66. 次への準備
王都の城門に入る前にアグニ達とは別れた。
別れ際に、
「とりあえず、何かあればまた連絡する」
「ああ、待ってるぜ」
そう言って去っていった。
城門を通り過ぎると、急いで研究所へ向かい、ノアに花を見せる。
「この花を使って出来るアイテムに、一定時間魔力を回復し続ける効果がある物が作れるはずなんだが……必要な材料も揃えてある。これで作ることは可能か?」
「見せてみろ」
俺は花と、その他に必要な材料を机に並べていく。
ゲームでは材料を揃えれば、後は簡単にボタンひとつでアイテムが出来上がっていたのにな。
念の為に、材料を調べたことがあったのは良かった……
ノアが花や揃えた材料を見比べた後、頷きながら
「何とかなりそうだな」
「本当か!」
「ああ」
「足りないものは知らせてくれ、よろしく頼む」
「彼女の様子はどうだ?」
「今のところ、大きな変化はない」
「そうか……」
俺はそう言うと、少女がいる部屋へ入る。
側に世話係のメイドが控えているのを見て、声をかける。
「ご苦労、様子はどうだ?」
「はい。時折り目を覚まされた際に食事を、他はノア様が眠らせておられます」
「意思は感じるか?」
メイドは首を振る。
「ただ……眠っている際に、苦しそうにされる事があり、何か言葉を話そうとされます」
「そうか……引き続きよろしく頼む」
「はい」
俺は研究所を出て屋敷へ帰る。
屋敷へ戻った時はもう昼も過ぎていた。着替えと食事を済ませた後は暫く自室で休憩を取ることにした。
とりあえず、今俺ができる事はやっているはず……
時間がもっと欲しくなるな、こんなところもやはりゲームとは違い時間は待ってくれない……
特に今回は、人の命が目の前で左右されている状態だ。こんな事自分が体験するなんて、今までは思った事なかったのにな。
あれこれ考えていたら、疲れていたんだろううたた寝をしていたところを、クラウスに起こされた。
「ア……様。……アル……ス様」
「ん……クラウスか……」
「アルディス様、休暇中に失礼します」
「いや、大丈夫だ。どうした?」
「例の組織の人間からの使いから、こちらが用意した者に接触し、手紙を受け取ったと報告がありました」
「ノアールからか」
「はい。こちらがその手紙です」
クラウスから手紙を受け取り中を確認する。
手紙には、1週間後に特別な場所へ招待する事、迎えを寄越すので時間になったら指定の場所へ来るようにとあった。護衛の許可が1人まである。
「1週間後に特別な場所とやらへ連れていってくれるらしい……護衛が1人か、クラウスやイーサン、エヴァンは普段から俺と行動しているから顔が割れているだろう……あの変装の魔道具がもう一つ作れれば良いんだがな。ノアは手が離せないし、どうするか……」
「護衛1人ならば、私が適任かと思いますが流石にそのままでは無理がありますね……騎士団も同じく身元が分かってしまうでしょう」
「実際、護衛としての役割は回ってこないだろうが、連れて行かないのも不自然だな……信用出来てなるべく事情を考慮できる誰か……」
「「あ」」
俺とクラウスは顔を見合わせて頷く。
「いるな」
「いますね」
「護衛なんだから、多少粗くても良いだろう」
「そうですね。顔も仕事柄、知られていないでしょう」
「まぁそうだな。よし、会いに行くか!」
「お気をつけて」
俺は、街に出ると、勝手知ったる何とやらでたどり着いた先の扉を慣れた様子で開けて入る。
「アグニ!」
中にいたアグニが、俺の顔を見てため息を吐いた。
「さっき別れたような気がするんだがな……」
「ああ、俺もそう思う」
「貴族のくせに、しょっちゅう来るんじゃねぇよ!」
「まあまあ、そう言うな。ちょっとお願いに来たんだよ、そっちにも関係がある」
「はあ、次は何なんだ……」
「この間の潜入先から新たに招待が来た。もっと深入り出来そうだ」
「それで」
俺が潜入の話をすると、真面目に耳を傾けて来た。
「向こうに行く際に、護衛を連れて行けるそうだ。で、こっちからは身元が分かるから出せない」
ここまで言うと、ピンと来たようだ。
「面が割れていない、事情も知ってる俺のところからってわけか」
「そうだ」
「お上品な護衛はできないぞ」
「そんなもの期待していないさ」
アグニは暫く考えた後、1人の男に声をかける。
「シモン……」
「はいよー」
名前を呼ばれた男が前に出て来た。
年齢は俺より少し上くらいか、紺色の髪が目を隠しているので表情が分かりづらいが、見えている口元には笑みを浮かべている。
「コイツを連れて行け」
「シモンでよかったか?出来れば当日までの一週間俺と一緒に過ごして欲しいんだが……」
「は?……」
シモンはチラリとアグニを見たようだ。
「行ってこい」
「マジっすか……はぁ、分かりました」
「よろしく頼む」
「何かあればまた来る」
アグニが嫌そうにヒラヒラと追い払うように手を振るのを見て、俺はシモンを連れてアジトを出た。
「あ、突然連れ出したが、準備とか誰かに留守を伝えるとかはしなくていいか?」
「んーそうっすね、別に伝える相手もいませんし良いですよ」
「そうか、必要な物があれば屋敷にいるクラウスに伝えてくれ」
「りょーかい」
俺はシモンと一緒に屋敷へ戻った。
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