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ウサギが異世界デスゲームをクリアする方法  作者: 山田野オロチ
聖獣マルルウサギ奉迎記念大晩餐会

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魔獣の戦い方

モツナベの一撃は速いだけじゃなく、その一発一発がドラおじさまの突進くらい重い。

おまけに隙もなかなか出来ない。

モツナベ自身が自分の身体のことを一番よく理解してる。

早くて重い連撃の最中でも深追いは絶対にしてこない。

厄介だ。

今は何とか凌げているけど、速度が上がってきたら私じゃまださばききれない…!

「格上相手に安全策ばっか試しても通用しないよ」

さっきのルカの言葉が脳裏をよぎる。

【聖獣式格闘術】の構えを解いて森の中から奇襲を仕掛ける…?

その程度で倒せるなら苦労するような相手じゃ無い…!

手を焼いているとルカがまたモツナベの背後を突いた。

だけどさっきのでモツナベも【宝玉の転移門】での接近は警戒してる、さっきほど完璧な隙じゃ無い!


「ダメ!!防がれる!!!」

「それでいい!!!」


ルカの拳はあっさりとモツナベに受け止められる。

しかし、彼女は自身の体ごと雷魔法を発動してモツナベに直接電撃を撃ち込んだ。

さすがのモツナベも電撃を直接撃ち込まれれば多少答えたのかほんのわずかにふらつく。

隙が出来た…でも目線の端で私は捕えられてる…


「ここッ!!!」


また自分を巻き込む至近距離での大規模な爆発系魔法。

しかしその一撃でモツナベが初めて明確に後退した。


「何て無茶しやがる…やんちゃな王族だなぁ。」


モツナベの言うとおりだ。

さっきから不完全な隙を無理矢理押し通して…

でも、私では全くダメージを与えられなかったモツナベを僅かに退かせた。


「子供はちょっとくらいやんちゃな方が可愛げあるでしょ…年齢的にはあんたと同い年だけど!!」


これが…お母様に認められた人間の王女…

私にはない、戦いの才能…


「とは言え、ここからどうすんだ?アンタの魔法じゃ、俺はよろけても背中はつかねえぞ?」

「知ってるっての…!」


ルカはむっとした顔でモツナベを睨むと私の肩に腕を回した。


「今からヘビ子ちゃんと作戦会議するから、そこから動かず見てろ!」

「え…?」


そう言って設置型の魔法をモツナベの周囲に展開した。


「ち、ちょっと!あんなんじゃモツナベ絶対止まんないって!?」

「大丈夫だよ。多分動かないから。」


しかし本当にその通り、モツナベはにやりと笑ってその場から一歩も動かなかった。


「ね?」

「…本当だ。」

「じゃ、作戦会議。ヘビ子ちゃんが近接で耐えてる間に私がモツナベの体勢を崩す、ヘビ子ちゃんが隙を作る、私がそこに攻撃をたたき込む、はい終わり。」

「………え?」


それだけ?


「え?」

「本当にそれだけなの?もっとこう…魔法の組み合わせで有利な戦況を作るとか…」

「考えられなくも無いけど、モツナベと私たちじゃ実力が離れすぎてる。そんな私たちの策なんてどんだけ積み上げてもほとんど意味ないよ。こういうときは瞬発力に舵切った方が案外上手くいくんだって!」


それ作戦って言うか…

さっきまでの私たちの動きをただ改めて確認しただけなんじゃ…


「それじゃあ…起点作りよろしく!!」

「…っ!!」


仕方ない。

私の攻撃じゃモツナベに届かないのは事実だし、今はルカの作戦………さっきまでの私たちの戦い方を貫こう。

モツナベに接近して、先手を取る。

…しかも設置した魔法、空撃ちの魔法じゃん…!?

驚きつつルカが魔法を発動するまでの隙を稼ぐ。

さっきみたいな【宝玉の転移門】で移動して、そこからきっかけになるような魔法を撃ち込む形だろう。

可能な限り大きく動いてモツナベの視線を散らす…!


「ヘビ子ちゃん!!」

「…!!」


来た!

背後から…だから多分しゃがめば良いはず…


「どおりゃあああ!!!」

「…!!!?」


魔法…じゃない…!?

それ【身体強化】!?

型も何も無い近接戦闘…それじゃ普通に無理……

いや、私の時よりモツナベが回避に回ることが多い…?

良く見たら、拳に魔法を込めてる。当たればそこから魔法が発動してより大きなダメージになる。

なら…!

私はルカの攻撃の反対側を取るように仕掛ける。

【人間化《ヒューマライズ》】を発動して、私の体がルカの邪魔にならないように動けば……!!

モツナベの反撃の芽を潰し、初めてルカの拳がモツナベに当たる。

爆裂魔法が発動してモツナベが大きくよろめく。

今なら…!!!


「ヘビ子ちゃん!尻尾で押し込んで!!!」

「え…!!?」


尻尾は【人間化】で今は消して……!!


「あっぶねえ!!!」

「ぐっ!!!」

「うわっ!!!」


モツナベの回転蹴りが私たちをまとめて吹き飛ばす。

再び距離が出来てモツナベの体勢が元に戻ってしまった。


「な、なんで決め手が私なの!?私の攻撃じゃモツナベには通用しないって…」

「そんなこと一言も言ってないでしょ!?ヘビ子ちゃんこそなんで尻尾しまっちゃったの!?」

「そ、それはルカの攻撃の起点作りにしようと…!」

「なーんでヘビ子ちゃん…いや、ヘビ子が攻めない前提なの!?魔獣なんだからもっと荒々しく自己中にやりなさいよ!!」

「る、ルカこそ!王女のくせにろくな作戦立ててないじゃん!!」

「私とヘビ子が一緒に攻めるのが作戦なんですー!!」

「そんなの作戦って言わない!!」

「作戦ですー!!!」

「おいおい、お前ら、俺ほったらかして喧嘩すんなって…」

「「モツナベはちょっと黙って!!!」」

「……はいはい。」


勢いのままモツナベに二人同時に殴りかかる。

ルカはさっきと同じ魔法を纏った拳。

でも殴って振り抜いた後に魔力が残ってる…その魔力に触れても魔法が発動するのか…器用なことするなぁ…

でも!でもでも!!

肝心の拳の方がぜんっぜん当たってない!!

むしろさっきから振り抜いた後で魔法が消えてるとはいえ私の尻尾に何発か当たってる!!!


「はい今も隙だったー!!!ヘビ子全然見えてないー!!!」

「違いますー!!今のは攻め込んでも反撃されますー!!」

「ちょっとくらい無茶しろよクソ真面目魔獣!!!」

「攻め時を判断しろっての大雑把王女!!!」


腹立つ王女…!!!

でも…でもでも…!!!

ルカはさっきから回数を重ねるごとに致命的なダメージになるミスが減っている。攻め時を掴み始めている。

何て恐ろしいほどの戦闘センス…

…負けられない……負けたくない!!!


「負けないからッ!!!」

「お…!?」


【聖獣式格闘術】は、相手との間合いをちゃんと計って、致命傷を避けながら戦うための私の武器。

相手の攻撃に関しての見極めは、ルカより私の方が上だ…!

致命傷を避けさえすれば…!!

私だって攻められる!!!


「…すっご!!!」


左肩でまともにモツナベの拳を食らった。

でも、右側の型は崩れていない…!!!

撃ち込む。

そのほんの僅か後に、ルカが追い打ちを掛ける。魔力の込められた拳を、私が生み出した『明確な隙』に撃ち込む。

ダメージを与えるための爆発や電撃じゃない。

モツナベの体勢を崩すための風の魔法。

それが直撃したのをしっかりと確認して、私は尻尾で、ルカは魔法でモツナベの両足を叩く。

直後に、私たちの前で初めて背中を地面につけたモツナベは、気味が悪いくらいに満足そうに笑っていた。


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