第五十一話 収穫祭と花火の夜
今日で収穫祭も最終日だ。
午前中は、執務などをこなして、夕方からセシリアと出かける予定にしている。
「クラウス、祭りの最後の仕掛けはどうだ?」
「はい。滞りなく、準備できております」
「じゃあ予定通り打ち上がるんだな?」
「はい。ノア様に協力していただいた魔道具も問題ありません」
「それなら安心だな」
「みんな、喜んでくれるといいな」
「はい」
さて、午後まではまだ時間があるな、俺は午後の為に、残りの仕事にとりかかった。
夕方になったので、セシリアに声をかける。
「セシリア、準備は良いか?」
「はい!お待たせしました」
「では行こうか」
俺とセシリアは最終日の収穫祭にそろって出かけた。
街の中央広場に、祭りの最後を飾る大量の薪が高く組まれている。
日が落ちてきて、焚火に火が付けられた。
いよいよ祭りのフィナーレだ。
音楽が流れ始めると、燃え盛る炎を囲むように、人々が輪になって踊り始める。
「セシリア俺達も踊ろう」
「はい」
俺はセシリアの手を引いて、輪の中に入ると一緒に踊りだす。
貴族のパーティーで踊るような上品なものではなく、自由に踊るこっちの方がよっぽど楽しく感じる。
「アルディス様!楽しいですね!こんな風に踊ったの初めてです!」
「ああ、俺もだよ」
周りをみると、見知った顔がいくつかあり、踊りながら手を振って来る。
俺も手を振り返す。
途中でダンスの相手が変わっても、全く気にならないくらいに、俺達は夢中で炎に照らされながら踊り続けた。
踊りもそろそろ後半になり、少し落ち着いた曲に変わった時だ、
少し離れた夜空に花火が上がり始めた。
「わあ!」
「まあ!花火よ!なんて綺麗なんでしょう」
「花火なんて久しぶりに見たな」
「お空にお花がいっぱい咲いてるよ!」
俺とセシリアは焚き火から少し離れた場所で、花火を見ていた。
「アルディス様、綺麗ですね…」
「みんな喜んでくれているだろうか…」
「ええ、みなさんとても嬉しそうなお顔をされています」
「この笑顔を来年もずっと、見れたら良いな」
「アルディス様ならきっと出来ますよ」
「その時は、必ずセシリアも一緒にいてくれ」
「…はい///」
セシリアの顔は花火のせいか俺のせいか、赤くなっていた。
祭りが終わり、片付けに入ったのを見届けて、屋敷に帰ろうとした時、輪の中心で指示を出していた領民の一人が話しかけてきた。
「アルディス様、この度は素晴らしい収穫祭を迎えることが出来ました」
「いや、俺の方こそ今まで寄り添って来なかったこと、すまなかった」
「…本当に、変わられたのですね。これからもよろしくお願いします」
「ああ、俺の方こそ、みんなをがっかりさせないように頑張るよ」
男は礼をしてまた、片付けに戻っていった。
「…」
「…良かったですね」
ああ、本当に…。
夜空を見上げると、月が明るくこちらを照らしていた…。
???サイドー
夢を見る回数が増えてきている…
まだ、はっきりと内容は思い出せない。
でも、とても大事な事のような気がするんだ…
窓辺に腰かけたまま夜空を見上げる。
月が明るくこちらを照らしている。
「アル…ス…も、同じ月を見てる…の…」
今日もそばに置いている本の表紙をそっと撫でる。
「早く戻って来てね…」
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