59. 潜入
クラウスから、変装の為の魔道具が出来たと報告があり、ノアのところで最終調整をする事になった。
結局ノアに作らせたんだな……
「ノア、変装魔道具出来たらしいな」
「ああ、これだ」
ノアから見せられたのは、金色の指輪が2つ。指輪の中央に魔石らしきものが嵌っている。
「指輪か」
「指にはめて、魔力を流して見ろ」
俺はまず一つを手に取り、観察する。指輪の内側に細かく紋様が刻まれている。以前幻影の魔道具に刻まれていたものに似ているな……
俺は二つの指輪を嵌めてから、魔力を流してみる。
自分の周りに薄らと魔力の膜が出来て、その後身体の中に収まったように感じた。
「異常はないか」
「特に違和感はないが……ん?声が少し違うな、後は何が変わってるんだ?自分じゃ分からないんだが…」
「アルディス様、こちらを……」
クラウスが鏡を差し出したので、受け取って鏡を覗くと髪色が赤に瞳の色が金に変わった俺がいた。
「凄いな、本当に変わっている」
「以前作った幻影の魔道具を応用した。今回は長時間の変装に耐える様に、髪と目、声のみに対象を絞ることで長い時間、使える様にしてある」
「それは有り難いな」
「急いで作ったから、まずはこんなものだろう」
「これだけ変えれば、大丈夫だろう」
「残念ながら顔の形を変えるところまでは行きませんでした……」
クラウスがとても残念そうに告げてくる……
頑張ったのはノアなんだがな。
「まぁ、基本は仮面があるから大丈夫だろう」
「万が一という事もありますので」
「気をつける。ノア、急いでもらってすまなかったな」
「いや、面白かったからいい」
「この後は少し休んでくれ」
「……ああ」
クラウスが急がせたんだろう、ノアの目の下に隈が出来ている。休むように言ったが、休まないんだろな……
ノアの研究所を出て屋敷に帰り、クラウスと打ち合わせをする。
「クラウス、相手から返事は来たか?」
「はい、届いております」
そう言って、クラウスが手紙を差し出す。
「……少し急だが、明後日にある会に招待してくれるそうだ」
「確かに急ではありますが、それだけ早く情報を得られると考えれば良い事かと」
「では作戦開始といこうか」
俺はクラウスが用意してくれた家紋のない馬車に乗り、招待された場所へ向かった。
一時的に、何処かの貴族の持ち物であろう屋敷を借りたか、買い取ったのだろう。わりと大きな屋敷の前に着いた。
俺は変装した上で仮面を付けて馬車を降りると、出迎えの男に招待状を渡す。
すんなりと中へ通されると、さらに別の男が案内をするので後ろから着いていく。
案内人の男が扉の前で立ち止まり、扉をノックする。
「トライール様をご案内いたしました」
男が中に声をかけると、扉が開き中へ招かれる。中へ一歩踏み込むと、そこには仮面を付けた数人の男女がいた。
そのうちの一人、以前あの夜会で話しかけて来た白い仮面に三日月のマークが入った男が声をかけて来た。
「ようこそおいで下さいました。トライール様」
「ああ、ノアールだったな」
「ええ、覚えていてくださって嬉しいですね、貴方なら是非来てくださると思っていましたよ。今夜は以前と雰囲気が違うようですが……」
「ああ、以前は少しばかり見た目を変えていたんだ」
前回は仮面を付けただけだったからな、こっちの方を本当の姿見だと思ってもらった方が良いだろう。
「そういう事ですか。それはそれは、もても用心深い。だが、警戒するのはとても良い事です」
今日は、悪役貴族を演じるつもりで来た、本来のゲームで出てくるアルディスをイメージして振る舞うようにしている。
「で、今日はどんな集まりなんだ?」
「今日集まった方は、それぞれ直接私がお声をかけた方です。より深く親睦を深め、互いに信頼に値すると判断出来れば我々の一員として、特別な場所にご招待いたします」
「なら、信頼して貰えるように努力しよう」
「そちらのお姿、少しはこちらを信頼していると思っても?」
俺は挑発的にニヤリと笑って返すと、男の目が細くなる。
「後で余興も用意しておりますので、ゆっくりとお楽しみください」
そう言うと、ノアールは他の参加者の方へ歩いて行った。
とりあえず、興味は持ってもらえたようだな。
さて、夜は長い。
はたして今回で仲間に迎えられるのか……後はここでどんな話が聞けるかだな。
俺は他の参加者に声をかけに足を踏み出した。
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