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ウサギが異世界デスゲームをクリアする方法  作者: 山田野オロチ
宝玉の転生王女

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ガールズトーク

…ああ、やっぱりそういう感じか。


「...へー?友達百人ですか。それは、さぞ高い山の上でランチでも楽しめそうな人数ですね。」

「...止めよう。そっちも気づいてるんならこの会話不毛すぎる。」


ウサギは近くの木を切り倒すと「座りなよ」と促した。

平然と何かのスキルで私の胴体ぐらいある木を切り倒したけど、聖獣だからってことにしとこう、一旦。

私はドレスの裾を引っ掛けないように倒された木に腰掛ける。


「いつから気づいてたの?」

「気づいてたって言うか、ほぼ違和感だよ。魔獣なのに妙に人間くさいなって感じただけ。」

「そっか。魔獣として生きてきても、人間の時の癖ってそう抜けないからなぁ。」


ウサギは前足で顔をかく。

…仕草は十分ウサギっぽいけどね。


「それじゃ、改めて自己紹介だね。私は......」

「あ、板橋梨花。」

「...............は?」

「ん?」

「いやっ...!あんた、はぁ!!?」

「え!?何?自己紹介でしょ?あ、こっちの方の名前だった?でもそれさっき言ったし...」

「いや...でもまあそうか...人間なら、まあ、うん...仕方ない...仕方ないね、一応強めの種族だから、うん...!!」

「...何ぶつぶつ言ってんの?」

「色々納得しようとしてんの!!」


ウサギはなぜか疲れているようだった。

考えすぎか?転生者同士なんだし気楽に話せばいいのに。

あ、もしかして友達少なかったタイプ?


「本当に【沈黙空間《サイレンス・フィールド》】使っといてよかった...念には念を、偉大な言葉だよ...」

「え、オカノブの口癖じゃん。ってことは2年?」


ちなみにオカノブとは岡安信繁を生徒たちが呼んでいるあだ名の事だ。

化学教師でバツイチ。生徒からの評価はあんまり高いほうじゃない。宿題多いから。


「そうだよ...!!板橋...板橋梨花......」


今度は私の本名...魂の方の本名をぶつぶつ唱えだした。

ちょっと恥ずかしいな。


「......あぁー!!!あのオタク眼鏡!!?」

「オォイ!!!?急に前世のコンプレックスぶっ刺してくるのマジなんなの!!?」

「いやいやいや変わりすぎでしょ!!?いくら肉体に性格が多少引っ張られるからってもう前世のあんた欠片も残ってないよ!?」

「あ、あんたこそ人のこと言えるの!?何が『無礼をお許しください』だよ!そんなキャラの人うちの学校で聞いたこと無いけど!?」

「キャラって言うな!!こっちだって聖獣必死にやってんの!!」

「じゃあ私が王女やっててもいいじゃんか!」

「変わりすぎだって言ってんの!」

「転生して『4年』も経ってるんだからそりゃ人だって変わるでしょうよ!」

「...!?4年...そうか、4年か。」


ぎゃあぎゃあ騒いでたウサギがまた急に静かになる。


「...な、何よ?また聖獣様ムーブってわけ?」

「違うよ。いや、違くは無いけど...そうだな...」


ウサギは木に飛び乗り私の横に立った。


「転生してから4年、そう言ったよね?」

「そうだよ...?それが何か...」

「正確には『ルカ・ロムとしての3年の記憶に前世の記憶が後から張り付いてから4年』そうでしょ?」

「...!そう、そうだよ!転生したのに実際は転移みたいな感じになっちゃってたの!ラノベとかゲームみたいに赤ちゃんの頃から私って訳じゃなかったの!」

「そう。それでいいの。それがこの世界の転生の仕組みだから。」


ウサギは周囲を気にしながら話し続ける。

この場には私たちの他に誰もいないのに、まるで誰かの陰口でも話すかのように。


「転生前の最後の記憶覚えてる?」

「えーっと、始業式だったと思う。何か皆が閉じ込められたかもとかで...それから、変な人?みたいなのが喋って...」

「ディレクター、だね。」

「そうそれ!」

「よし、それだけ分かれば十分。十分だけど一応確認。山越高校の生徒で間違い無いんだよね?」

「...?そりゃだって私たち学校の人全員転生させられてるんでしょ?ディレクター?がそう言ってたし。」


とは言えこの4年間他の転生者とは会ったことがない。

まさかと思って話してみれば聖獣が転生者で。


「四年前、記憶が戻ったタイミングで何か変なこと起きたりした?」

「変な事って何…?異世界転生自体が十分変なことに該当すると思うんだけど…」

「それはそうなんだけど…」


何かウサギは言葉を選んでいるようだった。

それは聖獣としてなのか、それとも前世の何かなのか、私には分からない。

だったら、私に出来ることは一つ。

私はドレスをたくし上げ、あぐらをかいて木の上に座り直す。


「…腹割って話そう?ここから私は王女としてじゃない、一人の二次元オタクとしてあんたの話を聞くからさ。しがらみとかそういうのがあるんなら、一回忘れてよ。」

「………分かった。じゃあもう何も隠さずに話す。記憶が戻ったとき、ディレクターから何か説明みたいなのはあった?」

「無かった。」

「凄いね…それでどうやってスキルを……ってそうか、ロム王国の王族相伝のスキルがあるんだったね。」

「そ、【天啓眼(スルーシーイング)】見た相手の所持スキルを情報として見る事が出来るスキル。」


私はスキルを発動して見せた。

分かってはいたが、そのままウサギを見ても全くスキルを見ることは出来なかった。


「…なるほど、発動中は虹彩が金色に輝く位で目立った予備動作も無いのか…独立したスキルだから魔力の消費も無いと…そのスキル、使用制限は?」

「へ?な、無いと思う…目を使う系の能力にありがちな瞬きで切れるとかもないし…」

「距離は?」

「き、距離?」

「一回に見れる人数は?」

「ち、ちょっと…」

「入ってくる情報は文字?それとも抽象?」

「あの…」

「スキルが見れないときはどういう挙動?」

「ちょっと落ち着け!!」


あまりにぐいぐい来すぎてついには私の膝の上にまで乗ってきた。

…野生のくせにめっちゃ良い触り心地してるじゃん。


「あ、ごめん…」

「…なんでそんなにスキルに貪欲なのよ…」

「…スキルのことを知らないと死んじゃう環境にいたからかな。」

「ふーん、聖獣様でも死んじゃうんだ。」

「……初めから聖獣だったわけじゃ無いから。」

「進化したって感じー?」

「………進化はしてないけど…あの。」

「何?」

「…………一回撫でる手止めて貰って良い?気が散る。」

「あ、ごめん。」


言われて初めて私がウサギを撫で続けていたことに気づいた。

恐ろしい中毒性…これが聖獣か…


「えっと…初めから聖獣じゃ無かったってさ、それ、昔の聖獣ファントムタイガーと何か関係あったりする?」

「…!まあさすがにロム王国側には気づかれてるよな…そうだよ。ファントムタイガーの群れの長から聖獣の役割を引き継いだの。」

「聖獣って引き継げるものなの?」

「前例は無かったみたいだけどね。私はトラ…先代聖獣のファントムタイガーから【獣の支配者(ビーストロード)】を受け取ったの。」

「スキルを受け取る…?スキルって他人から貰えるものなの?」

「…順番に説明してくね。」


ウサギは両耳のふわふわした器官を発光させて辺りを照らした。

明かりがついていて森の中なのに周囲には虫一匹いなかった。


「まず始めに、私が転生者として目覚めたのは四年前じゃ無い。私は大体七年前にネザーランドウサギっていう戦闘能力はおろか魔獣ですら無い獣として目覚めた。」

「七年前…?私より三年早かったって事?……なるほどね…アイツの言ってたある程度の成長を遂げたタイミングってそういうことか」

「そう、各種族ごとに定められた一定の成熟度合いがあってそこに達したときだと思う。弱小生物に転生した私はディレクターの救済措置であるチュートリアルを受けた。ルカがこのチュートリアルを受けられなかったのは、恐らくアイツの言う弱小種族に人間は当てはまらなかったからなんだと思う。」

「チュートリアル無しのゲームスタートか…ってことは、私もしかしてこの転生の本来の目的を知らないままかもって事だよね?何か最後の一人になるまでどうのとか言ってたけど。」

「…その通りなんだけど、なんでそう飲み込みが早いの?」

「鍛えてたから。画面の向こうで。」

「オタクキメー。」

「良いから続き。」


彼女の長く大きな耳を持って促す。

聖獣で放たれてるオーラとかは変わらないはずなんだけど、同じ転生者と分かれば普通に可愛い原宿ウサギだ。


「…チュートリアルで説明されたのは、私たちが共通で持ってるスキル【ステータス開示】と【強欲な殺戮(グリーディキリング)】の説明。」

「あの物騒な名前のスキルか…【天啓眼】でも詳細が見えないから何なのかなって思ってたんだよね。」

「【ステータス開示】の方は見れたんだね。やっぱりこいつだけ扱いが別って事か。」

「ねえ【強欲な殺戮】ってどういう効果なの?」

「……あんたの場合、私が口であれこれ説明するより体験して貰った方が早いかな。」


ウサギは私の膝から下りると耳のふわふわをくるくると回し出す。

その光に釣られて一匹の虫がふらふらと飛んできた。


「その虫、殺してみて。」

「え…?いきなり何…?」

「良いから。その虫の『命を奪うんだ』っていう明確な意思を持って殺してみて。」

「…別に私虫は平気だからそれは良いんだけど…森の守護者?としてそれは大丈夫なの?」

「大丈夫。放っておいてもあと数時間で命が尽きる個体を呼んだから。」

「……そういうことなら。」


私は両手を構えて打ち合わせ、その虫を潰した。

蚊のような虫だったので潰した感覚も無いが、明確に殺そうと思って虫を殺した。


【意思介入を含む絶命を確認 強欲な殺戮(グリーディキリング)発動 スキルを移行】


「…!!?」


何も聞こえてはこない。

ウサギのスキルの効果で私とウサギ以外の発する音は風の音さえ聞こえない。

それでも明確に頭に文字が浮かんでくる。


【移行対象 ブラックモスキート】

【識別名 無し】

【獲得スキル 飛行】

【獲得スキル 吸血】

【獲得スキル 熱源感知】


「…っ!!なるほど…これは私も初知りだ…!付近でスキルが発動されると共鳴するのか……!」

「ウサギ!?何これ!?スキルを移行って何!?」

「落ち着いて。ステータス開示で自分を見てごらん。」


言われるがまま【ステータス開示】を使う


【宝玉の転移門】

【天啓眼】

【強欲な殺戮】

【ステータス開示】

【魔法耐性 レベル4】

・

・

・


【飛行 レベル1】

【吸血 レベル1】

【熱源感知 レベル1】


見慣れたスキル達の下に連なっていたのは、先ほど頭に浮かんだ情報と同じスキルの名称。

…………ああ、クッソそういうことかよ…

趣味最悪だなディレクター…!!!


「………分かった。だから最初に名前を明かしたときあんなに焦ったんだね。」

「ははっ。マジで分かってんじゃん…どういう思考回路してんのオタクって。」

「ディレクターは各自三つのスキルを渡すって言ってた。そのうち二つは【ステータス開示】と【強欲な殺戮】そしてもう一個は私で言うところの【宝玉の転移門】みたいな固有のスキル……」


鳥肌が立った。

今までこの仕組みを知らずに生きてこられたことに。

ミルザの護衛が無かったら?王族じゃなかったら?人間じゃなかったら?

とっくに私は死んでいた。

だって、このスキルは…


「【強欲な殺戮(グリーディキリング)】は…殺した対象のスキルを奪う…より効率的にスキルを奪うなら、殺すのは同じ転生者…!!!」

「そう…それを説明されているのはチュートリアルを受けた転生者だけ…」

「ゲームバランス調整ってことか……それで森の中で生き続けたウサギは凄いね…何のスキル貰ったの…?」

「………スキルで見てみなよ。」

「…?分かった。耐性解除して。」


何故かウサギは目を合わせようとしない。

耐性が解除されたかは見た目には分からないので試しに天啓眼でウサギのスキルを確認する。


【ステータス開示】【強欲な殺戮(グリーディキリング)】【思念共有】【獣の支配者(ビーストロード)】【スキル複製 レベル5】【沈黙空間《サイレンス・フィールド》】【跳躍強化 レベル5】【自然擬態 レベル5】【飛行 レベル5】【魔力探知 レベル5】【予見眼】【魔力吸収 レベル5】【全熱耐性 レベル5】【豪速治癒《ハイヒーリング》】【衝撃無効 レベル5】【魔法無効 レベル5】【詠唱破棄《モノローグマジック》 レベル5】【遊泳 レベル5】【神経毒 レベル5】【花粉集め レベル5】【蟲の知らせ(バグワーニング)】【血液凝固毒 レベル5】【営巣 レベル5】【暗視 レベル5】【魔力操作 レベル5】【鱗粉 レベル5】【業雷魔法】【堅土魔法】【健脚 レベル5】【感知耐性 レベル5】【統治 レベル5】【聖獣覇気】【感知妨害 レベル5】【超音波 レベル5】【魔法操作 レベル5】【嗅覚探知 レベル5】【血流操作 レベル5】【視覚強化 レベル5】 【聴覚強化 レベル5】 【振動感知 レベル5】 【遠距離視認《ハイスコープ》】 【魔力視認 レベル5】【毒物感知 レベル5】【水流感知 レベル5】【空間把握 レベル5】【水上走行 レベル5】【体毛硬化 レベル5】【爪牙強化 レベル5】【剛精神《グレイトソウル》】【斬撃耐性 レベル5】【刺突耐性 レベル5】【魔力枯渇耐性 レベル5】【状態異常耐性 レベル5】【魔力弾 レベル5】【魔力障壁 レベル5】【魔力圧縮 レベル5】【爆炎魔法】【聖水魔法】【粘糸生成 レベル5】【脱皮 レベル5】……………………………………


「多い多い多い多い!!!」

「分かった?」

「分かるか!!!見れども見れどもスキルの海だわ!!!」

「七年間、こつこつと貯めては育てを繰り返してきたからね…」

「結局固有スキルはどれなの?」

「…今は進化して【思念共有】になったけど最初は【動物言語理解】だった…知性のある動物って意外と少ないから、命乞いにしか使えなかったんだけど、お陰でこうして人間とも会話できてるし。」

「……良く生きてこられたね本当。」

「今でも絶賛成長中だよ。まだ森の生き物の半分もスキルを貰えてない。」

「へぇ。最近手に入れたスキルは?」

「【編み物】これが意外と難しいんだ。」

「おばあちゃん……」

「でも、七年経っても結局私が遭遇できた転生者はルカの他には一人だけ。その一人も直接本人と会えたわけじゃ無い。」

「…つまり危険度が未知数って事だ。」

「そう。それに、全員がルカみたいに理性的に話せるとは限らない…」


否定できなかった。

元々普通の高校生だった私たち。それがある日突然異世界へと転生した。

私にとっては憧れの世界だった。何度も画面の前で憧れ、ページをめくる度に高揚していた。

それでもいざ自分が転生するとなれば、喜びの感情だけというわけでも無かった。

時折思い出す、前世の思い出。

今の私の体はどうなったのか、両親はどうしているのか。

自認だが、ある程度異世界への知見がある私でこれなのだ。取り乱してそのまま…なんて人がいないと断定できない。

それならまだしも、このスキルと目的を知った人が本気でこの異世界デスゲームをクリアしようとしていたら。


「……ルカ。質問いい?」

「……どうぞ。」

「…場合によってはこれが最後の会話になるけど、そのときは悪く思わないでね…」


ウサギの言おうとしていることがなんとなく分かる。


「あなたは…『どっち』?」


…やっぱり、普通だったらこう思っちゃうんだよな。

どれだけ蓋しても、気分が高まってそんなこと無いって思っても、心のどこかには。


「…改めて前世に未練が無いかって言われたら、ゼロじゃ無い。」

「うん。」

「お父さんやお母さんがどうなったのか気になるし、やりたいことだって多分あった。発売を楽しみにしてたゲームも、ネットの友達も。」

「うん。」


ウサギはただ相づちを打つだけだった。


「でも。」


私は自分の小さな掌を見つめる。

前世込みでトータル二十数年。それにしては小さく華奢な手だった。


「あなたと敵対してでもこのデスゲームをクリアしたいかって言われたら…答えはノー。」

「…」

「今の私には、ルカ・ロムとして出会った人たちがいる。前世の人生と比べたら半分くらいしかまだ生きてない体だけど、それでもこれも、ルカ・ロムの人生も私の人生だ。」

「そっか…」

「…なんだよ。」

「いいや?オタクのくせに何言ってんだろこいつって思って。」

「ハァ!!?ちょっと良いこと言った感じだったじゃん!!」

「はは、冗談だよ。私も一緒。前世に未練はある、でもこのウサギも私。同じ考えって事。」


ウサギは前足を持ち上げて二足で立ち上がる。

幼女の私の手よりも更に小さな前足を私に掲げた。


「じゃ、とりあえず私たちが殺し合う必要は無さそうだね。」

「まあとりあえず現状はね。いつか急激にホームシックになったらウサギ鍋にしちゃうかも?」

「私全熱耐性と水中呼吸と痛覚遮断あるから鍋の中でも生活できるよ。」

「…ラスボスがアンタなのもう私のクリア無理ゲーじゃん…」


掲げた前足に私の拳を軽くぶつける。

こうして私は、こっちの世界で初めて友人と呼べる人間…ウサギに出会った。


「それじゃ、ルカ!強くなろっか!」

「…は?」

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