61. 救う為に
ノアの研究所に着いた俺は、少女を抱えると、駆け込むようにして、ノアのところへ向かった。
「ノア!ノア!いるんだろう!」
「なんだ、こんな時間に」
「急いでこの子を見てくれ!」
ノアがのっそりと奥の部屋からで出来た、寝ていたようだが、俺が抱える少女を一瞥すると、目を見開いて駆け寄って来た。
「これはどうした!?何故こんな事に!?」
「話は後だ、今出来る事はないか!」
ノアが少女をテーブルの上に寝かせるように指示して来たので、俺はそっと長テーブルに寝かせる。
ノアが少女を観察し始める。
「この胸に埋め込まれた魔石が原因らしい。魔力を増幅させると言っていた」
「うむ、上げる……と言うよりもはや魔力暴走だな」
「魔力暴走……この魔石を取れば良いのか?」
「いや、単純に取れば良いというわけではない、もはやこの少女の魔力と混ざり合っている為、いきなり取ってしまっては、本人の魔力が全て失われ最悪死に至るし、良くて廃人のようになるだろう」
「じゃあどうすれば良い?」
「とりあえず、これ以上魔力を消費させないようにし、暴走を止める事だが……」
俺は必死に考える、何かアイデアは無いのか……こんな時の知識だろう……
「魔石を切り離す事ができれば一番良いが、切り離す時にこの少女の魔力を常に回復させ続けなければならない。だがこの少女の魔力は大きくなり過ぎている為、普通の回復では追いつかない……」
「回復……この子にまだ時間はあるか?」
「今すぐどうこうはならんだろうが、早く処置した方がいいな。とりあえず、強制的に眠らせて、定期的に魔力回復薬を飲ませておく。眠っていれば少しは魔力を抑えれるだろう」
「わかった、回復薬を後で届けさせる、後世話をする者をよこす」
そこへ、連絡が行ったのだろう、クラウスがやって来た。
「アルディス様、報告を受け参りました。それで件の少女は……」
「ああ、今ノアに見てもらったが、簡単にはいかないみたいだな」
クラウスも少女を見ると、眉を顰める。
「酷い事を……」
「ノアのところに、魔力回復薬と少女の世話に一人付けてくれ」
「かしこまりました」
ノアに少女を託し、ひとまず俺は屋敷の方へ戻った。
「ふう……疲れたな」
「お疲れ様でございました」
くらが紅茶を淹れて渡してくるのを受け取り、一口飲むと、自然と肩の力が抜ける。
「まさか潜入先で、少女を連れ帰って来られるとは」
「俺も驚いたよ、何かあるだろうとは思ったがまさかあんな事をしてるとはな」
「助ける方法に何か心当たりがおありですか?」
「さっきからそれを考えているんだが……。膨大な魔力を回復しながら着けられた魔石を取り除く方法か……」
だんだん思い出して来た。
ゲームでも魔力を大きく回復するアイテムがあったような気がする……
俺は使った事が無かったが、たしか……
どっかに咲く花を元に作ったアイテムが、カンストMPでも一定時間満タンに回復し続けるって一部のプレイヤーが使ってたんだが、肝心の花は一人一回しか取れないし、他のプレイヤーから買うにも金額が高騰して割に合わない物になっていた。
「一つだけ方法を思い出した」
「どのような」
「前の知識で、とある場所に咲く花を使ったアイテムが使えるはずだ」
「何処に咲くのでしょうか」
「それなんだがな……場所を思い出せなくてな」
「アルディス様が思い出さないとは珍しいですね……花ですか、図鑑などに載っていないでしょうか」
「図鑑か、植物専用の図鑑ならもしかしたら載っているかも知れないな……図書館に調べに行ってみるか」
「こちらも手掛かりを探してみます」
明日花の場所がわかれば良いんだが……
疲れていた俺は少し横になったつもりが、そのまま眠ってしまったようだった。
次の日、もう一度改めて少女の様子を見に行くと、昨日は虚ろな目をしていたが、今日はノアが眠らせているんだろう目を閉じていた。
魔力も昨日よりは少し落ち着いているようだ。
「昨日あれから思い出したが、一つ方法があるかも知れない」
「なんだ」
「とある花を使ったアイテムが問題を解決するかも知れない。今からその花について調べてくる」
「……わかった」
ノアの研究所を出て、そのまま王立図書館に向かった。
今日はリベルに会いに来たわけではないが、一応声をかけておくか。
リベルを探すと、すぐに見つかったので声をかける。
「リベル」
「アルディス様!どうしたんですか?お約束の日までまだありますが?」
「今日はちょっと調べ物をしに来たんだ」
「調べ物ですか?本のことなら力になれると思いますよ」
「ああ、とある花を探していてな。それで、花が咲いている場所が図鑑か何かに載っていないかと思ってな」
「花ですか……どんな花かお聞きしても良いですか?」
「……花はクリスタルのような見た目で、ある場所でしか咲かない。その花を加工すれば魔力回復のアイテムが作れるらしいんだ」
「……」
俺が説明をすると、リベルはぼうっとしていたかと思えば、突然口を開いた。
「その花は、魔力濃度が高い王都から北にある洞窟に咲く花です。洞窟は魔力が高い物しか入れず。複雑に入り組んでいて、強い魔物と罠が仕掛けられています……」
「え、リベル。知っているのか?!」
「……え!?なんですか?」
驚いてリベルの肩を掴むと、驚いたような顔になる。
「今、リベルが花の場所の説明し出したんだ」
「え、僕が……」
どうやら無意識に話し出したらしい……
リベルの顔色が変わる。
どうしたんだ……
「大丈夫か?少し休んだ方がいい」
まだ少し呆然としているリベルを支えて、近くの椅子に座らせる。
「何か飲み物を持ってこよう」
そう言って立ち上がりかけると、リベルが腕を掴んできた。
震えているのか?
「どうした?」
「行かないで……側にいて……下さい」
「わかった」
俺はリベルが落ち着くならと、横に腰掛けた。
暫くして落ち着いたのかリベルがポツリと話し出す。
「最近、ちょっと夢見が悪くて……自分が自分じゃなくなりそうで、怖いんです。でもアルディス様が近くにいると何故か落ち着くんです」
そう言って、俺を服を掴んだまま見上げてくるリベルの瞳は不安にように揺らいでいた。
その瞳を覗き込むと不思議な感覚に囚われる。懐かしいような、自分に近い何か、離れ難いと感じさせる……
「リベル……俺もリベルを見ていると不思議な感じがする」
「アルディス様……」
「待っていてくれ……リベルの不安を解消して見せる」
「……はい」
リベルは落ち着いたが、花の話はしない方が良いと思い、そのまま図書館を出た。
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