第二十一話 セシリアとの休日
「アルディス様!」
「今日は街へ行きませんか?」
執務がひと段落したタイミング、お昼にはまだ大分早い時間に、セシリアがやってきた。
今日のセシリアは髪を緩く結び、淡いピンクの街歩き用の格好をしている。
…俺の婚約者、本当に可愛い。
「街か、たまには気分転換も良いな。行くか!」
「はい!」
街に出て、まずは商店街の方へ歩き出す。ショーウィンドウにはアクセサリーやドレスが飾ってある。何か良いものがあればセシリアに買おうと、セシリアの方を見ると、セシリアは反対にある食べ物屋を見ていた…。
「セシリア?」
「はい!なんでしょう!アルディス様」
「向こうにある、屋台を凄く見ていた様だが…」
「えっ、えっとそんな事はありません」
顔を赤らめて否定しているが、絶対見ていた…。食べたいんだろうな。
「あそこにあるアイスでも食べようか」
「!はい!」
だいぶ嬉しそうなセシリアとアイスを買いに行くことにした。
アイスを受け取り、セシリアに渡そうとした時、近くを男の子が走って行く。
後ろから、母親の「走っては行けません!」と言う声が聞こえた瞬間、男の子は石に躓き転んでしまった。
途端に響く鳴き声。
「うえーん!痛いよー!ママー!」
「だから走っては行けないと言ったでしょう!あぁ、膝を怪我しているじゃない…」
そんなやり取りをしている親子にセシリアが近づいて声をかける。
「大丈夫ですか?」
「はい、子供が転んでしまって」
「膝を怪我していますね、良かったら治療させてください」
そう言って、セシリアは男の子の膝に手を翳すと治癒魔法を使った。
セシリアが手を離すと傷は跡形もなく消えていた。
「!ありがとうございます」
「痛く無い!お姉ちゃんありがとう!」
「何かお礼を…」
「大丈夫ですよ」
そう言ってセシリアは此方へ戻ってきた。
…優しいな。こういう所が皆んなから好かれる理由なんだろう。
アイスを食べ終え、歩いているうちに市場へ差し掛かった。今日も賑わっているなか、何処からか喧嘩の声が聞こえてくる。
セシリアも気づいたのか、何か思案してふと呟いた。
「そう言えば、先日のお茶会でも些細な事で怒鳴り合いをされている方がいて……。最近多い気がするんです」
薬の影響か…
俺は沈んだ空気を変える為、公園に向かうことにした。
「ちょっとそこの木陰で休んで行こう」
「はい。私、今日はお弁当を作ってきたんです!」
「それは楽しみだな」
メイドから包みを受け取り広げて行く…。
重箱か?
一段、二段、三段…四段?…五段?!
え?え?多く無いか?
「セシリア…。何人分なんだ?」
「こちらは二人分ですよ」
「ちょっと、多く無いか?」
「普通ですよ?」
ちらりとセシリア付きのメイドをみる。
サッと目を逸らされた…。
俺の護衛を見る。
首を横に振っている…。
「とりあえず、食べようか!どれも美味しそうだな」
「アルディス様の為に心を込めました」
「ありがとう」
俺は弁当から一つとり、口へ運ぶ。
…美味しい。
セシリアは料理も上手いんだな。元のアルディスはどうしてこんな良い婚約者に冷たく出来たんだ。
そんな事を考えているうちに、気づけば弁当の半分は消えていた…。
え?俺、そんなに食べたか?
誰が…
メイドを見た。
…また目を逸らされた。
護衛騎士を見た。
…首を横に振られた
……セシリアか。
料理を食べ終わったところで、ほとんど食べれなかった。セシリアがデザートにプリンを出してきた。
「アルディス様、デザートも作ってきたんです!」
「ありがとう、とても美味しそうだ」
一口食べる。
………!これは!
砂糖と塩を間違えている!
「アルディス様、お味は如何ですか?」
「あ……あぁ。お、美味しいよ」
「そうですか!良かったです!では私も…」
俺が止めようとする前に、セシリアがプリンを食べた。
「!…す、すみません!私砂糖と塩を間違えたみたいで!」
「いや、大丈夫だ」
「私ったらこんな物をアルディス様に食べさせるなんて…」
ヤバいな、セシリアが泣きそうになっている…。
俺は慌てて慰める。
「セシリアが心を込めて作ってくれたのはよく分かってる。それに他の料理はとても美味しかった。セシリアさえ良ければ、また作ってくれないか」
「アルディス様…!はい!」
セシリアも笑顔にもどった。
なんとか無事に慰めてられた様だ。
少々トラブルはあったものの、無事に今日のデートも平和に終わった。




