王女の戦い方
正面に立って改めてわかる、隙の無さ。
両手を下ろし構えも取っていないのに、どんな不意打ちを仕掛けても通用しないと分かってしまう。
近接戦闘特化の戦闘スタイル。私との相性は最悪。
そんな私の横で、彼女本来の姿に戻り礼をしているヘビ子ちゃん。
二人まとめてかかってこい。
モツナベはそう言った。
ヘビ子ちゃんは一対一の戦いでモツナベに構えを取らせた。
そのヘビ子ちゃんの動きに私が合わせることができれば、あるいは。
「...ルカ、準備はいい?」
「大丈夫。いつでも行けるよ。」
魔力の流れを意識して、いつでも魔法を発動できるように備える。
短い呼吸の後、ヘビ子ちゃんが動いた。
速い...!
王国で見たときよりも隣に立つとさらに速く感じる。
彼女の正面からの拳をモツナベは難なく受け止める。
目線的に視界に私は入っているが、まずはモツナベの情報量を増やす。
【宝玉の転移門】を発動しモツナベの背後へ。
がら空きの背中...は回避されたらヘビ子ちゃんに直撃する。
彼女の邪魔をしない場所、右の足元の地面を魔法で盛り上げる。
「うおっ!?」
体勢を崩したその一瞬、ヘビ子ちゃんなら見逃さない。
上体を倒し、その回転の勢いを尻尾に加える。
ムチのように鋭くしなる先端がモツナベの防御を崩した。
行ける...!!
私は彼女の追撃に合わせて動けるように次の魔法を構える。
どんな動きでも私が合わせれば、ヘビ子ちゃんなら決めきれる...!!
「...!?」
距離を詰め切らない...?
体勢も崩れて絶好のチャンスなのに。
体を回転させた攻撃だったから反応が遅れた...?
だったら私が詰める!モツナベ相手にこの明確なチャンスは逃せない!!
「...!!ルカ!!ダメッ!!!」
【宝玉の転移門】で一気に距離を詰めたとき、モツナベは崩れた体勢のまま私の腕を弾き、足を掴んだ。
天地がひっくり返り、逆さになったモツナベの拳が眼前に迫った。
恐らく防御では衝撃を消しきれない。
それでも。
「ゼロ距離だ...!!!」
「...!!?」
「【爆雷魔法】!!!」
手を離したモツナベは両手でガードを取るが、私が魔法を発動させたのは、そのガードの内側。
この距離なら顔面ゼロ距離で撃ち込める。
もちろん私も巻き添え食らうけど、火傷くらいならすぐ治せる!
爆撃に弾き飛ばされて、転がりながらヘビ子ちゃんの元で体勢を立て直す。
「ルカ!!どうしてあんな不確定な隙に飛び込んだの!?」
「格上相手に安全策ばっか試しても通用しないよ...それに...」
それにその実力差が本物の場合、不確定なギャンブルでも効かないことがある。
モツナベは目元をこすり、こちらを向いてニヤリと笑った。
「何でピンピンしてんだよ...ウサギに教えてもらった魔法を顔面にうけたんだよ...?」
「俺は他より身体が丈夫でな。」
「丈夫ってレベルじゃ...」
「今度はこっちの番だ。」
言葉が終わると同時にモツナベが一瞬で距離を詰める。
速すぎる...!!
距離がある程度近いとはいえ、【宝玉の転移門】を使った私と同じくらいの移動速度を生身で出すなよ!!
とっさの防御魔法、しかし大きく後方に弾かれる。
あの速度、ヘビ子ちゃんは無事か!?
「...!!」
彼女はモツナベと距離を保ったまま、続く連撃を躱し続けている。
あの一撃を、いなしたのか?
ほぼ不意打ちにも近い速度だよ...?
防戦一方ではあるものの、致命的なダメージやクリーンヒットは先ほどから一度も受けていない。
その瞳で常に相手を見極め、冷静に対処している。
なんて安定した戦い方だろう。
これが彼女の【聖獣式格闘術】
どんな状況でも自分を崩さない戦い方。
隙を作って攻め込むための戦い方じゃない、確実な隙を絶対に見逃さないための戦い方。
私と、全く逆の戦い方だった。




