第三十話 王都を後に
約束の『風の日』になったので、俺はギルに会いに行く事にした。
「ギル、来たぞ」
「やあ、アルディス。待っていたよ」
「今日はどこへ行くんだ?」
「んー、ついてのお楽しみかな。んじゃ、いこっか」
ギルは店を閉めて、王通りの方へ歩き始めた。
暫くするとカフェや雑貨店が多い通りにやってくる。
確かこっちの通りは、差女性向けが多かったな、誰かへの贈り物でも選びたかったのか?
「着いたよ」
「ん?ここ?」
俺はギルが足を止めた店を見た…
ここって…
「なあギル?」
「なにー?」
「ここに入るのか?」
「うん、流石に俺でも一人では入りづらくてさ〜」
いや…この店って明らかに女性向けなんだが、外観もピンクや白でいかにも女性向けなスイーツショップ。
入り口にはデカいクマのぬいぐるみが、今日のおすすメニューを持って座っている。
「買って帰るだけなんだよな?」
「何言ってるの?中で食べるに決まってるよ。持ち帰り出来ない限定メニューを食べにきたんだから」
「……」
「ほら行くよ!」
俺はギルに連れられて中へ入った。
テーブル席は着くなりギルはお目当ての限定メニューと紅茶を頼んでいる。
俺はとりあえずコーヒーを注文した。
「なんか、周りの視線が気になるんだが…」
「侯爵なんだから、見られるのなんか慣れてるでしょ?」
「そうなんだが、違うんだよ…こんな風な視線で見られない」
「まぁ、あの、アルディス侯爵がこんなファンシーな店にいるなんてビックリだよねー」
ギルはこの状況をたのしんでいるようだ…
ギルが頼んだ分と俺のコーヒーが運ばれてきた。
何というか…限定スイーツは可愛さにこだわりました!と言わんばかりの見た目だった。
この店で男同士だけでもアレなのに、このスイーツ。
早く帰りたい…
ちなみにギルは紅茶に砂糖をたっぷり入れており、流石に周りの客と店員に凄い顔をされていた。
「あー美味しかった!アルディスも食べたら良かったのに」
「見てるだけで口の中が甘かった…」
店を出た後、満足そうなギルに俺は暫く領地に帰る事を伝えた。
「戻ってきたら、店の方に顔を出しなよ」
「わかった」
そんな事を言ってギルと分かれた俺は、そのままリベルに会いに行った。
「リベル…」
「アルディス様、こんにちは」
「ああ、こんにちは」
「今日はどうしたんですか?」
「リベルに伝えたい事があってな、社交シーズンが終わったから、俺も暫く領地へ行く事にしたんだ。だから暫くこっちを空けることになる」
「あ…そうなんですね」
リベルが少し寂しそうな顔をしたのを見て、俺は慌てて早めに帰る事を告げる
「オフシーズンの半分くらいで、こっちへ戻る予定にはしているんだ」
「アルディス様にもお仕事ありますもんね、領地を見るのは大事なことですから」
それでも寂しそうな顔をするリベルを見て、つい…
「……一緒に来るか?」
「!」
「いや、リベルさえ良ければと思ったんだが」
「ありがとうございます。一緒に行きたいのは山々なんですが、図書館の仕事もありますし…帰りをお待ちしてますね」
「そうか…」
「アルディス様が居ない間に遺跡についてと、魔導書をもう少し詳しく読んでおきますね。それに、もしかしたら図書館でも何か見つかるかもしれませんから」
「何かあったら、手紙をくれ」
「はい!いってらっしゃいませ」
咄嗟に誘ってしまった…まぁ、断られたが。
リベルみを見ていると、いつも何かを感じるんだよな。自分の中の何かと共鳴するような…
図書館を出た後、俺は王都の展望台へやってきていた。ゲームの中でも特に気に入っていた場所だ。
ゲームのログアウトをする時は必ずここで、この景色を見ながって決めていたんだ。
だから、やっぱり何処かでコレは夢なんじゃないかと言う考えも、ほんの少しだけ捨てきれなくて、この展望台から、世界を見てしまったらもう戻れないような気がして来れなかったんだ…。
でも、今日ここにきて決めた。
夢じゃないなら、この世界で俺はやりたい様にやる!
死亡グラフだって折ってやるし、大切な人達も守ってみせる。
俺は、この王都の景色を眺めながら心に誓った。
数日後、いよいよ今日は領地に出発する日だ。
「アルディス様、馬車の用意が出来ました」
「わかった、では行こう」
俺は馬車に乗り込み、王都を後にしたーー




