第三十一話 領主の帰還
ガタゴトと音を立てて、貴族の馬車が街道を走っていく。その馬車の前後には、揃いの装備で馬に乗った、護衛だろう騎士が配備されている。
「貴族の馬車とは珍しいな…」
「ありゃ、領主様の馬車じゃ無いか?」
「領主様だ〜?最近はほとんどこっちに来てねえって聞いてるぞ」
街道で馬車を見た領民は訝しげに見送った…
「アルディス様、もう直ぐ屋敷へ到着します」
「なあ…クラウス」
「はい」
「知識としては領地の事は知っているが、実際に見た事はない。クラウスから見てここの領地は、どんな感じだ?」
「正直にお話ししても?」
「構わない、前のアルディスがどうしていたのか…。今は俺がアルディスなんだ。きちんと知っておきたい」
「…わかりました。ではお話しします」
「まず前のアルディス様ですが、他者に冷たかったとはいえ、領主としての仕事はそれなりにされていました。なので、領地の経営については特に問題もありません」
「記憶にもそうなってる。領民については?」
「はい、そちらも経営に問題が無かったので、貧困しているなどはございません。だからと言って、領民が裕福に暮らせているわけでもございません。真面目にやっていればそれなりに暮らして行ける程度ですね」
「…そうか」
「それに、我が領地は魔の森が近くにある為に、魔獣による被害が出ることも多く…。本来なら騎士団がいるのですが、なに分アルディス様が王都にいる間は、騎士団も殆どが王都へ行っているので…。通常でしたら冒険者への討伐依頼を領主が行うのですが、アルディス様はそこまでは必要ないと…それも最低限に」
「…俺の記憶が確かなら、殆ど領地に帰っていなかった様だしな」
「ええ、その為領民からの不満が上がっていました」
「はあ…、領民からは冷たい領主だと思われてるだろうな」
「厳しい様ですが、否定は致しません」
「これからは俺が、ちゃんと領民と向き合う。クラウスも手を貸してくれ」
「……かしこまりました」
そんな事を話しているうちに、馬車が停止した。どうやら屋敷についた様だ。俺は馬車から降りてゆっくりと領主邸を見上げた。
クラウスに先導され扉の前に立つ、ゆっくりと扉が開られ、俺は中へ踏み込んだ…
「「「お帰りなさいませ、アルディス様」」」
そこには、領主邸の使用人達が並んで出迎えていた
「ああ、ただいま…」
(((ただいま!?)))
俺が挨拶をすると、小声ながらも使用人がざわついた。
挨拶返しただけでこれか…
「長らく留守にして悪かったな」
(((謝った!?)))
何か言うたびに、使用人達がビクッとするんだが…
「これからは、こちらで過ごす時間も増えるから、よろしく頼む」
(((よろしく頼む!?)))
「アルディス様、使用人への説明は私からしておきますので、まずは旅の疲れを癒しましょう。どうぞお部屋へ」
「あ、ああ、わかった」
クラウスに促されて、俺は部屋へ移動し、風呂と着替えを済ませた。
夜になり、自室で日中の使用人達の様子を思い出す。
はあ…使用人からの反応が…
しょうがないか、これから徐々に慣れてもらう。
領民達も不安をかけた様だしな、明日からはしっかりと皆んなに信頼してもらえる様に頑張ろう。
こうして、俺の領地到着日は終わった…。




