6-3 邂逅
「どうなってるの...!?」
使者たちの入国式が終わり、晩餐会が始まった。
絢爛豪華。
王国が誇る最大限の催し。
その彩りの裏、夜風が肌をなでるバルコニーで、一匹のウサギと王女が話していた。
「私にもさっぱり...まさか帝国にも転生者が...それも生徒会長だなんて。」
「私の【天啓眼】が使えなかったのも彼の影響ってこと?」
「断言はできないけど、その可能性はある。転生のときに強力な感知妨害系のスキルを持ってた、とか。」
「......仮に、仮に会長のスキルが感知妨害系のスキルだとしてさ、ウサギなら、英雄と呼ばれる魔道士になれる...?」
「...」
答えに詰まる。
なれなくはないだろうが、途方もない研鑽と修練の時間がかかる。
どれだけ強力なスキルでも、結局の所どうやって攻撃に転用するかだ。
感知妨害は防御には使えても攻撃に直接起因はしない。
そんな彼が帝国で英雄と呼ばれている、それはつまり。
「...多分、会長は―――」
【強欲な殺戮】の事を知っている。
「...っ!」
「色々と分からないことも多い。でも今は当初のルカの言う通り、帝国の使者たちに最大限の警戒をしよう。」
「...もし私たちが転生者だってバレたら?」
「その時はルカは自分の身を守ることだけ考えて。私もヘビ子を連れて全力で森へ逃げる。」
「分かった...」
とにかく情報が少ない。
今の状態で分かることは彼が転生者という情報のみ。
こちらの手札が圧倒的に少ないはずだ。
この晩餐会、可能な限り帝国との接触を避けようと考えた。
「―――王女殿下。」
毎回私は引き運が悪い。
転生した種族は最弱の愛玩動物、生まれた場所も常に死が隣り合わせで。
強さを手に入れてその引きをある程度帳消しにできるくらいに放っていたつもりだったが、根本の解決には至っていない。
帝国の英雄が私たちに話しかけてくる。
「...こ、これはこれはカワサキ様、ご機嫌麗しゅう。晩餐会、お楽しみいただけてますでしょうか?」
王女としてルカは振る舞う。
私も下手な動きはできない。この状況では逃げ出す隙を作るにしてもルカや他の人達を巻き込んでしまう。
「ええ。まさかこの様な式に列席出来るとは。三等貴族の息子でしかない私では考えられませんでした。魔法の才に恵まれて本当に良かった。」
ふわりと物腰柔らかに、それでも芯のある言葉を喋る青年。
皆の前で壇上に立つ前世の記憶と変わらない姿だった。
「英雄と呼ばれるほどの魔法の才、王国でも聞き及んでいますわ。」
「光栄です。ですが、こういった堅苦しいのは少しむず痒くて。」
「あら、私もですわ。あまり食べ過ぎるとドレスのコルセットが私を叱りますの。」
「あはは、それは面白い。では、叱られぬ程度に羽根を伸ばしませんか?」
「食後の運動ですの?一曲踊ってくださるのかしら。」
「ええ。ですが、踊りは得意ではなく...そうですね。」
彼はゆっくりと、バルコニーの窓に手をかけ、閉めた。
「『ラジオ体操』などいかがでしょうか?」
「ッ!!?ウサギ!!!」
「分かってる!!!」
全力の魔力解放。
発動できる限り全てのスキルを並列処理で発動する。
周囲に影響を及ぼしかねない威力だが、ルカは私のスキルの一部を与えている。
最低限彼女くらいは無事で...!!!
「おいおい、せっかちだなぁ。少し落ち着きましょうよ。」
「...そっちから挑発しといて落ち着けとか、ちょっと無理あるじゃん会長。」
「挑発なんかしてないって。本当に今日はそんな気はないんだよ。だが念には念をだ。ここからは日本語で話そう。」
窓をそっと触ると、何かのスキルを発動した。
会場の声が一気に小さくなる。




