第五十二話 祭りの後の領地
収穫祭が終わると、領地は冬に向けての準備に入る。本格的な冬になる前に出来るだけ、準備をしておく必要がある。
「アルディス様、失礼いたします。いくつかご報告がございます」
「クラウスか、収穫祭が終わった途端に涼しくなったな」
「こちらは王都より北にありますので、冬になると雪も王都より降ります」
「そうなんだな、冬に備えての準備はどんな感じだ?」
「はい、ご報告の一つがこの件になります。薪などは去年と同じ量はすでに確保しております。追加で確保致しますか?」
「去年と同じでは少ないんだろう?何かあっていけないし、十分に行き渡るように追加で確保してくれ」
「かしこまりました。後、孤児院ですが薪と新たに毛布を用意させています」
「…雪が降るなら、防寒着、手袋やマフラーなんかも必要だろう、そちらも多めに。それに冬は室内に篭りがちになるだろうから、何か室内で出来るものを…そうだ、以前いくつかアイデアを出していただろう?実用化出来そうなものはあったか?」
「はい。そちらも報告予定でしたので、このままお話し致します。以前出して頂いたアイデアを元にいくつか職人に頼み試作が出来ています。」
クラウスが、外にいる使用人に声をかけると、玩具が運ばれてくる。
「オセロにジェンガ、パズル、ミニキッチンとおもちゃの野菜と果物、絵あわせカードか」
「はい。いくつかはやはり大量に制作するのには向いていないものもあるようですので、販売先が限られます」
「この玩具を孤児院で使ってもらって、感想を聞いてみようと思うが良いか?」
「実際に使用しての感想は必要かと思いますので、良いかと」
「では、さっきの防寒着と合わせて、俺も実際に玩具の反応を見たいから直接届けよう」
その後も水路の話や備蓄についてなどいくつか話し合い。午後からは孤児院へ訪問することにした。
孤児院へ到着すると、前回と同様に院長が出迎えてくれたが、以前と違って院長の表情は柔らかく感じる。
「アルディス様、訪問ありがとうございます」
「ああ、変わりはないだろか?」
「ええ、先日からアルディス様より医師の手配などもして頂き、熱を出した子供もすぐに元気になりました」
「それは良かった、今日は冬の防寒着と玩具を持ってきたんだが、良かったら直接子供達に説明をさせてくれないか?」
「アルディス様が直接ですか?」
「ああ、新しい玩具を作らせたんだ、子供達の感想を聞きたい」
「わかりました。ではこちらへどうぞ」
院長は子供達が集まっている部屋へ案内すると、中にいた子供に声をかけた。
「みなさん、今日は領主様が防寒着と玩具を持ってきてくれましたよ」
「領主様?」
「わー!新しいお洋服?」
「おもちゃだって!」
「はいはい!静かに!玩具については、領主様からお話があります。ちゃんと聞くように」
「「「はーい!」」」
「みんな、こんにちは。今日は新しい玩具を考えて作ってみたから、みんなに使ってみて、感想を聞かせてほしいんだ」
「新しいおもちゃ?」
「りょーしゅさまが考えたの?」
「ああ、だから使い方を教えるから、皆んなで遊んでくれるか?」
「「「わかった!」」」
俺が院長の方を見ると院長が頷いたので、玩具を並べて、一つずつ一緒に遊びながら説明をしていった。
子供達はすぐに使い方を覚えて、しだいに子供同士で遊び始めた。
「今のところ、楽しく遊べているようですね」
「ああ、後は暫く使ってみて、後日感想を聞けば良いな、院長も良いだろうか?」
「はい、構いません」
「では、俺達はこれで失礼する」
玄関の外まで出たところで、院長が口を開いた。
「アルディス様、医師や薬にその他の事、それに今回の事も合わせて、ありがとうございます」
「いや、長い間不安な思いをさせていただろう…これから少しでも子供達にも、シスター達にもここが過ごしやすくなるように助力する」
俺がそう言うと、院長は深い礼をしてきたので、俺はしっかりと頷くと、馬車に乗った。
途中から少し歩きたいと言って馬車を降り、クラウスには先に帰ってもらった。
俺は街の人達を見ながらゆっくりと歩く。
気を利かせてか、イーサンもエヴァンも今日は少し離れてついて来ている。
歩いていると、こちらに気づいた街の人が、たまに手を振ってくるので、俺も片手をあげて応える。
屋敷に帰りながら、この領地にやって来てからの事を思い返す。
「だいぶ変わって来たな…」
屋敷へ帰る俺の足取りは軽くなっていた。
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