第三十三話 領民の声
「美味しいパンが焼けてるよー」
「食事はこちらで如何ですか〜!」
「奥さん!この果物買って行かないか!美味いよ!」
ざわざわと賑わう街の中心街。
王都と比べれば劣るだろうが、結構賑わっていた。
人々の様子を見れば、特に暗そうな顔もしておらず、あたりを見れば、治安も良い様だ。
「思っていたよりも、皆んな元気そうで良かった」
「全く放ったらかしだったわけでも、過度に重税をしいていたわけでは無いですから」
俺達は外套を着てフードを被り、ぱっと見では領主とは分からない様にして、見て周っている。
「ねえ、聞いた?領主様、帰ってきてるんだって?」
「そう見たいねえ、冷たい方なんでしょ?…大丈夫かしら」
「単に帰ってきたってだけでしょう、今までだってそれならきっと今までと変わらないわよ。こっちに居ても一緒よ」
「そうよね、うちの領主様は冷たいけど、悪党って訳じゃないからね」
「まぁ、もうちょっと色々気にして下さったらね〜」
主婦だろか、立ち話の会話が聞こえてきた…
「……居ても一緒か」
「アルディス様…」
「しょうがないさ、これから挽回して行く」
「はい。頑張りましょう」
中心街を見て周り、たまに屋台で話を聞いてみながら、少し外れた住宅街の方へ足を踏み入れる。
多少の貧富の差はある様だが、孤児や浮浪者は見受けられない。
「孤児達の扱いはどうなってるんだ?」
「教会が孤児を見ておりますので、そちらに」
「侯爵家からの援助は?」
「毎月必要な分だけは」
「最低限って事か…」
「多くは有りません」
「その辺りの見直しも要りそうだな」
住宅街を見たところで、川沿いに出る。川に掛かる橋を渡り始めてると、子供達が川辺に集まって遊んでいるのが見えた。
「元気そうだな…」
足を止め、暫く眺めていると、何やら子供達が騒ぎ始めた。
「どうしたんだ?」
「子供が落ちたのでしょうか?」
「それならまずいな、行ってみよう」
俺とクラウスは子供達の方へ駆け出した。
「おい!どうした!?誰か落ちたのか!?」
「!」
子供達は俺を見て、一瞬戸惑ったようだが、大人の力が欲しかったのだろうすぐに川を指差し説明する
「この下!ねこ!子猫がおちちゃってるの!」
「助けたいけど届かないの!」
「ねえ!助けて!」
下を覗くと、子猫が、かろうじて水面から出た小さな石に捕まっているのが見えた。まだ小さく上手く登ってこれない様だ。
「ここからは高さがあるな、どうする…」
周りには何も無い、飛び込んでも良いが、子猫が驚いて落ちる可能性と、捕まえても周りに上がるところが無い。
そうしているうちに子猫が石の上から落ちそうになる。
「ミャッ!」
「あ!危ない!」
「落ちちゃう!はやく!」
まずい!!
考えろ!…そうだ!ここは魔法があるじゃないか!
俺は、集中してゆっくりと風魔法を子猫に向かって送り出す。子猫を傷つけ無い様に周りを囲み、そっと持ち上げ、そのまま手元まで引き寄せた。
魔法を解いて子猫を抱えると、子猫はキョトンとした顔をした後、ミーっと鳴いた。
「ふぅ…ほら、助かったぞ」
「!」
「やったー!」
「凄い!凄い!お兄さんありがとうー!」
無事に助けられて良かった、魔法練習しといてよかったよ…
「アルディス様、お見事です。あの様な使い方は制御が難しく、流石です」
「ああ、俺も流石に生き物相手は緊張したよ」
「お兄さん!子猫助けてくれてありがとうね!魔法も上手だね!」
「なあなぁ、この辺で見ないけど、冒険者?」
「もっと魔法見せて〜」
「お兄さんいけめーん!」
「あ、いや昨日こっちに来たばかりなんだ、魔法は今度な、い、いけめん?ありがとう?」
「じゃあ、この街のことで分からないことがあったら、俺たちが教えてやるから声かけろよ!」
「ああ、その時はよろしく」
それぞれ言いたいことを言うと、子供達は子猫を連れて住宅街の方へ走って行った。
「元気だな。領主とは思われてなかったみたいだ」
「アルディス様は領民の前にお姿をお見せることも少なかったので、子供は話には聞いても、アルディス様のお顔を知らないものも多いでしょう」
「そうか」
そんな事を話しながら、その後も町の様子を見て回った後は、屋敷へ戻りクラウスと改善すべき点などを話し合った。
大体俺がすることが決まったな。明日からは領地改革に向けて進めていこう。
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