流れる季節の城の中で
そこから先はとても早かった。
ミルザとルキウスに事情を説明し聖獣に認められたことを伝えた。
最初こそ周りは信じていない様子だったが、ウサギの様子や言動、何より私の雰囲気を見てルキウスとミルザが気づいた。
その後ウサギの進言で部隊だけではなく、ウサギが王国に出向いて私と共に直接宣言したほうが効果は高いということになり、ルキウスとミルザもそれに賛成した。
一足先に私たちは王国に戻り、ウサギを迎える準備を整えることにした。
…と言うのは体裁上の理由で主な理由は今回の案件を受けて今後どうするかという方針を固めるためだ。
第一王女が聖獣に認められたくらいですぐに大手を振って喜ぶほど、お父様は短絡的ではない。
…まあ私が戻ってきたときは日が暮れるまで泣いて喜んで、久しぶりにお父様の寝室で寝たけど。
一方でこの一件に関する話し合いは思ったより長く続いた。
何せ前例もなければどの貴族も想定すらしていなかった事態。
森への資源調達の影響は、魔獣被害の考慮、調査隊の可否、近隣諸国への影響等々...
全ての方針がうちの国だけで一旦仮決めされるまでに季節が移り変わり、朝夕の冷え込みが指先に痛い季節になった。
その間、私とウサギは鳥を使って文通をしていた。
森で生えたキノコの毒の見分け方、効率的な魚の捕り方、人間でも食べられる野草、魔獣の縄張りの見極め方とか、向こうから送られてくるのはサバイバル番組みたいなのばっかり。
反面、王族のモーニングルーティンや、政略婚約の回避方法、一般魔道士と雑務メイドの秘密の逢瀬など、向こうはこっちのことを王族ゴシップか何かと思ってたみたいだったけど...
それでも、もう必要ないと思っていた日本語でのやり取りは、私の心をひそかに満たしてくれていた。
来訪時期が長引いていることも「そんなに気にしてないよ。」と気楽な感じではあったので、お父様にもそれとなく伝えておいた。
全ての準備が済み、いよいよウサギに招待を送るときには、私たちの出会いからおよそ1年が経っていた。
そしてこの会は、ウサギだけでなく近隣諸国の要人を招いて歓迎晩餐会という国家史上最大規模の祝宴として執り行われることになった。
先んじて私が聖獣に認められた事は周辺の国には知られていたが、特に変化という変化も無かったのでここで一度大きく発表をするのが目的なんだと思う。
…あ、いや違った。一個あった、変化。
他所の国の王子や貴族の子から婚約の話がめちゃくちゃ増えた。
こういう婚約って実際は私の権力とか聖獣に認められたっていうブランドが目当てなんだよなぁ...
もちろんお父様もそれは理解しているのでそのあたりは非常に慎重、ではあるが、8歳にもなれば王族的には将来の相手を見繕い始める時期ではあるので悩んではいるようだ。
まあほら、前世の年齢も込みなら精神的には結婚適齢期ではあるけどさ...
肉体は8歳なわけで。そんな女児に婚約を申し込んでくる三十路が普通にいるわけですよ。
貴族の世界ってすげぇ...
これをウサギに話しても「イケメンいる???」しか返ってこないんだもん。
王室ドリームを早めに捨てるよう私から伝えとかなきゃ。
ともかく、いろんな準備や思惑が渦巻いたことで盛大になってしまった国家イベント「聖獣マルルウサギ奉迎記念大晩餐会」が始まろうとしていた。
その時、私はまだ知らなかった。
この晩餐会が私と、そしてウサギの転生者人生の大きなターニングポイントになる事を。




