58. 剣と魔法の訓練
「潜入するための準備が整うまで、時間もあることだし今日は、体を動かしに行くか」
俺は、訓練場に行きやっぱりそこにいたフォルスに声をかけた。
「フォルス!」
「アルディス様。何か御用ですか?」
「俺も体を動かしたくてな、フォルス……セランがいないからって訓練場にばかりいるみたいだが、大丈夫か?」
「あははっ……大丈夫ですって!ちゃんとやってますから!」
「ならいいんだが……そうだ加護で得た力はどうだ?」
「ああ、だいぶ使い慣れましたよ。力が上がって最初は加減に戸惑いましたが」
「それは良かったな、今から俺と打ち合うか?」
「そう言えばアルディス様も加護、貰ったんですよね……隊の者では少し物足りなかったところです。是非お願いします」
ファルスはそう言うと、すでに戦闘モードになっているのか、顔つきがギラギラしたものに変わっている。
戦うの好きだよな……
訓練用の剣を持ち、俺とファルスが訓練場の真ん中へ移動すると、周りの団員たちが自然と壁際へ下がって観戦し始める。
周りのざわめきが遠ざかり、俺はフォルスに集中する。
お互いにどちらが先に仕掛けるか待っている状態が続いたが、フォルスが先に動きを見せた。
素早い動きで、まずは一太刀。俺が受け止めることを分かっていたように、すぐに次の一撃が振り下ろされる。
俺もそれに合わせて剣を受け止め、反撃をする。
辺りには俺達の剣がぶつかる音だけが響く……
「準備運動は終わりで良いか?」
「勿論です、ここから少し本気で行きますよ!」
俺達のスピードが上がったことで、周りが息を呑んだ。
「早い……」
「流石団長だ」
「アルディス様もかなりの腕前だな……」
「前よりも強さが上がってないか?」
「やっぱ流石アルディス様だな」
「アルディス様なら当然……」
イーサンとエヴァンが自慢げにしている。
そろそろお互いに決着をつけようと、間合いを取り互いに構えると、同時に剣を繰り出した。
俺はフォルスの剣を躱し、フォルスの胴に打ち込む、フォルスはぎりぎりで俺の剣を防ぐが、勢いまでは殺しきれず、そのまま吹っ飛ばされた。
「団長!」
飛ばされたフォルスに団員が駆け寄ると、フォルスはむくりと体を起こした。
「いや~!参りました!流石ですねアルディス様」
「大丈夫か?」
「ええ、受け身は取れましたからね、問題ありません」
俺はフォルスに手を差し出すと、フォルスが俺の手を取り立ちあがった。
「アルディス様お疲れさまです」
「……凄かったです」
イーサンとエヴァンが駆け寄り、エヴァンが俺にタオルを差し出してくる。
「ありがとう」
俺は、礼を言ってエヴァンからタオルを受け取り汗を拭いていると、フォルスが近づいて話しかけてきた。
「この後はどうしますか?」
「あー、出来れば魔法の戦闘訓練もやっておきたいんだよな……」
「そうですね、うちの団員で魔法の得意な者を出しましょう」
「お願いするよ」
フォルスは少し考えて、二名の団員の名を呼んだ。
「コルト!ラーナ!」
「「はい!」」
名前を呼ばれた二人が走ってくる。
「お前たちにアルディス様と魔法で戦闘訓練をしてもらう」
「私たちとですか?」
やってきた二人は女性騎士で、コルトは茶色い髪を肩につかないくらいに切り揃えた可愛い顔立ちで、ラーナは薄い金髪の長い髪をポニーテールにしている、きつめの美人だった。
「アルディス様、この二人は主に魔法を使っての戦闘を主にしています。コルトは水を、ラーナは少し珍しい氷を使います」
「水を氷か……」
「先にどちらと戦いますか?」
「……いや、同時に戦う」
「「!」」
俺が同時にと言った瞬間、ラーナがこっちを睨みつけて来る。
……ゾクッ
いやいや今はそんな場合じゃない。ドキドキと高鳴る心臓を落ち着けつようと、ラーナを見ないようにする。
最近は無かったから、油断していた。俺は久々にきた変態性癖を抑えこみ、何事も無かったようにフォルスに話しかける。
「さ、さあ俺はいつでも準備は良いぞ」
「では、審判は俺が勤めましょう。二人とも準備は良いか?」
「「はい!」」
中央に出た俺達は向き合う。
「まずはそっちから仕掛けてきて良いぞ」
「わかりました!」
「……二人同時になんて甘く見られたもんですね」
「別にそういうつもりはないが」
「行きますよ!」
二人はそれぞれ魔法を展開して攻撃を始めた。
コルトは水球をいくつも浮かべてこちらに放ってくる。同時にラーナも先が尖った大きめの氷を放つが、
俺が出した大きな火柱に当たりどちらもきえてしまう。
「……流石ですね」
「水が消えちゃった……」
「水は火を消せるが、炎の威力が強ければ水は蒸発する。二人ともこんなもんか?」
「これからです!」
コルトとラーナが何度も挑戦してくるのを、俺は躱したり防いだりを繰り返しながら観察する。
この二人、魔力操作はかなりのもんだな。しかしお互い単体で攻撃するばかりだな……。
「よし、ここからは反撃させてもらうぞ」
俺は一気に魔力を練り上げると、二人を竜巻で囲うそこへ水魔法を重ねる。
「突破出来れば、君たちの勝ちだ」
「くっ……こんなもの!」
二人が魔法を打ち込むも竜巻が消える気配はなく、むしろ徐々に竜巻が狭まって来ている事に焦りだしている。
「ラーナ!そろそろ、降参しないと私たちヤバいんじゃない!?」
「く……分かった」
あともう少しで竜巻に巻き込まれるというところまで来たとき、
「降参しまーす!」
「……参りました」
俺は竜巻を解除した。
「二人とも大丈夫か?」
「はい。大丈夫です!アルディス様は魔法も強いんですね!」
「……」
コルトは素直に称賛してくるが、ラーナは納得がいかないみたいだな。
「二人は協力して魔法は使わないのか?」
「協力?」
「ああ、コルトは水を使うよな?水は凍る……ならコルトの水を利用するんだよ」
「「!」」
「コルトが水を地面に予め撒いておけば敵をおびき寄せて、氷で貫くことや足元を凍らせることも可能だろうし、ラーナの氷の硬さを利用して中に水を流すことも出来るんじゃないか?」
「そんな方法が……!」
「凄い!考えたこともありませんでした!」
今の説明で、ラーナから向けられる鋭い視線が無くなった……
その後は二人で、色々話し合いだしたので俺はそばを離れた。
ずっと睨まれていたから、体が反応するのを抑えるのが大変だった……
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