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ウサギが異世界デスゲームをクリアする方法  作者: 山田野オロチ
聖獣マルルウサギ奉迎記念大晩餐会

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10-1 寝坊

「こちら前方異常なしです。」

「後方異常ありません。」

「両側面問題なしです。」


三日目の城下町。

周囲を完全武装の王国魔法師団、前衛指揮をルキウス、殿をミルザというロム王国魔法師団最強の布陣に囲まれてラビオネアを目指していた。

目的は聴取と警戒。

昨日殺された一人の冒険者、ロックとその仲間達に関してのものだった。


「………よろしいですか、ルカ様、ウサギ様。今日は絶対に私かミルザのそばを離れませんよう。お二人はラビオネアに到着されましたら、入り口でお待ちください。」


本来であれば私たちは王城で待っているように伝えられていた。

それでも無理を言って連れてきて貰い、ここまで大がかりな警備体制を強いる事になってしまったのだ。

ルカは王女で私は要人。

ルキウスは彼のユニークジャンル【凱旋行軍】を、そしてミルザもおよそ街中で使用するとは思えないほど高度で繊細な感知魔法を王城を出たときから使用し続けている。

それでも私は、自分の手で殺した転生者の影響下にあった人たちを無視することなど出来なかった。

昨日よりも時間を掛けて街中を歩き、冒険者ギルドの支部のある酒場ラビオネアに到着した。

私とルカはミルザを中心に二名の魔法師団団員に護衛され、酒場の入り口で待機させられた。

ルキウスはフラッグに事情を説明している。

そして事前に説明か何かを受けていたのか、ロックの仲間と思しき集団はすでに酒場の一角に集められていた。


(うさぎ、ここからじゃ何も聞こえないよ。)


【思念共有】を通じてルカの声が聞こえる。

【聴覚強化】を使おう。ミルザさんの感知には性能が良すぎて気づかれちゃうかもだけど、それくらい許してくれるでしょ。


(おっけー。)


私とルカは【聴覚強化】でルキウスとロックの仲間達の会話を聞く。

ミルザの顔がぴくりと動いたが、見て見ぬ振りをしてくれた。


「君達に確認したいのは一つだ。ロックという冒険者を覚えているか?」


ルキウスには事前にロックのスキルの内容をルカの【天啓眼】を通して確認したと伝えてある。

その上で仲間達にロックのことを今はどう思っているのか聞いて欲しいと。


「もちろん。俺たちの仲間だったあいつだろ?」

「そう言えば今日見てないな?」

「あー、あなたは寝てたから知らないのよね。聖獣様とこの国の王女様に無礼を働いたらしいわ。」

「そうだったのか?昨日の昼くらいから認識がぼやっとしてんだよな。俺も聖獣様を追いかけた記憶はあるんだけど、なんで追いかけたのかいまいち覚えてないっていうか…」


話している冒険者は昨日私の人形を追いかけていた冒険者の一人だった。

ロックは昨晩時点で私とルカに対しての無礼を働いたということで王城の地下牢に幽閉されたことになっている。

あのとき部屋にいた二人はロックが死んだとき気を失っていたのと、ロックの痕跡を私が全て消してしまったためだ。

しかしそこにはあのとき気絶していたエルフの女性もいた。


「私も記憶が曖昧なんだけど、昨日確かにロックが王女様を魔道具で縛ってるのを見た気がするの。」


…どうやらあのときの凄惨な光景のせいで前後の記憶が曖昧になっているみたいだ。

助かったと言うべきか、申し訳ないと言うべきか……


「そうか。君達にとって彼はどういう存在だ?」

「そりゃ、冒険者仲間だろ?」

「……それだけか?」

「うーん、何だか彼のことを必死に守ろうとしてた記憶はあるんだけど、どうしてそんなことをしたのかは覚えてないのよね。」

「一緒に冒険する仲間、それ以上でも以下でも無いって言うか…」

「私も、彼に体を許してはいましたが、今にして思えばそこまでするような間柄では無かったような…?」


ルキウスも、そして私たちもこれで確信した。

ロックが【記憶改変】を使って彼らにさせた行動は変わらない記憶として残る。

だが、彼のことを最も大切だという感情は彼の死と共に抜け落ち、そしてそれはスキルを引き継いだ私に対象が移るようなことも無い。

これで私が今後この【記憶改変】を少なくとも常用のスキルとして使う必要は無くなったというわけだ。


「そうか……協力感謝する。君達のチームはこれで全員だろうか?」

「あ、いや、もう一人いるんですけど…」

「…?それはどこに?」

「えーと、起こします…?」

「…?出来ればお願いしたい。」


そう言うと冒険者達は顔を見合わせ、その中から男の冒険者二人がため息をつきながら二階の宿泊部屋へと向かっていった。

数分後、二人の冒険者が先に階段を下りてきて、その後ろを一人の獣人の大男が険しい顔で下りてきていた。


「ああああ、クソ…頭痛ぇ………」

「大丈夫か?お前三日も寝てたんだぞ?」

「ああ、そう…?……水無い?」


ボサボサの寝癖にパンツ一枚。

それでも熊の獣人にふさわしい屈強な肉体が異様なほどの圧を放っている。

男は差し出された水をピッチャーのまま一息で飲み干すとルキウスをじっと見ていた。


「…あれ?ロックは?」

「か、彼なら重罪人として王国の地下牢に…」

「ああそう。ふーん。」


彼もロックの仲間だったのなら、少なくとも【記憶改変】の影響下にはあったはずなのに、もはやロックのことなど全く興味ないかのように告げている。


(…なんか、凄い人来ちゃったね…?)


うん…

ねえルカ、一応なんだけどさ…


(うん。念のため見とくね。)


彼女はそう言って【天啓眼】を使った。


「き、君は一体…?」

「ああ、俺は……」

(…!!?ウサギ!!この男……)


【思念共有】から聞こえてくるルカの声に【聴覚強化】で聞こえてくる大男の声が重なる。


「俺は獣人冒険者モツナベ。転生者だ。前世じゃ子供に運動を教える仕事をしてた。」


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