったな」


「たくさん迷子にもなったし」


「ご当地グルメもいっぱい食べたよね」


 思い返せば。


 笑ってしまうことばかりだった。


「気付けば火の神国まで旅をして」


「色んな人に出会って」


「色んな景色を見て」


 昨日のことみたいに思い出せる。


「……楽しいこと、多かったね」


 レンは静かに頷いた。


「色々無茶するし」


「本気でムカつく時もあるけど」


 レンは少しだけ眉をひそめる。


「でも」


「ずっと一緒にいられるのって、すごいよね」


「……なんか、家族、みたい」


 その言葉に。


 レンは少しだけ目を丸くした。


 けれど、何も否定はしない。


 静かに。


「……そう」


 それだけ答えた。


 私は空を見上げる。


 夕焼けが少しずつ夜へ変わっていく。


 隣には。


 いつものようにレンがいた。


 それだけで。


 少しだけ、安心できた。


 しばらく。


 二人とも何も話さなかった。


「……ヒカリ」


 レンがぽつりと口を開く。


「ん?」


「このまま」


「二人で、旅でもする?」


 私は目を丸くした。


「……え?」


「神聖樹へ行かないで」


「世界を回る」


 あまりにも自然な口調だった。


 まるで。


 明日はどこの街へ行こうか。


 そんな話をするみたいに。


「レンは……それでいいの?」


「世界がどうとか」


「神聖樹とか」


「気にならないの?」


 レンは少しだけ考える。


「全く気にならない、ではないけど」


 静かな声だった。


「神族が滅びるなら」


「……それも仕方ない。」


 私は思わずレンを見る。


「どんな種族も」


「永遠には生き続けられない。」


 風が頬を撫でる。


「だから」


 レンは私を見る。


「ヒカリと笑っていられる方がいい。」


 胸が締め付けられる。


 私は。


 こんなことを言ってくれる人がいるなんて。


 思ってもみなかった。


「……レンと二人旅かぁ」


 思わず笑う。


「うん。」


「きっと」


「楽しい、ね」


 レンは静かに頷いた。


 あぁ、もし。


 何も背負わなくていいのなら。


 そんな未来も。


 悪くないのかもしれない。


 少しだけ。


 そう思えた。


 空はすっかり暗くなっている。


 私は夜空を見上げた。


 星は静かに。


 私たちを見守っていた。


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