第四十二話 川底の異変
ノアも急遽参加となり、俺達は川の上流にある岩場までやって来ていた。
「確か、ニクセに聞いたのは、この辺りだったはずだ」
「ちなみに、穴って川の中なんですよね?」
「まあ、そうだろうな」
「川…泳ぐ?」
「そうだな、水の中に入って潜ってもらう事になる…フォルス、行けるか?」
「はい、え?俺?」
俺が突然フォルスを指名したから、みんな疑問に思ったようで、首を傾げている。
「アルディス様、何故フォルスなのでしょうか?イーサンやエヴァンではいけないのですか?」
「理由はある。フォルスはニクセから、加護を貰っただろ?ニクセはアレでも高位の水の精霊なんだよ、加護を貰ったフォルスは俺達より、長く潜れたり、水中での行動がし易いはずだ」
後、口には出さないが、ここは湖と繋がっているから、フォルスなら、なんかあったらニクセが助けてくれると思っている。
「なるほど…じゃあ俺が適任って奴ですね!ではちょっと潜って見ましょうかね!」
「よろしく頼む。あ、動き易いようになるべく衣服はズボンだけにしとけよ」
「?わかりました」
そう言って、フォルスは川へ入るために装備と衣服を着替え出した。
断じて、ニクセが現れる確率を高くする為にアドバイスしたんじゃないぞ?
そんな事を考えているとイーサンが質問して来た。
「あのー、アルディス様。さっきからあそこ何やってるんですか?」
そう言って、イーサンが指を刺した方には、クラウスがノアの口を押さえている姿があった。
途中から気づいてたけど、あえて触れなかなったんだよ…
「…クラウスもういいぞ」
俺がそう言うと、クラウスはノアから手を離した。
その瞬間…
「水の高位精霊だと!?いつ!?どこで!?加護!?何が出来るようになった!」
「近い!近い!ノア!落ち着け!ちゃんと説明するから!こうなるから、クラウスが、俺が話終わるまで押さえててくれたんだ」
「あ〜、成程。なんかノアさんの事がわかって来ました」
「納得」
全力で迫ってくる、ノアの顔を手で押し返しながら答える。
「ノアにも一応今後の為に、軽く説明しておく…」
一通り説明し終えると、ノアは自分の世界に入り出したので、今は一旦放っておくことにする。
「アルディス様準備できました」
「ああ!気をつけてくれ」
フォルスが水の中に入っていくのを俺達は見守る。
万が一の為に、イーサンとエヴァンに周りを警戒してもらい。
セランにはフォルスに繋いだロープを持ってもらっている。
セランがロープを持つのって、繋がっている先の事を思うとちょっとシュールだな…。
「副団長、犬の散歩」
「…」
「「「…」」」
「エヴァン、そう言うのは声に出さないようにな」
「?わかりました」
「!」
「アルディス様、団長から合図です。多分穴を見つけたようですね、一度戻って来てもらいましょう」
セランが合図を送ると、暫くしてフォルスが水の中から上がって来た。
いつもは上がっている前髪が水に濡れて下りている。普段のフォルスより少し若く見えて新鮮だ。
「ふう…確かに加護のおかげで、水中でも動きやすかったですね」
「そうか、で穴と岩はどうだった?」
「あのあたりに、横穴を発見しました。で、肝心の岩なんですが、かなり大きいんで、人力で動かすにはかなり苦労しそうです」
「そうだろうな…となれば、魔法で動かせるか?だが岸からでは見えない、そこをどうするか…」
俺も潜れば何とかなるか?ただ、俺にはニクセの加護はない…。せめて、水中で呼吸が出来れば良いんだが…酸素ボンベのような…空気を包めれば…ん?
「そうか!これなら行けるかもしれない」
「何か思い付かれたんですか?」
「ああ、ちょっと離れて見ててくれ」
俺は、自分の周りに水で幕を作った。巨大なシャボン玉の中に入っているような感じだ。そしてそのまま、川の中へ入っていく。
「よし、思った通りこれなら水の中でも暫く酸素が持つから魔法が使い易い」
俺は一旦、川から上がる。
「俺が、川の中に入って岩を魔法で動かすから、フォルスは誘導してくれ」
「その魔法は俺には掛けてくれないんですか?」
「フォルス…自身と貴方に魔法使って、岩もアルディス様が動かすなんて、アルディス様の負担が大きすぎるでしょう、ぐだぐだ言ってないで自分で泳ぎなさい」
「わーったよ!ちょっと言ってみただけだって」
「じゃあフォルス行くぞ」
「わかりました」
俺とフォルスは川の中へ入っていった。
ノアが今度はエヴァンに口を塞がれていのが見えた…
この辺は、流れがだいぶ穏やかで、水流はあまり強くない。
フォルスに誘導されてたどり着い先には、大きな穴とその側に、元々穴を塞いでいただろう岩があった。
俺はフォルスに合図を出すと、岩の周りに渦を起こす。
ゴゴゴッと言う音と共に、重たい岩は徐々に動き始めたが、重すぎて中々思うようにすんなりとは動かない。
フォルスが、岩にロープを巻いて水中で引っ張っり始めた。それに合わせて、俺も魔法を使うと岩が先ほどよりも大きく動き始めた。
「後少しだ!いけ!」
ドンっと重い音がして、岩が穴を塞いだ。
「よし!やったぞ!フォルス引き上げるぞ」
そう言ってフォルスを見ると岩のそばで足掻いているのが見える、どうやら岩の振動で、近くにあった別の岩が崩れて、足が挟まってしまった様だ、しかもロープが絡まっている。
「フォルス!すぐ助ける!」
気づいた俺は、フォルスに絡んだロープを剣で切り落とす。後は足を外すだけだが、中々外れない。
もう一度岩を魔法で動かそうかと思ったが、フォルスが近すぎて、巻き込んでしまう為、使えない。
どうする!?このままではいくらフォルスでもヤバい…、とりあえず俺はフォルスに自分の水球から別にもう一つ作り出して、フォルスに送る。
フォルスも空気が来た事で少し安心した様だ、フォルスが口を開く。
「アルディス様は一旦戻って下さい。このままではアルディス様も魔力切れで溺れてしまいます。俺も何とかします、最悪この足を切ってでも戻って見せますよ!大丈夫です!早く行って下さい!」
「フォルス……わかった。すぐ戻ってくる!足はまだ切るな!必ずすぐ戻るからな!」
俺はそう言って、岸に急いで戻った。
岸に上がるとやはり魔力の消費が大きかったのか、少しふらついたが、キースとエヴァンがすぐに支えてくれる。
「アルディス様何があったんですか!?先ほどフォルスにつけていたロープが切られたのですが!」
「フォルスにロープが絡まって、岩に足を挟まれている、ロープは俺が切ったが足が外れない…」
「「「!」」」
「…フォルスは何と」
「俺に先に戻る様にと、足を切ってでも戻ると……フォルスにはとりあえず、俺の空気を半分渡して来た。だが、俺も魔力が少ない…フォルスに残した空気も、そう多くはないだろう…。何か考えられる事は…」
水中で、一人格闘していたフォルスは、アルディスから貰った空気がだんだんと少なくなっているのを感じていた…。
「チッ!俺とした事が、へましちまうなんてな…クソッ!…せっかくアルディス様も領主らしくなって来て、団長としてお守りするつもりが…はあ。死ぬつもりは無いが、助かっても騎士には戻らないだろな……やるか」
そう言ってフォルスは自分の足に向かって剣を振り上げた…
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