11-2 ライバル
「会いに来たよ!ウサギ!」
「いや、会いに来たって...二人は?」
「私はルカ様をお一人で行かせるわけにはいきませんので。」
「俺は散歩してたらメイドのねーちゃんに日雇いの護衛依頼された。」
「...ルキウスが来れなかったので、彼の実力なら申し分ないかと。」
「そんな急に...」
どんな言葉を出そうか迷っていると、ドラが無言で翼を再び広げ、そして...
「...!!!」
「...!?」
「...ッ!」
三人に奇襲を仕掛けた。
一瞬私の目で追えなくなるほどの速度。
【加速の支配者】を部分的に使っている攻撃だ。
しかしその攻撃にミルザとモツナベは反応していた。
防御魔法を展開し、その片手間で未完成だがカウンターの魔法も構築中のミルザ。
片腕でルカを庇い、もう片方の腕でドラの顔面を狙っているモツナベ。
二人は各々の方法でルカを守るように立っている。
「......【加速の支配者】をお持ちの聖獣様。何か我々に落ち度がありましたでしょうか?」
「ずいぶん速いなトカゲ...どういうからくりだ?」
「...ハハッ!マジかよ。」
「ち、ちょっとドラ!?」
「ミルザ!モツナベ!止めて!!」
翼を畳んでなぜか嬉しそうなドラ。
寸止めで止めるつもりだったみたいだが、流石にミルザとモツナベは警戒を解けないでいた。
「いやー、悪い悪い。別に気に入らねえとかじゃねえんだよ。ただ、どの程度の実力かなーって!改めて俺はインフェルノドラゴン。気軽にドラとでも―――」
「アホタレーーーッ!!!」
私はドラの横腹にかけっぱなしにしていた【身体強化】のたっぷり入った飛び蹴りをお見舞いした。
「バカなの!?あんたバカなの!?あの子は王女!!私の友達だけど王女なの!!!今あんた何やったか分かってる!!?」
「いや、寸止めするつもりだったって!!当てるわけねえだろ!!」
「そういう...!!事じゃ...!!ないんだよおバカ!!!突進バカ!!!」
「いてっ...分かったから...やめろ!爪で鱗がないところひっかくのやめろ!!!」
「...ウサギ様、これは一体...?」
「本当にごめんなさい。このバカにはよく言って聞かせます...!!」
「おい!誰がバカだよ!」
「お前だよ!!!」
心底このバカトカゲを王国に連れて行かなくてよかった。
【人間化】はドラも使えるはずだが、絶対に向こうでトラブルになっていたに違いない。
「...にしてもこの獣人だろ、ヘビ子に勝ったっての。」
「へえ?聖獣様、何でそう思ったんだ?」
「一人は王女、まず人前で魔獣と取っ組み合いなんてまずねえだろ。んで横の女はその付き人、むやみに戦ったりはしねえ。あとはお前だ。」
「消去法かよ。」
「それだけじゃねえぜ。お前、俺とやり合っても多少戦えるな?」
「...過大な評価恐れ入りますぜ聖獣様。」
「何なら確かめてみるか?」
「嫌だよ。戦う理由がねえ。」
ドラはタートルを除けば聖獣の中でも戦闘面のセンスが突出している。
当然相手の実力を見極める目も私より正確だ。
その彼がここまで言うほどのモツナベの実力。
ヘビ子との試合では本気ではあったが全力では無かった。
底知れない男だ。
「意外とお優しいんだな?」
「意味無え戦いはしねえってだけだよ。」
「ヘビ子と戦ったのも?」
「賞金の為だ。」
「その割には色々掴ませてくれたみたいじゃねえか。」
「...なるほど。あんたがヘビ子ちゃんの先生か。」
モツナベはニヤリと笑った。
元教師の勘でも働いたのか?
「完成度の高い基礎だった。あんたの今の攻撃を見るに、戦闘スタイルがまるで違う。あの子に合わせて教えたのか。」
「俺だけじゃねえけどな。あいつに俺たちが教えたのは生き残るための戦い方だ。森じゃそれが最優先事項だからな。」
「なるほどな。いや、それがいい。あの子にはそのほうが合ってるだろうさ。」
私はドラの言葉を思い出す。
今のヘビ子に必要なのは『客観的な意見』と『もっと身近な壁』
その客観的な意見に、モツナベは最適なんじゃないか?
いや、でもモツナベは意味のない戦いはしないし、普通にお願いしてもヘビ子に稽古はつけてくれないだろう。
「......ところで、ルカは何で私に会いに来たの?」
「あ、えーっと、それは......」
ルカはなぜかバツが悪そうな顔をしてモジモジと動いている。
「んー、もったいぶっても仕方ないよね...ウサギ、私に稽古をつけてほしいの。」
「稽古?」
出てきたのは意外な言葉だった。




