第三十三話 会えたね
――ホムラ。
その名前が。
暗闇へ響く。
レンはゆっくりと顔を上げた。
――ホムラ。
その言葉は。
胸の奥で。
何かを優しく揺らしていた。
暗闇の向こうから。
柔らかな光が差し込む。
眩しくはない。
どこか懐かしい。
温かな光だった。
「やっと。」
「届けられたね。」
「あなたへ。」
「あなたのマナ。」
光の中から。
一人の女性が姿を現す。
穏やかに微笑みながら。
レンを見つめていた。
レンは目を見開く。
「……母上?」
女性は優しく微笑む。
「私と。」
「あの人の。」
「大切な宝物。」
一歩。
レンへ近付く。
「ずっと。」
「愛してるわ。」
「私は。」
「私の魂は。」
「いつだって。」
「あなたのそばにいる。」
レンは何も言えない。
ただ。
その姿を見つめ続けた。
女性は穏やかに頷く。
「帰りなさい。」
「あなたを。」
「待っている人たちのところへ。」
光が。
ゆっくりとレンを包み込む。
レンはゆっくりと目を開く。
「……。」
黒い靄が。
ぴたりと動きを止めた。
男は小さく肩を竦める。
「あぁ。」
「ここまでだね。」
残念そうに。
けれど。
どこか楽しそうに笑う。
「せっかく。」
「面白くなりそうだったのに。」
一拍。
レンを見つめる。
「この体も限界みたいだし。」
「仕方ないか。」
ふっと笑う。
「また、ね。」
その言葉だけを残し。
男の身体は。
黒い靄に包まれて消えていく。
亡者たちは。
一体。
また一体と。
力を失い。
静かに倒れていった。
ようやく。
静寂が訪れる。
その時だった。
私の腕輪が。
淡く輝き始める。
「……え?」
同時に。
ピンクちゃんの身体も。
柔らかな光を放った。
レンの腕輪。
そして。
ヴェル様の首元に掛かるネックレスまでもが。
共鳴するように光り始める。
光は一つとなり。
夜空へ伸びていく。
眩い輝きの中。
一人の少年が。
静かに姿を現した。
「やぁ。」
どこか懐かしい笑みを浮かべ。
少年は私たちを見渡す。
「ようやく。」
「会えたね。」
その声は。
優しく。
世界そのものに響くようだった。




