第十九話 本好きの図書館員
「次は……誰に会いにいこうか」
ふと、攻略知識の中にある一人の人物を思い出す。
リベル。
ゲームでは仲間にはならないNPCだが、俺は結構気に入っていた。
図書館の便利NPCで、歴史や地理、各国の情勢まで何でも教えてくれる。
さらに珍しい本を持っていくと、普段は聞けない話までしてくれるという、隠し要素の多いキャラクターだった。
「今なら、仲間に誘えるかもしれない」
ゲームでは叶わなかったことも、この世界なら叶えられるかもしれない。
それに――。
この世界の歴史や国々について詳しい人物が味方になれば、今後きっと力になってくれるはずだ。
「よし、王立図書館へ行こう」
街の中央寄りに建つ王立図書館。
中庭には建物よりも高く大きな一本の木がそびえ立ち、その姿が図書館と調和し、穏やかで静かな空気を醸し出していた。
中は静まり返って、微かな音楽と紙を捲る音だけだ。
俺は周りを見渡して目的の人物を探す。
本棚に並ぶ本の背表紙を眺めながら、いくつか棚を通り過ぎたあとに、目的の人物を見つけた
…いた。
リベルだ。
丁度ハシゴに登って本の整理をしていた。
俺が見つけたのと同時にバランスを崩した。
「うわっ」
「大丈夫か?」
「あ、はい!ありがとうございます!」
立ち上がりこちらを改めて見てきたリベルの目が大きく見開く。
「え?…え? アルディス…侯爵?」
「怪我はないか?」
「はっ!いえ、ありません!お手を煩わせてしまい申し訳ありません」
…ええ、ちょっと俺、怖がられてないか?
元アルディスの評判か?!
くそ〜!こんな所にまで知られているってどんだけ性格悪いんだよ!
「謝らなくていい」
「しかし…」
「大丈夫だ、それにこれで怒る様なら最初から助けない」
「それなら…。改めて、助けて頂きありがとうございました」
「私は図書館員のリベルと申します」
「俺は知ってると思うが、アルディスだ」
「はい!アルディス様ですね。もしよろしければ、お探しの本など案内致しますが?」
「今日は本ではなく人に会いに来たんだ」
「そうなのですね図書館員でしたら、お呼びしましょうか?」
「いや、もう会えたから大丈夫だ」
話した感じ、概ねゲームのリベルと同じだな。もう少し話したいんだが…。
お茶に誘ってみるか。
「少し君とも話したいんだが、時間はあるか?」
「ええ、少しお待ち頂ければ大丈夫です」
「ではあそこのテラス席で待っている」
「わかりました。すぐ行きますね」
リベルを待っている間、図書館のテラスで紅茶を飲む事にした。
…クラウスの入れたやつの方が美味いな。
「お待たせしました」
「ああ、リベルも何か頼むと良い」
「いえ、私は…」
「勝手に頼むが、同じもので良いか?」
「はい、大丈夫です」
俺は紅茶を注文した。
さて、何を話そうか。
本来なら、リベルには知りたいことがある時に話しかけるか、珍しい本を持っていくくらいだった。
だから、こうして特に用事もなく話そうとすると、意外と話題が思い浮かばない。
俺が考え事をしていると、リベルの方から話しかけてきた。
「アルディス様は噂とは随分印象が違いますね」
「そうか?」
「はい、その…もっと…近寄りがたい方かと…」
随分言いにくそうにしてるな、最後の方は、小さすぎて聞き取れそうにないくらいだった。
しかし、やっぱり元アルディスの評判か…
流石に変態な方面は知らないよな?
…知ってたら泣けるんだが。
俺は話を変えようとリベルについて質問してみた。
「リベルは図書館員になるくらいだ、本は好きなんだろう?普段はどんな本を読むんだ?」
「そうですね、本は大好きです。どんな本でも読むのですが、最近読んでいるのは遺跡の本ですね」
「遺跡?」
「はい。わりと最近、新しいものが、いくつか発見された様で、それについての論文が本になっています。なんでも遺跡の奥には、術式が刻まれた碑石があり、まだ解明されていないらしく。推測はいくつか上がっている様で、その事についても書かれています」
本のことになると、途端に嬉しそうになるところはノアに似ているな。
「へぇ、面白そうだ」
「アルディス様も本はお好きですか?遺跡に興味ありますか?」
「ああ、結構読む方だとは思うし、その話にも興味が出た」
「まだ一般の観覧は禁止なのでお見せできないのが残念です」
「では、また来るから、リベルが読んで概要を聞かせてくれないか?それにリベルの感想も聞きたい」
「!…いいですよ」
リベルは誰かに本の感想などを、伝えられる事が嬉しい様だ。
「俺の方も珍しい本があれば持参しよう」
「本当ですか!?…嬉しいです」
リベルが頬を染めて喜んでいる。
…攻略知識では見た目は13歳くらいなだけで、確か実年齢は俺と同じくらいなはず。
どうみても少年なんだが、もしかしたらこの世界のリベルは13歳なのか?
…それとなく確認しとこう。
「そういえば、リベルはいくつなんだ?」
「年齢ですか?23になります」
「…見えないな」
「よく言われます。なんかみんな子供扱いしてくるんですよね、たまに女性が頭を撫でてくる事もあって、アレ結構恥ずかしいんです」
そういえば、ゲームの世界でも一部の女子から「可愛い」と言って人気あったな。
やっぱり本人も複雑だったんだ…。
一通り話した後、そろそろ帰ろうかと椅子から立ち上がると、じっとリベルが見てくる。
「アルディス様…」
「ん?」
「…次に会えるのを楽しみにしています」
ちょっとはにかんで嬉しそうに言ってきた。
…可愛いな。
え?え?俺そっちの性癖もあったりしないよな?!




