75. 対策
今俺は、せっせと執務室で仕事をこなしている。
隣国に行ったりしていたからな、今度リベルとも遺跡調査に出かける約束をしているし、今のうちに出来るだけ片付けておかないと……
俺が必死で書類と向き合っていると、ノックの音がする。
「アルディス様」
「入ってくれ」
「失礼致します」
「なんだ?」
「数点報告が来ております」
俺は、仕事が増える予感がして、思わず目を瞑って上を見た。
深呼吸をする。
「はぁ……聞こうか」
「まず一点、先日信託が降りて、レイン様が内々に勇者に選ばれたようです」
「やっぱりそうか」
「まだ、大々的な発表は無いようですね。ただ、いくつかの貴族は情報を掴んでいるかと」
「ああ、混乱を避けるために、討伐成功後に発表になるかもしれないな。多分これから仲間を集めながら行動していくんだろうな……引き続き調査を頼む」
「かしこまりました。次、二点目ですが、アミュレットの持ち主が判明しました」
「!」
「攫われた子供の中におりました。名前はアイナ」
「そうか」
「やはり魔力が強く、岩を動かすのに協力させられた際に落としたようですね」
「あの岩はかなりの大きさがあったが、いくら魔力が強くても子供には無理じゃないか?」
「はい、私もそう思って聞いたところあの薬を服用していました。さらにその時はあの魔石を持たされていたそうです」
「薬と魔石……併用させられたのか」
「少女に異常は?」
「今のところは……ただどのくらい薬を飲んでいるかですね」
「魔石が埋め込まれていなかっただけマシなのか……」
「三点目の報告です。こちらはそれと関係があるようです」
「なんだ?」
「ノア様より、研究所へ来て欲しいと連絡が入っております」
「ノアから?」
「薬に関しての報告とだけ」
「分かったすぐに行く。準備を」
「かしこまりました」
俺はクラウスと共にノアのところへ向かった。
研究所に着き、ドアを開けて入っていく。
「来たぞノア!」
「出来たぞ」
「何が出来たんだ?」
「あの薬の中和薬だ」
「本当か!」
「ああ」
「それで効果はどんな感じだ?」
「例の薬一本だけ飲んだ人間では、ほとんど中和されて元の薬の効果はほとんど無くなるが、常時服用している場合は、元の効果の精神作用は、ほとんど無くなるのは同じだが、魔力増強などは多少残る」
「その口ぶり、もしかして誰か試したのか?」
「勿論試した」
「誰が?」
「俺だ」
「「……」」
ああ、確かにノアならそうするだろうな……
俺は片手で目元を押さえる。
「ふぅ……今更言っても、もう遅いだろうが……何で自分で実験するんだ!他にも確かめる方法とかあるだろう!魔物を使うとか!」
「自分で使った方が確実に効果を確かめられる」
「まだ、何があるか分かってないんだぞ……」
「……心配しているのか」
「当たり前だろ」
「……すまなかった」
「やってしまったものはしょうがない……これ以上自分を使って実験しないでくれ。俺も早くこの薬の情報を掴んでくる」
「分かった」
「アルディス様、ひとまずこちらの薬を量産に入る形でよろしいでしょうか」
「そうだな、後はどうやって使用者に飲ませるかだな」
「そうですね、確実に届ける為に……」
「希少性をつければ良い」
「ん?希少性?」
「あの薬も金持ちな貴族が買ってるんだ、そんな奴らなら、貴重な妙薬だとでも言えば買うんじゃ無いか?」
「……ノアって結構悪知恵働くんだな」
「フンッ」
「しかしそのアイデアは良いかもしれませんね」
「そうだ!向こうのした事をこっちも真似すればいいんじゃ無いか?」
「真似ですか?」
「瓶に細工をするんだよ、そして高値に設定して、さも貴重な物として売り込む」
「なるほど。高価で貴重となれば見栄を張りたい貴族は買いますね」
「アルディスの方が悪どいな……」
「売った代金は子供達の為に使うさ、知らなかったとは言え、あいつらから薬を買って協力してるんだ、攫われた子供の達の為に使ったって良いだろう。後からバレても反対派はしづらいはずだ」
「確かに」
「クラウス、あの薬を飲んだ子供にも中和薬を飲ませといてくれ」
「かしこまりました」
「ノア、薬作ってくれてありがとうな」
「……」
ノアは、頭を掻きながら研究に戻っていった。
しかし、中和薬はまだ薬の影響を全て無効にしたわけじゃないからな。
もっと深く入り込まないといけないか……
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