55. 交差する事件
ギルから聞いた話を、屋敷に帰った後に、クラウスを呼んで伝える事にした。
部屋にクラウスが訪ねて来たので、そのまま聞いた通りに話す。
「なるほど、その怪しげな者たち気になりますね」
「ああ、薬の連中と繋がっているかもしれないから、一応探っておいた方が良いと思ってな」
「そうですね、調べておきましょう」
「行方不明と言えば、アミュレットの少女の件はどうだ?」
「実は、そちらもどうも人が介入している形跡が出て来ました」
「攫われたのか?」
「まだはっきりとはしませんが、可能性は高いかと」
「どちらも攫われているとしたら、繋がりがあるかもしれないな…」
「そうですね、二つの足取りを探らせます」
二人の少女の失踪か、偶然なんだろうか…
「そう言えば、それと隣国の調査はどうだ?幻影の魔道具は使えたのか?」
「はい、そちらも報告が来ています。魔道具は問題なく使用出来たようです。ただ、やはり昼間に使用した場合や、接近され過ぎた場合は違和感を感じられやすいようです」
「まあ、それは俺も気づいていた」
「しかし、前よりも深く潜入出来た事で、新たな情報は持ち帰ったようです。報告によれば、怪しいと踏んでいた商会ですが、やはりあの薬を提供した者と繋がりがあったようです。ただ薬の入手経路や相手については不明なことが多いようですね」
「やはり繋がっていたか…しかしこの先は難しいだろうな、あまり何度も潜入しては向こう気づかれてしまう……やはり俺が潜入した方が良いかもしれないな」
「……出来ればお止めしたいところですが、一番有効な手でもあります」
「わかっている…出来るだけ危険な事を避けるようにする。とりあえずは向こうに手紙を出して反応を見よう」
「受け渡しはお任せください。こちらの素性を明かさない方法を取ります」
「ああ、任せた」
「後は、原因の薬か……」
「ノア様に協力を頼んでいましたね」
「よし、ノアに直接聞きに行こう」
「お供いたします」
俺達はノアの研究所を訪ねて行った。
研究所に着くと、どうせ部屋のノックなど意味がないだろうと思い、そのまま部屋に入って声をかける。
「ノア!いるんだろう?」
「……なんだ」
「前にお願いした、薬事を聞きに来た。あれから何かわかったか?」
「……分かったことがある」
「そうか!聞かせてくれ」
「瓶の方だが、何かトリガーのようなものが仕掛けてある」
「トリガー?」
「ああ、何か条件を満たすと、中の薬が変質するんだろう」
「どんなふうに変質するんだ?」
「わからん」
「……」
「条件が何か分からない以上、どの様に変質するのかは不明だ」
「そうか、まあでも、そこまで別ればだいぶ進歩だな、どうせ変質した後も、碌なもんじゃないだろう」
「……」
「それと、薬に対抗するものはどうだ?」
「薬の変質先が分からないから、確実な対抗薬は出来ない。だが、今出ている効果を弱めるものはもう少しで出来そうだ」
「本当か!とりあえず、効果を弱める物があるだけでだいぶ違うだろう」
「完成したらすぐ知らせてくれ」
「わかった」
薬の効果が弱まるだけでも、何もしないよりはマシだろう。
出来れば大元を叩きたいところだが、まだ時間がかかりそうだからな…
こうも、ゲームと違うことばかり起こると、誰かが意図しているような気がするな…
レインの方は順調だろうか…
ゲームの本筋はそもそも邪神討伐だ、出来ればそちらはレインに任せておきたい。
そろそろレインも勇者になる事だったはずだが…一応探らせとこう。
俺は屋敷に戻り、クラウスにレインの行動を探らせるように告げた。
「レイン様ですか?」
「ああ、前に一度街で王都の街で会っただろう」
「ええ、覚えております」
「クラウスには先に言っておくが、彼は勇者に選ばれる」
「勇者ですか……意外ですね」
「そうか?」
「ええ、私はもし勇者の様に特殊な者に選ばれるのでしたら、アルディス様のような方かと」
「まあ、確かにこの世界と違う知識がある俺は特殊だろうな」
「だが、確実に勇者はレインだ」
「それで、レイン様の何をお調べすれば良いですか?」
「本来レイン――勇者の目的は邪神の討伐になる」
「!邪神ですか!それは……」
「ああ、何もせずに復活を許せば、とんでもない事になる、だから勇者が選ばれる。勇者に選ばれた者はその力で邪神を倒すことが出来る。ただ今回は、俺の知識に無かった事も起きているから、念の為レインがどうなっているのか確認しときたい」
「分かりました…。勇者に直接手助けは致しますか?」
「いや、出来ればあまり関わりたくはないから、必要な時はお膳立てを影からしてくれるだけで良い」
「何か事情がお有りのようですが……お聞きしても?」
クラウスには話しておくか…
「前の俺は、勇者に倒される一人だ」
「!……」
流石のクラウスも驚いているな、まあ勇者に倒されるとは、そう言う事だからな。
「流石に、今は敵対する気も倒される事もしたくない。だが、万が一の為に出来れば距離を取っておきたい」
「かしこまりました」
出来れば、ゲーム通りにならない事を事を願うばかりだ。
???サイド―
「ご報告します。最近、商会に探りを入れているものがいるようです」
「何処の手の者か判明しているのか」
「いえ」
「知りすぎるようなら、対処しなさい」
「かしこまりました」
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