第十話 居場所
図書室へ通うようになってから分かったことがある。
私は、歓迎されていないらしい。
神託の石を壊した不審者。
まぁ、壊した可能性は否定できない。
でも故意じゃなくて事故だよね?
けれど事情を知らない人からしたら、壊そうと思っても壊せない神聖な物を破壊したゴリラなのだろう。
廊下を歩けば視線を感じる。
ひそひそと話す声も聞こえる。
怖がる人。
怒っている人。
そのどちらもいた。
仕方ない。
私だって立場が逆なら警戒すると思う。
快く思わない人がいても不思議ではない。
ただ。
図書室の人たちは違った。
翻訳を手伝ううちに、少しずつ話をする人も増えた。
最近では本を持ってきてくれるだけではなく、雑談までしてくれる。
正直、ありがたい。
そしてもう一つ。
こんなことを言っていいのか分からないけれど。
風の神国のおやつは少し残念だった。
今日のおやつはクッキー。
昨日はパウンドケーキ。
どちらも決して不味くはない。
不味くはないのだが。
何かが違う。
味気ないクッキー。
少しぱさついたパウンドケーキ。
首を傾げる。
まずいわけではない。
でも。
「うーん……」
思わず唸ってしまう。
何を隠そう。
私の兄はパティシエだった。
しかも有名ホテル勤務である。
子どもの頃から一緒にお菓子を作ることも多かった。
そのせいだろうか。
どうにも舌が贅沢になってしまっているらしい。
ふわふわのスフレパンケーキ。
焼きたてのフィナンシェ。
しっとりしたパウンドケーキ。
そんなものばかり思い浮かんでしまう。
そして私は気付いた。
「あれ?」
材料、普通にありそうじゃない?




