3話 天の使いと俺と戦争
書いてる途中に『なんか仮面ライダービルドみたいだなぁ』とか思い始めました。頑張って寄せないようにはしますが、展開に既視感があったらごめんなさい。
「絹道、俺は先に行くぞ。空知くんを頼む」
「わかった。いい?空知くん。今の爆発は『Earth08271国際軍』、つまり並行世界からの刺客による攻撃の余波。ホンモノはこんなもんじゃない」
「え…?」
「そこからの軍、そしてその世界そのものを私たちは、『神々の住まう地』って呼んでるの」
並行世界からの刺客。また新しい世界の扉を無理やりこじ開けられた。
「とにかく、私たちも行くよ!」
「え、あ、ちょっ…!」
まだまだこの環境に振り回されてばかりの自分に少しうんざりしながらも、衣笠さんを追って特別訓練室をあとにしようとしたが…
「ん?ちょっと寒くないですか?」
「気のせい気のせい!多分カーラの湿気のせい!」
「…そうですか」
そう思いながらも次こそ特別訓練室をあとにした。
…グオン!!!
『ここが悪鬼の世界か…案外発達してるらしいな。別にそれは興味ないけど…』
…グオン!!!
「絹道来たか!遅いぞ!」
グラウンドの方から聞こえた爆音の正体は、巨大なドリルのような兵器によって岩盤が破壊された音だったようだ。衣笠さんが手のひらからは激しい炎を、額からは焦りと疲れが感じ取れる汗を吹き出しながらこっちに怒鳴ってきた。
「こっちは『ドリル』溶かせるぐらいの熱ずっと浴びてんだ!炎使いといえど熱はこもるし暑いんだよ!」
「熖太ごめん!すぐ援護するから!」
「早く!早くしてくれ!」
ジュオォォォウ…!!!
絹道さんの手からすごい勢いで鉄が生成される。ダムのような形の巨大な防護壁が作られ、壁の向こうは一切見えなくなった。
「これでしばらくは安心だね…」
「あ”ぁ”ーーーっ!あ”つ”い”ーーーっ!」
「ほんとにごめん!ちょっとカーラ呼んでくるから!」
そういいながら絹道さんは足早に施設の方へと戻っていった。
「あの、衣笠さん…大丈夫で…」
「すまない…今話しかけないでくれ…反動だ…」
「反動…?」
「能力の代償ってやつらしい。熱がこもって頭がぼーっとするんだ…そして、他のやつからすると普段より怒りっぽくなる…!」
息を荒げながら事情のわからない俺に説明してくれる衣笠さんだが、確かにさっきより気が立っているように見えた。ゼーゼー状態の衣笠さんは続ける。
「今のは…『ドリル』…名前のまんま、岩盤をカチ割りながら急に現れて周囲を破壊しながら侵攻してくる“アッチ”の兵器だ」
「巨大なドリルってことですか?」
「いや、そうとも言えるが違うとも言える。あの中には複数人のヘブン側の歩兵が乗ってる」
「歩兵ですか?歩兵って、将棋とかの一番弱いコマの…」
「そんななまっちょろいもんじゃない!」
またまた声を荒げた衣笠さんは、次こそ本当に怒りに震える声で言葉を続けた。
「あいつらには、人の心ってもんがないんだ…『敵対勢力だから殺す』って意思が、一挙手一投足から感じられる…。名も無い歩兵に、俺の相棒は殺されたんだ」
「…え?」
そう言いながら衣笠さんは胸元から一枚のドッグタグを出した。名前欄に『Shinji Katakura』と刻印されている。
「片倉慎二、植物を出す能力者…そして、俺の同期だ。人類で2番目に能力を発現させたと言われる…そんなヤツだ」
「世界で2番目って…そんな人が、歩兵に…?」
「それはアイツ自身が1番感じてたハズだ!」
「…すみません」
今までのいわゆる『普通の生活』と比べて異常で深刻な状況でも、やっぱり人間の本質というものは変わらないようだった。いつでも人の地雷を踏み抜いてしまう自分に腹が立ってくる。申し訳なくなって顔を背けた瞬間…
ジョバァーッ!
「あばばばばばばっ!ぼぼぼぼぉっ!ぼふぉっ!」
「Est-ce que c'est ce qu'on appelle en japonais « jeter un froid » ?」
ブロンドの髪に透き通るような白い肌を持った、美しい女性だった。いや、美しいと言う表現では足りないと思う。気品やしなやかさの中に強さやたくましさが感じられた。そしてその鋭い眼差しを向けながら…衣笠さんに水をぶっかけまくっていた。
「空知ぐん…!ごれぇ…!」
ゼーゼー息を切らしながら走ってきた絹道さんが何か小さいものを投げてよこしてきた。見てみると小さいインカムのようなものだった。
「“聞こえてるかしら?”」
インカムをつけると、ブロンドお姉さんがいきなり日本語で話しかけてきた。
「うわっ!」
彼女いない歴=年齢の俺に女性耐性などあるわけもなく、驚きすぎて声が出てしまった。
「ぞれぇ…自動…ほんやぐぎぃ…だがらぁ…」
息の上がった絹道さんはフーフー言いながら、事情のわからない俺に説明してくれる。俺のためとはいえ…少しは休んでほしい。
「この…びどは…ぜぇ…ぜぇ…」
「“いいわよテツヤ、私の自己紹介だから”」
絹道さんを気遣いながら、その女性は続ける。
「“私はカーラ・ヴァドロワ。こちら側の世界で初めて…”」
ジョバッ!
「“この『La lune bleue et sombre』を発現させた人類。そうね…ヴァドロワさんって呼んでくれたらいいわ。”」
…グオン!
『ホントにアレは誰なんだ…前回の偵察時にはいなかったはずだ。まぁ、多少数が増えようとやり合うことに変わりはないか』
…グオン!
「“エント、いったん下がって…今のあなたは冷静に戦える状態じゃない…”」
「カーラ…ほっとけ…俺がやらないと…アイツに…」
「“エント!”」
頭を冷やしたとはいえ、衣笠さんのヘブンへの怒りはすぐにおさまるものではないようだった(自分が火に油を注いでしまったのもあるだろうが)。絹道さんもヒヤヒヤしながらこちらを見ている。目の前には、『敵』がいた。
『本部、対象を確認しました。仕留めますか?』
ボイスチェンジャー越しの不気味な声で管制塔と連絡をとっているであろう敵勢力からは、敵意というものを感じ取れなかった。自分たちが腕にとまった蚊を殺すように、『そういうものだから』という理由で自分たちと相対しているのが直感でわかる。その姿勢はいつでも戦い、勝つ自信がある、という自信の表れとも捉えられた。
「そ、空知くん…これ、下がった方がいいんじゃないの…?」
確かに、今の自分には戦う覚悟とか、力の使い方とか、そういうのは一切わからない。だが、だからといってその能力をめぐる問題を無視していいわけじゃない、と俺は思った。
「いえ…絹道さん。俺、逃げないです…戦いますよ…やってやりますよ…!」
「ダメ!」
絹道さんは必死の形相で俺に言う。
「あなたは…なぜかわからないけど『特別』なの…ものを消す能力は、こちら側は一切感知していなかった…その能力には、まだ何かあると私は思う。今ここで未熟なあなたが戦って倒れたら…」
その言葉に、なぜかイラッとした。お前は戦場という土俵に立ててすらいないだろう、と言われたような、そんな気がしたからだ。自分でもよくわからないが、ふつふつと怒りが込み上げてくる。
「…じゃあ、見ててくださいよ…」
「えっ…ちょ、ちょっと…!」
信じられないような気迫が漂っていたらしい。絹道さんはおろか、衣笠さんやヴァドロワさんまでもが陣形を崩し、『アイツら』への道をあけた。
『おいお前、そこで止まれ』
敵兵のライフルが俺の手を狙うのがわかった。
『こちらストライク部隊、敵勢力一名に対し射撃を開始します』
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガオンッ!
「全弾…消した…?」
「“あの弾幕を、1人で…”」
『ありえない…』
俺は全ての弾丸を消し去っていた。弾に当たった感触は一切ない。その場にいる全員、敵も味方も戦慄しているようだった。俺は一言吐き捨てる。
「…こんなもんか?」
『…こちらストライク部隊、予想外の事態が…』
ガオンッ!
怒涛の展開!『ガオン!』の後何が起こったのか?、新たな能力者の登場、有太の能力は制御可能なのか?次回第四話
『不可説不可説転と俺と監視室』、お楽しみにー




