第五話 勇者との出会い
暴れ馬の騒動から数日。
悠斗は再び王都へ来ていた。
「今日は贈り物を買わないと」
「前回は寄り道ばかりでしたからね」
「反省してる」
そう言いながら店を見て回っていると、前方から怒鳴り声が聞こえてきた。
「だから違うって言ってるだろ!」
「盗んだところを見たんだ!」
人だかりの中心には、一人の少年が立っていた。
年は十五、六歳くらい。
黒髪に青い瞳。
旅人らしい服装をしている。
……え
あいつは、見間違えるはずがない。
ゲームの主人公だ。
後に勇者と呼ばれる青年――レイン。
こんなところで会うのか。
ゲームでは主人公が王都へ来た直後のイベントだな。
市場で財布泥棒と間違われる場面で、もちろん犯人は別にいる。
「盗んでない!」
「証拠はあるのか!」
これはゲーム通りか。
「…クラウス」
「はい」
「犯人、あそこの露店の影でこっそり逃げようとしてる」
「確かにおりますね」
「ちょっと捕まえてきて」
「お任せください」
次の瞬間には、クラウスの姿が消えていた。
数秒後。
「離せ!」
逃げようとしていた男が、クラウスに連れられて戻ってきた。男の懐から財布が見つかった。
「あっ!」
「俺の財布だ!」
「アイツが犯人だったのか……」
「じゃあ、あの子は」
周囲がざわついている。
「助かった……」
「人違いだったみたいだな」
少年が俺を見てくる。その目が胸元の侯爵家の紋章。
立派な服装。そして最後に顔を見ると、一瞬だけ警戒したものの、すぐに頭を下げた。
「ありがとう」
「礼ならクラウスに言ってくれ」
「いえ、ご主人が命じてくださらなければ動きませんでした」
「本当にありがとう」
「気にするな。困ってる人を助けるのは普通だろ」
その言葉に、少年は少し驚いた顔をした。
「……あんた、変わった貴族なんだな」
「最近、よく言われる」
「あははっ!そうなんだ。俺はレイン!旅をしながら剣の修行してるんだ!」
少年は右手を差し出した来たので、握り返す。
ゲーム通りだな
まだ勇者になる前。
ただの旅人、レイン。
「アルディスだ」
「よろしく!」
「ああ、よろしく」
ゲームでは最後には敵対して剣を交える二人。
けれどこの日交わしたのは、敵意ではなく握手だった。
その光景を、少し離れた建物の屋上から見つめる影があった。
「……やっぱり、変わってる」
小さく呟くと、その人物は誰にも気付かれないまま姿を消した。




