第三話 身体は正直でした
「アルディス様」
「ん?」
「本日の執務ですが、その前に騎士団長がお会いしたいと」
「騎士団長?」
「先日の剣術訓練のお話だそうです」
「分かった」
ゲームでもいたな、騎士団長。
確かアルディスの剣術指南役だったはずだ。
訓練場へ向かうと、木剣を振る騎士たちの掛け声が響いていた。
「アルディス様!」
「久しぶりに一本いかがですかな」
大柄な男が近づいてくる。
いやいや、ゲーム知識はあっても剣なんて振れないぞ。
断ろうかと思った、その時。
身体が自然と木剣を手に取る。
「……え?」
軽く振る。
ブンッ。
風を切る音。
え、振れる。
身体が覚えている。
「ほう!」
「今日はいつも以上にやる気ですな!」
「いや、そんなつもりじゃ」
言い終わる前に身体が動く。
カンッ!
木剣同士がぶつかる。
うわっ!
勝手に動く!
身体任せで数合打ち合う。
最後は団長が笑いながら木剣を下ろした。
「見事です!」
「はぁ……」
疲れた。
「以前より動きが柔らかくなりましたな」
一人の女性騎士が近づいてきた。
短く切った黒髪に鋭い目つき。
腕を組み、じっと見こちらを見てくる。
「アルディス様」
「何?」
「今日は随分まともですね」
「え?」
「いつもなら、もっと嫌味の一つでも言うかと」
前のアルディス、どれだけ嫌われてるんだ
女性騎士は小さく鼻を鳴らす。
「はぁ…。何も言わないんですか?」
その視線は冷たい。
まるで問題児を見る教師のようだ。
その瞬間。
ゾクッ。
……ん?
妙な感覚が背中を駆け抜ける。
え?
身体が熱い。
鼓動が速い。
ちょっと待て。
女性騎士はさらに呆れたような目を向ける。
おい。
身体。
やめろ。
何で喜んでる!?
必死に真顔を保つ。
違う違う違う!
俺じゃない!
身体が勝手に!
「アルディス様?」
「顔が赤いですが」
「ち、違う!」
「何がです?」
「その……暑い!」
「今日は涼しいですが」
「……」
逃げ道がない。
後ろから騎士団長が豪快に笑う。
「はっはっは! アルディス様は昔から女性騎士殿に睨まれると黙りますな!」
「え?」
「最初は言い返しておられたのですが、最近は赤くなるだけです」
「それ知ってたの!?」
「騎士団では有名ですぞ!」
「やめてぇぇぇ!」
訓練場に笑い声が響く中、女性騎士だけは、不思議そうに首を傾げていた。
「……やっぱり変な方ですね」
ジトー。
だからその目はダメぇぇぇ!!
身体は正直だった。
心の底から思う。
変な設定残すなよ!!




