第四十七話 セシリアのために
朝から屋敷の中がソワソワしている気がする。
知らない人が見れば、多分何も変わらないだろうが、ここで毎日過ごしていたら、なんとなく使用人の事が分かるようになって来た。
「アルディス様、今日はセシリア様がお着きになりますね」
「そうだな、セシリアに会うのも久しぶりだな。こっちの方にもセシリアは殆ど来てないんだろ?」
「ええ、こちらにセシリア様がいらっしゃったのは、アルディス様と婚約が決まった最初の方だけでした」
「だからか、今日は使用人達が落ち着かないようだな」
「ああそうだ、セシリアの食事の事だが、セシリアには料理を増やす様に言ってくれ」
「品数をですか?」
「いや、量だ」
「量ですか…かしこまりました」
クラウスが、料理長に指示を出しに部屋を出て行く。
まあ、多分みんな実際にみたら驚くだろうな…
昼を過ぎた頃、部屋の扉がノックされる。
「アルディス様、セシリア様が到着されました」
「着いたか、わかったすぐに行く」
俺はセシリアを出迎えるために玄関へ向かった。
馬車が、玄関の前に止まり、扉が開く。俺が差し出した手に白いほっそりとした手が乗せられた。
馬車から出て来たセシリアは王都で会った時と変わらず、満面の笑みをこちらに向けていた。
「アルディス様、お久しぶりです!」
「セシリア、良く来てくれた。会えて嬉しいよ」
「……私もです」
少し赤くなりながらもそう答えたセシリアはやっぱり可愛かった。
「移動で疲れただろう?まずは部屋で休んで、その後一緒にお茶でもしよう」
「ありがとうございます」
俺は、セシリアを部屋に案内する。途中で見る使用人達が驚いているのが視界の隅に見えた…
「ここがセシリアの部屋だ」
「わあ!…とっても素敵なお部屋…。私の好きな色ばかり…アルディス様、もしかして私の為に?」
「ああ。こちらに来てすぐ、セシリアがいつ来ても良い様に部屋を用意していたんだ、気に入ってくれたか?」
「嬉しいです!ありがとうございます!」
「何か必要なものがあれば遠慮なく言ってくれ」
「はい」
「ではまた後で」
セシリアの部屋を出て、執務室へ戻ると、クラウスがやってきた。
「お部屋を気に入って頂けたようで良かったですね」
「ああ、セシリアの好みに合ったようだな、クラウスが調べてくれたおかげだ」
「私は好みはお伝えしましたが、実際に選ばれたのはアルディス様がです」
「とにかく、こちらにセシリアがいる間は気持ちよく過ごしてもらわないとな」
「使用人達には、しっかりと対応するように伝えておきます」
一時間ほどたったので、セシリアをお茶に誘いに向かった。
部屋のドアをノックすると、侍女が取り次いでくれ、中に入る。
セシリアの部屋は明るめの薄い落ち着いたグリーンを基調に、白と黄色が所々に使われている。
セシリアの好きな色を集めただけあって、彼女によく似合っていた。
結婚すれば、毎日この部屋を見ることになるのか?
そう考えた途端、何故か少し恥ずかしくなった。
赤くなった顔を誤魔化すように、セシリアに話しかける。
「セシリア、疲れはどうだ?良ければ庭でお茶をしないか?」
「アルディス様、行きます」
セシリアを伴い部屋を出る時に、俺は侍女の顔を見て、さっき俺の考えていた事が侍女にはバレている事がわかってしまった…。
庭のガゼボに着くと、すでにお茶の準備がされていた。俺たちは向かい合って座ると、目の前に紅茶が注がれた。
「アルディス様、収穫祭に招待して頂きありがとうございます。アルディス様と参加出来るなんてとても嬉しいです」
「こちらこそ、来てくれてありがとう。今まで誘わなくてすまなかったな」
「いえ…そんな」
「今年は収穫祭もかなり賑やかに出来そうだから、セシリアも楽しんで貰えると思う」
「そうなのですね!とても楽しみです!」
俺達は暫く話しながら、ゆっくりとした時間を楽しんだ。
――
屋敷に着いて部屋に入ったばかりのセシリア達。
「これ全部セシリア様の好きな色や小物で揃えてありますね」
「そ、そうね…」
「アルディス様、セシリア様の好みをお調べになったんですね!」
「そうね…///」
「あ、見てください!このクローゼット!セシリアの為にドレスがたくさん!愛ですね!」
「…///」
セシリアの顔は茹で蛸のように真っ赤になっていた。
その後、アルディスがお茶に誘いに来た時に部屋にいるセシリアを見て、アルディスが照れていたのを侍女はバッチリ見ていた。
(アルディス様、今結婚した時の事を想像なさいましたね…お顔が赤くなっています)
セシリア様、愛されていますね!!
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