9-8 感触
【意思介入を含む絶命を確認 強欲な殺戮発動 スキルを移行】
私は今日、同じ高校の人間を殺した。
【移行対象 魔人種】
【識別名 ロック】
今まで私が殺してきたのは、私に殺されることを望んだ生き物か、生きるためのスキルを習得出来る魔獣。
【獲得スキル 記憶改変】
でも今日は違う。
このスキルは私が生きる上で絶対に必要なものでも無いし、相手は魔獣でも無い。
初めて、私は私の意思で転生者を殺した。
システムが脳に送ってくる機械的な情報が紛れもなく『お前が意思を持って殺した』と告げてくる。
「ウサギ……」
「……ルカ、ごめん遅くなって。」
彼女の縄を魔法で切り、床に貼られていた魔道具と魔法も解除しておく。
スキルが発動できなくなる類いのものだったが、私の出力には関係ないようだった。
ロックの相手をさせられていたエルフも先ほどの彼の大量出血を見て気を失ってしまったみたいだ。
「ウサギ、ごめん私……」
「大丈夫。ルカが無事で良かった。」
私は魔力でロックの死体と切断した手足を覆い、その中を強めの火炎魔法で燃やした。
嗅いだことの無い、それでも不快だと分かる匂いが鼻を撫でる。
「………これから私はルキウスさんの元へ向かう。ロックが死んだことによる彼の仲間達の影響が分からないからその対処を王国側にお願いしたい。」
「…多分大丈夫だと思うけど…」
「ありがとう。私がそれを確認すると、万が一効果がロックの死後も永続的に続くものだったときに火に油だから。」
完全に焼けきった彼の死体。
そこにはかつて彼の器だった魔人族を焼いた灰と骨が残っていた。
風魔法で脆くなったその骨を細かく砕き、灰と共に私が飛び入るために蹴破った窓の外へと撒く。
これでこの件は完全に終わった。終わった、はずだ…
「…っ!」
「ウサギ!!」
急に体の力がどっと抜けて、ルカに支えて貰う形になってしまった。
「………ははっ。何やってんだろうね私。魔獣のくせに、冒険者一人殺して罪悪感を感じてる。」
「違うよ…!!体は魔獣でも中身は人間だもん…!!それに、私たちが転生者である以上…」
「殺し殺されるのは仕方ないって?」
分かってる。
ルカにはきっとそんなつもり無い。
でもそれじゃあ、私たちも、結局はロックと同じだ。
ルカも思わず言葉に詰まっている。
「………ごめん。困らせるつもりは無かったの。さっきさ、ロックに止めをさしたのは【神速撃ち】っていう格闘スキルなんだ。手足は魔法で切っても、せめて命くらいは私が直接、と思って使ったんだけどさ…」
私は自分の手を見る。
その一撃は普通の人間なら視認すら出来ない、高速の一撃。
返り血などつく前に終わらせた。
それでもまだ、この小動物の手に感触は残っている。
「………嫌な感触だね。出来ればもう経験したくない。」




