6-2 邂逅
スキルの妨害...!?
しかも、ルカの【天啓眼】はユニークジャンルでしょ!?
それを妨害できるなんてどういうスキルの練度なの!?
…ダメだ、既にルカの方から思念伝達の接続を切ってる。
警戒は正しいけど、あまりに情報が少ない。
ただ少ない情報でも今がとても危険な状態だということは変わりない。
もしかすると、転生してから一番の危機と認識しても問題ないかもしれない。
私も感知系のスキルを試すが、確かに何かに発動までの伝達を無理やり書き換えられるような感覚だ。
私達が転生者として危険な状態にあっても、会は続いていく。
私たちの前に次に現れたのは、今までのどの国や集落よりも人数が多い。
というより多すぎる。
その国の使節団だけで列席の人間の二割ほどはいるんじゃないかという人数。
まるでその人数を見せつけているかのようなこの対応に、ロム王国の人間たちは怪訝な顔をするものもいたくらいだ。
「お招きいただき、ありがとうございます。ロム王殿。」
「...此度はまた、随分と大所帯ですな...これが帝国式の祝と受け取っておきましょうぞ。」
来た。
現時点で私とルカが最も警戒している国。
マルル大森林の東の国家、ファディオス帝国。
外交官は確か、ベルマ・アブデラ、だったか。
「はい。我らもロム王国同様、大森林の脅威は存じております。外交の場とは言え、その森の聖獣が招かれたとあれば、このくらいの戦力は必然かと。」
こいつ...
言ってることは至極正しい。
それに本来はどこの国だってこれくらいの警戒はしたいはずだ。
「しかし道中森の外れを通りましたが、嘘のように魔獣が見受けられませんでした。」
それはそうだ。
帝国が来るとルカから手紙で聞いた手前無視するわけにもいかない。
もし道中の森で何かあれば苦しくなるのは私の立場だけじゃない。
だから事前に、帝国が通るであろう道に私の匂いを残しておいた。
大概の魔獣はこれでその場所に寄り付きもしなくなる。
森の魔獣たちには申し訳ないけど、今後を見据えた安全策だ。
「...王女殿下から帝国の皆さまが列席されることは事前に伺っておりました。魔獣達に命をかけ、皆さまを襲わないようにしたのです。帰国の際も安全な森の通過をお約束します。」
少し恩着せがましいが、これくらいは許されるだろう。
だってコイツ、今私に面と向かって『森は危険だ』って言ったようなもんだし。
「それはそれは。寛大なお心遣いに心が痛み入ります。是非とも我が国とも今後とも友好な関係を築いていただきたく思います。」
別に帝国はルカとは違ってあくまで今は外交相手だ。
警戒はしている。
でも必要以上に敵視することはない。
必要があればこの国とだって手を組んでも構わないと思っている。
そうすれば、森を跨いだ国交がより豊かになる。
森林資源と帝国の海洋資源の貿易だって...
「感謝の印、と言ってはなんですが、本日は帝国が誇る『英雄』を連れて参りました。」
「ふむ、噂はこちらにも届いておりますとも。無尽蔵の魔力を操るとか。」
「左様にございます。是非とも陛下にもご挨拶させていただきたい。」
広間の音は変わらない。
これだけの人が集まれば、どれだけ静かにしていても多少の声は聞こえてくる。
それでも今は声が聞こえない。
声も、音も、自分の心音だけが早鐘のように聞こえる。
色も音も抜け落ちてしまったかのような時間の中で、帝国使者の護衛の一人がゆっくりと前に出る。
木の手すりを3回叩く音。分かってる。
スキルは無くても分かってる。
その男は転生者だ。
だって、その姿は...!!
「帝国の英雄、カワサキ・シュン殿でございます。」
この世界では少し浮いてしまうような顔立ち。黒い髪に黒い瞳。
前世と変わらないその姿は転生者なら、川越高校の生徒や関係者なら知らないやつはいない。
生徒会長、川﨑駿そのものだった。




