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攻略知識が役に立たない世界でした〜悪役貴族に転生した俺は、変態体質と死亡グラフを無くしたい〜  作者: 洸夜 真琥
第一章 ゲームにはない世界

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第四話 侯爵様、街へ行く

「街へ?」


朝食を食べながら、クラウスの言葉を聞き返した。


「はい。本日は特に急ぎの予定はございません」

「珍しいな」

「そこで、展覧会の日も近づいております。ので婚約者への贈り物でもお探しになってはいかがでしょう」

「贈り物?」

「女性はそういったお気遣いを喜ばれるものです」


なるほど……

ゲームではそんなイベントはなかった。

でも、セシリアなら喜んでくれそうだ。


「じゃあ行くか」

「かしこまりました」




馬車に揺られ、王都の商業区へ到着する。

石畳の道には露店が並び、人々の活気であふれている。

おぉ……。

ゲームでは何度も歩いた街並み。

だけど実際に見ると全然違う。

焼きたてのパンの匂い。

果物を売る商人の声。

子どもたちが元気よく走り回る姿。


「ゲームじゃ分からないことばっかりだな」

「アルディス様?」

「いや、独り言」


歩き始めると、道行く人たちがこちらに気付く。


「あれ、侯爵家の……」

「アルディス様じゃない?」


ひそひそ。

やっぱり目立つよな。

小さな男の子がこちらを指差してる。


「お母さん、 あの人悪い貴族なんでしょ?」

「しっ!」


母親が慌てて口を塞ぐけど、しっかり聞こえている。

子供の言葉が心に刺さる…


「申し訳ありません!」

「いや、大丈夫だ」

「あれ?」

「怒らないの?」

「怒られたいのか?」

「……怒られたくない!」


元気よく答える男の子に、苦笑いを浮かべる。 

子供って正直だよね。


その時。

人混みの向こうから悲鳴が聞こえる。


「逃げろー!」

「馬が暴れてる!」


馬車を引いていた大きな馬が興奮し、人を振り払って暴れ回っている。

店の商品が倒れ、人々は逃げ惑う。


「アルディス様!」


あれ……?

このイベント、たしか…。

ゲームではサブイベントだったはず。

暴れている馬を止めるやつ。

やれるか?


「アルディス様! 危険です!」

「大丈夫だ」


身体はアルディスだ、ゲームじゃ俺より何倍も強い。

なら、避けられる。

横へ一歩。

ドンッ!

地面を蹴った馬の横へ回り込み、首筋へ手を添えた。


「落ち着け」


暴れる馬。

少しずつ落ち着きをとりもどし、やがて馬の動きが止まる。


「ブルル……」

「よしよし」


首を撫でると、馬は安心したように鼻を鳴らした。

静まり返る街。

商人が駆け寄ってくる。


「助かった……!」

「ありがとうございます!」

「アルディス様が助けてくださった!」


周囲から拍手が起きる。

子供も目を輝かせる。


「すごーい!」

「悪い貴族じゃなかった!」


「アルディス様、お怪我は?」

「大丈夫だ」

「以前のアルディス様でしたら、近付こうともなさらなかった」

「まあ……今は違うからな」

「ええ」


少し恥ずかしいな。




一人の青年が、人だかりの向こうを静かに見つめていた。


「……アルディス?」

小さく呟く。

「いや、なんか…違う…?」


知っているアルディスなら、人助けなんてしない。

青年は懐から小さな手帳を取り出し、一行だけ書き加えた。


『暴れ馬イベント アルディスが解決』


「ゲームと違う……」

「もしかして、彼もそうなの?」


その呟きだけを残し、青年は人混みの中へ姿を消した。

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