第三十二話 領主として〜新たな方針
翌朝、俺はクラウスに領地について教えてもらっていた。
「昨日、馬車の中で少し聞いたが、具体的に今直ぐ手をつけた方がいい事ってあるのか?」
「そうですね、魔物の討伐を最優先で行った方が良いかもしれませんね」
「わかった、騎士団だけで対応可能か?」
「そのあたり、団長と話し合った方が良いかと思います。足りなければ、冒険者ギルドへ依頼を出しましょう」
「他は大丈夫か?」
「その他は急ぎでは有りませんが、いつくか細かな事はございます、しかし実際に確認していただいた方が良いものもあるのでこの後、領地を回られてはどうでしょうか」
「そうだな、領民との関係改善を目指す為にも、直接声を聞いた方が良いだろう」
「その方がよろしいかと」
「今朝も、使用人達はまだぎこちなかったな」
「申し訳ありません、昨日うちにアルディス様のお変わり様をそれとなく話しておきましたが…」
朝の挨拶を返しただけでも驚いていたな…
王都から来た数名はまあ慣れていたが、領地の使用人はまだ時間が掛かるようだ。
早く慣れてくれれば良いんだが。
魔物討伐について相談する為、俺はクラウスと共に騎士団へ向かった。
団長室の前に着き、クラウスが扉をノックをする…が返事がない。
「いないのか?」
「いえ、そんなはずは…中から声が致しますね…」
「なんか良い争ってないか?」
「入りましょう」
そう言うと、クラウスはドアを開けた。
中には、焦茶色の髪を短く刈り込んだ大柄な男と薄水色の髪を後ろで束ねた、騎士にしては知的な感じがする男がいた。騎士団長のフォルスと副団長のセランだ。
どうやらフォルスがセランに怒られている様だ…
「貴方はどうしていつもそうなんですか!」
「そう怒鳴るなって!俺だってこれでも気をつけてたんだよ」
「気をつけていてどうして、出してないんですか?!」
「そりゃあよ…」
「お二人ともそこまでです」
「「!?クラウス殿」」
…振り返った二人はクラウスの顔をみて、しまった!と言った顔をした。
「どうしたんだ二人とも外まで聞こえてたぞ…」
「すみません、ちょっとそこの筋肉馬鹿が…騎士団の予算報告書の提出を忘れていまして…」
「だから今から出そうと…」
「…フォルス団長」
「!」
クラウスが少し低い声で話しかけると、フォルスはビクッとして体を強張らせた…
俺からは背中しか見えないが、今のクラスの顔は想像がつく…
「予算報告書は一昨日まででしたよ。その数日前にも知らせていた筈ですが?」
「いやー!それがちょーっと手違いで…」
「前回も期限を過ぎて出された様に記憶しておりますが?」
「そうだったっけな〜、あ、ほらもう出来てますから」
横を見ると、副団長が頭を抱えて、ため息を付いていた…苦労してるな
このままでは、話ができないので俺は話を切り出した。
「フォルスに話があるんだが」
「何ですか?」
今…話が変わって嬉しそうな顔を一瞬したよな。
「領地の魔物討伐についてだ。長らく俺が王都にいたせいで十分に討伐が出来ていないと聞いた。今回領地に戻ったこともあり、王都にいた団員達も協力して討伐に当たってくれ」
「!畏まりました」
「もし、手が足りない様なら冒険者ギルドへの要請もする」
「アルディス様が冒険者ギルドへ依頼を…」
セランがちょっと信じられないという顔をしている。
「ああ、これからは領地の事をしっかりと考える。本来、騎士団は領地や領民を守る事だと思う。俺の我儘で王都へ縛り付けてしまった…申し訳ない。これからは領地と領民達をよろしく頼む。何かあれば報告してくれ」
「「了解しました!」」
「しかしアルディス様、本当に変わられたのですね。以前とはまるで別人の様に…」
セランの言葉にギクッとした。
「そうか?アレだろ!思春期に良くある、悪いヤツに憧れて〜てヤツだったんだろ!?やっと終わったんだなー!いやー良かったな!俺も昔は…」
「はぁ、誰も貴方の黒歴史なんて聞いてませんよ…」
「何だよお前だって…」
「ま、まぁそんな感じだから、フォルス、ちゃんと報告書だせよ」
また何やら言い合いを始めたので俺はそのまま部屋を出た。
セランはいつも苦労してそうだな…
一旦執務室へ戻り、外出の準備をする。
では、俺の領地を見にいくとするか。
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