67. 違和感
シモンを連れて屋敷に帰った俺は、クラウスにシモンを紹介して、今後の動きについて話し合った。
「シモンは、イーサンとエヴァンの動きを見て護衛がどんな感じか知っておいてくれ、当日はそれっぽくしてくれてたらいい。まあ、ちゃんと見える事にこしたことはないが、怪しまれない程度でいい」
「まぁ、頭はああいってましたが、俺はその辺気にしないっすよ。貴族の護衛なんて逆に面白そうだし、どっかで役に立つかもしれないっすからね」
「まあ、シモンが良ければそうしてくれ、やり方で聞きたい事があれば、クラウスか護衛やってる二人に聞いてくれ」
「りょーかい」
「基本、日中の外出は今まで通りイーサンとエヴァンを連れて行く。シモンは付いて来るなら見つからないようにしてくれ、一応連れてきたが、束縛するつもりはない。一週間後の潜入までは自由にしてくれていい」
「いいんすか?俺みたいなやつこんなとこで自由にして」
「俺はアグニの事を信用出来ると思っている。そのアグニがシモンを勧めてきたんだ」
俺はシモンを見た。
言いたい事は伝わったんだろう、シモンは人差し指で困ったように頬をポリポリとかいた。
「調子狂うっすね、タルクさんの言ってた通りっす」
「なんて言ってたんだ?」
「変わった貴族」
「……」
クラウスにシモンを一旦託して、俺は自室に向かった。
さて、これで次の潜入先に連れて行く護衛も決まったな、出来れば潜入する前に少女を元に戻して話を聞ければ良いんだがな……
バタバタとしているうちに夜も更けて、俺は自室の窓際から夜空を眺める。
丸く輝きながら浮かんだ月を眺めていると、ふとリベルの事を思い出した……
あの時はあわてていたから、じっくりと話を聞けなかったな、あれからどうしているだろうか……
「そう言えば明日は水の日か、元々は約束していたんだが、明日の朝に使いを出して昼前に会いに行くか……」
次の日俺は、朝からリベル宛に今日の昼前から会いたいといった手紙を、使用人に持っていかせた。
リベルの返事は是非会いたいと返事が返ってきた。
最近滞りがちだった書類仕事を片付けて、昼前にリベルとの待ち合わせ場所へ向かった。
ちなみに、今日の護衛は遠慮してもらった、イーサンとエヴァンにはしぶられたが、どうにか納得してもらい一人でリベルに会いに行く。
前回と同様に広場へ行くと、今日はリベルが先に待っていた。
「アルディス様!」
「ああ、待たせてしまったか?」
「いえ、前はアルディス様を待たせてしまったので、今日は僕がアルディス様より先に来たかったんです」
「そうか。今日は体調はどうだ?リベルが良ければ天気も良いし、少し散歩でもしないか?」
「はい、大丈夫です!」
「じゃあ行こうか」
俺とリベルは並んで少しゆっくりと歩き始めた。
街の行き交う人や、並ぶ店を見ながら軽く話し始める。
リベルとの会話は、もっぱら最近読んだ面白かった本についての話が多いんだが。
暫く散歩をしてから、お昼を食べに全開と同じ店に入る。
「さっきも聞いたが、あれから体調はどうだ?寝付きが悪いと言っていただろう?」
「はい……相変わらず夢を見てるみたいなんですが、起きた時にはほとんど覚えてなかったんですが、最近ほんの少しだけ目を覚ました時に、覚えてた事があるんです」
「俺が聞いても良いのか?」
「はい、大丈夫です。本当に少しなんですけど、何か画面がぼんやり光ってて、それをじっと見つめている自分がいるんです。覚えてるのは、ただそれだけなんで、意味は分からないんですけど」
「確かに……それだけじゃ何ともいえないな……」
画面がぼんやり光るか……俺は一瞬、ゲームモニターを想像してしまったが、この世界にそんなものはないしな、きっと別のものなんだろう。
食事をしつつ、そう言えば魔導書と遺跡について聞くんだったなと思い、そっちの話を聞いてみる事にした。
「そう言えば、魔導書と遺跡についての本はどうだ?」
「魔導書は、前に話した事以外では特に新たな事は分かりませんでした。やっぱり下巻が必要みたいですね。遺跡の本で新しく分かったのは、どうやら何か条件を満たせば、遺跡の中にある装置のようなものが動き始めるんじゃないかって……後、遺跡は全部で五つあって、五つ全部を作動させると何かが変わると書いてありました」
「遺跡の方なんだが、入る許可が降りたんだ。それて、リベルも一緒に行かないか」
「行きたいです!……あ、でも何日か休みが要りますよね?」
「そうだな、多分行くだけでも1日から2日はかかるからな、最低でも5、6日はあった方が良いだろう。リベルが休める様に、俺の方からも図書館に一言入れよう」
「ありがとうございます!すごく楽しみです」
食事を終えた俺は、リベルを展望台へ誘った。
やってきた展望台は丁度誰もおらず、俺とリベルの二人だけだった。
「風が気持ち良いですね……」
「ああ、ここは俺が特別気に入っている場所なんだ……」
展望台の柵に手をかけて王都を眺めているリベルを後ろから見ていると、ふとリベルの輪郭が一瞬ブレたような気がした。
「え?……」
俺はもう一度リベルを見たが、いつもと変わらない……
リベルが振り向いてこちらを見てきた。
「アルディス様?」
「あ、いや……何でもない」
俺はリベルの側によりリベルの横顔を見つめる……
視線を感じたのか、リベルがこっちを振り向いた。
「どうしたんですか?」
「何だかリベルが……」
「僕がどうかしましたか?」
「いや……何も」
こっちを見つめるリベルの、風で乱れて頬にかかった髪を、手で避けて耳にかけてやる。
「あ……」
「髪が……」
目を細めて、少しくすぐったそうにするリベリを見て、さっきのはやはり気のせいだったんだろうと思った……
リベルを送り届けた際に、遺跡に行く日を改めて連絡すると約束して屋敷へ帰った。
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