第三十八話 川のヌシ
今、俺は、昨日聞いた川の謎の影を捕獲する為にあの橋へ来ている。
「アルディス様、本当にやるんですか?」
「アルディス様なら出来る」
イーサンの疑問の声とエヴァンの謎の信頼の言葉が聞こえる。二人は昨日俺が頼んでいた内容も知っていたから、何をするのか大体分かっているようだ。
俺は昨日会った橋の責任者に声をかけた。
確か…他の作業員からはガルド親方って呼ばれてたな。
「ガルド!」
「おお!アルディス様!早いですな!昨日頼まれたヤツの準備出来てますよ、ちょっと急拵えになっちまったが、問題なく使えるはずだ」
「急いで作ってもらってすまなかったな!うん、これなら、問題ないだろう。じゃあ、手筈通りに頼む」
ガルドは作業員達に声を掛ける。
「お前ら!昨日聞いた通りに行くぞ!」
「「「へい!」」」
作業員達が川上の方へ行き数人が網を張る準備をしている間に、一人が川へ干し肉を投げながらこちらへ向かってくる。
暫くすると川上の向こうから巨大な影がこっちへ向かって来た。
網を通り過ぎると、川上の作業員達が、網を川に張り川上に戻らないようにした。
俺は、ガルドに頼んでおいた、固定型の大型釣り竿を構える。大きな針の先には、アイツが大好物の七面鳥の丸焼きがくくり付けてある。
俺はゆっくりとそれを水面に近づけた。
ヤツの影が七面鳥に近づきついにその口を大きく開けて水面に現れた。
「すっげ〜!」
「大きい…」
双子が後ろで驚いているのが分かる。作業員達も、驚きの声をあげている。
「ここからは俺と勝負だ!」
ギリギリと竿をしならせながら、俺はヤツを引っ張るが、向こうも負けじと此方を川に引き摺り込む勢いで、引っ張って来る。
暴れるたびに、固定した釣り竿がミシミシと音を立てる。
「ムリ!ムリっす!腕ちぎれそうです!」
「……」
イーサンとエヴァンも俺の腰にしがみ付いて、一緒に支えてくれているが、イーサンは泣き言が入って来ている…。
強化魔法を竿と自身に掛ける事で徐々に此方が優勢になって来た。
「もう少しだ!」
「アルディス様頑張れ〜!」
「行けー!」
「!…ここだ!!」
数分…体感は数十分ほどに感じる…。
とうとう俺は、ヤツを釣り上げる事に成功した!
陸に上げられたヤツの姿は、六メートル程もある
『オオサンショウウオ』だった。
サンショウウオと言っても、ゲームでは色も形も本来の本来のサンショウウオとは異なり、かなり凶暴な見た目をしている。やはりこちらの世界のオオサンショウウオもゲームと同じだった。
「アルディス様!な、何ですかコイツは?!」
「オオサンショウウオだな、本来はでかい沼や湖にいるヌシなんだがな…」
「ヌシですか、通りでデカい…」
「コイツは口に入るものは何でも食べる悪食なんだ、誰かが食べられる前でよかったな」
俺がそう言うと、作業員たちの顔が青ざめた…
そんな話をしていると、イーサンが質問してくる。
「しっかし、デカいっすね!コイツはこの後どうするんですか?」
「もちろん食べようと思ってるが?」
「え!食べるんですか!?コレを?」
イーサンがちょっと嫌そうな顔をしてくる。
確かに見た目ちょっとアレだけど…
「大丈夫だ、毒などもないし、何より美味いんだ。エヴァンはどうだ?抵抗あるか?」
「アルディス様が言う、食べる」
「お前、アルディス様が言うなら全部肯定すんだろ」
「当たり前」
「…」
「まぁ、とりあえず、屋敷に連絡して調理してもらおう。街の広場で振る舞うから、ガルド達も街の人達に声をかけて、食べてくれ」
「ヘイ、後で伺わせてもらいます」
オオサンショウウオは屋敷まで、ガルド達に運んでもらい、屋敷の料理人に調理してもらうことになった。
オオサンショウウオを見せた時は、流石のクラウスも驚いていたし、それを食べると言った時は一瞬意識が飛んでたな…
料理人達も引いてたが、料理長だけは目を輝かせてたな、未知の食材が嬉しそうだった。
クラウスに広場で料理を振る舞う事を告げ、出来上がる頃に、街の広場へ向かった。
広場に着いた時は、結構な人が集まっていた。
そこへ侯爵家から料理が運ばれて来た、最初はみんな遠巻きだったが、ガルド達が率先して料理を受け取り食べ始めた。
「!何だこりゃ!」
「美味え!」
「こんな料理食った事ねえ!」
ガルド達の反応を見て、周りの人達も料理を受け取り食べ始める。
「美味しい!」
「凄い!初めて食べる味ね!」
「ママ!コレ美味しいよ!」
「侯爵様からこんな美味しい料理が振る舞われるなんて」
「いったい侯爵様は如何されたのかしら」
「最近、領地の事に力を入れてるって聞いたけど本当見たいね」
料理が美味いって声と同時に、俺の最近の事が聞こえてくる…
「あ!こないだのお兄ちゃん!」
「ああ、子猫の時の」
「お兄ちゃんも食べた?コレ美味しいね!」
「そうだろ!これ美味いよな!」
先日の子猫を助けた時にいた子供達が、話しかけて来たので、俺も答える。
子供達と話している時に、ガルドが俺に話しかけて来た。
「アルディス様、今日は本当にありがとうございました。飯も美味かったです。俺達最初はどうせ聞いてくれない、とか思ってたんです。でも、アルディスが今は領地の事考えてるのが分かりました。これからもよろしくお願いします」
そう言って、ガルド達は向こうへ行った。
「ねえ、お兄ちゃんはアルディス様なの?」
「アルディス様って侯爵様だろ?」
「え〜母ちゃんが侯爵様は冷たいっていってたぞ」
「お兄ちゃんは子猫も助けてくれたから、冷たくないよ」
「そうだな!さっきの人もありがうって言ってたもんな!良い侯爵様だよ!」
「ありがとう、君達がそう思ってくれただけでも嬉しいよ」
子供たちが笑顔で走っていく。
まだ一部の人達だけだが、少しずつ認められて来たみたいだな…
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