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攻略知識が役に立たない世界でした〜悪役貴族に転生した俺は、変態体質と死亡グラフを無くしたい〜  作者: 洸夜 真琥
第一章 ゲームにはない世界

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第十八話 変わり者魔術師との共同研究

薬の鑑定も、夜会についての調査も続いているが、大きな進展はまだない。

だからこそ、俺は再び王都西地区へ向かうことにした。


「今日はノアのところへ行くか」

「お供いたします」

クラウスが当然のように答える。

「一緒に出るのか? てっきり先に行くのかと思った」

「先日の清掃から、まだ三日ほどしか経っておりませんので」

「……だといいな」




研究所へ到着し、扉を開ける。


「!…………」


クラウスが固まってしまった。

珍しくショックを受けている様だ。

まぁあれだけ前回綺麗にしたもんな…。

俺は部屋の中を見渡し、小さくため息をつく。

床には本が散乱し、机には怪しい薬品。

飲みかけのコップ。

いつ爆発してもおかしくない実験器具。

三日前に綺麗になっていたとは思えない。


「やっぱりか……」


部屋の奥ではノアが本を読みながら顔だけこちらへ向けた。


「来たか」

「来たぞ」

「今日は何を見せる」

「混合魔法の続きをいくつか考えてきた」


その一言で、ノアの目が少しだけ輝く。


「全部見せてくれ」

「全部?」

「一つ見たら続きも気になる」

「そうか、部屋の中じゃ危ない。裏庭へ行こう」

「分かった」

「いってらっしゃいませ」

「ん?クラウスは来ないのか?」

「ええ、少々気になることがありますので。ノア様と先に裏庭へ行かれてください」

「……分かった」

クラウスが何をするのか予想がついた。


裏庭は予想通り荒れていた。変なガラクタ?実験道具?も置きっぱなしでそのままだ。

ノアは腕を組みながら俺を見てくる。早くしって顔だな。


「じゃあ始めるぞ」

「まずは水と火だ」


ノアが眉をひそめる。


「水と火?」

「その二つは対極だ」

「普通は成立しない」

「まぁ、見てな」


まず、水球をつくる。

そこへ火を水球を囲うようにしてだす。

二つの魔力をぶつけるのではなく、互いを包み込むようにゆっくり制御する。


ジュッ……

白い湯気が立ち上る。

さらに魔力を送り込む。

辺り一面へ白い霧が広がった。


「霧……」

「視界を奪うこともできる」


俺はさらに魔力を圧縮する。ギリギリまで圧縮し、それを少し離れた所へ投げた。


ドォン!!

白い蒸気が爆ぜ、衝撃が周囲へ広がった。


「……!」

「対極にある二つを組み合わせる発想……」

「それを安定して制御している……」

「しかも威力も十分……」


ぶつぶつと呟いた後、勢いよく顔を上げた。

あ、あの顔は…


「他は!他のも見せてくれ!!さあ!さあ! 早く!!」

「近い近い!」


顔が目の前まで迫ってくる。

やっぱりな、研究のことになると、本当に別人だ。


「次は水と風だ」


今度は細い水流を作り、その周囲へ風を纏わせる。

風が水を高速で回転させる。


「行くぞ」


シュッ!

水流は細い光線のように一直線に飛び、木の板を貫通した。

水が当たったあとには綺麗な丸い穴が開いている。


「……貫通した」

「普通、水魔法は塊で飛ばす」

「こんな使い方は見たことがない」

「水は火より制御しやすいからな」

「細くして風で回転させれば威力も上がると思った」


ノアは穴を見つめながら何度も頷く。


「面白い……。実に興味深い」

「ええ、流石アルディス様ですね」


後ろから声がしたので振り返る。

うお!驚いた…いつの間にクラウスは来てたんだ?!

気配がなかった…。

俺はちょっと心を落ち着かせてから、クラウスにあれを見せてみようとおもった。


「クラウスが好きそうな使い方もあるぞ」

「私が、ですか?」


今度は威力を落として壁へ向けて放つ。

シャァァァッ――

水が壁を流れ、付着していた煤や汚れがみるみる落ちていく。

そこだけ新品のように白くなった。


「どうだ?威力を調節すれば、洗浄にも使えるんだ」

「……」

「クラウス?」


興味あるかと思ったけど、そうでもなかったのか?


無言のままクラウスは壁へ近付き、指先で軽くなぞる。指に汚れは一切付かない。


「……」


しばらく黙っていたが、静かにこちらを向いた。


「アルディス様」

「これは革命かもしれません。屋敷の外壁、鎧、馬車、石畳……。様々な用途で活用できます。ぜひ私も習得したい魔法です。いえ、執事として習得しなければなりません」

「やっぱり食いつくところ、そこなんだな」

「執事として当然です」


即答だった。

横でノアが首を傾げている。


「戦闘より掃除……?」

「クラウスだからな」


「まぁ、次は単体魔法だ。と言ってもちょっと違う使い方をする」


俺は地面へ手をかざす。

土が盛り上がり、小さな人形を形作っていく。


「土人形か」

「ここまでは普通だ」

「ここからだ」


ポケットから小さな魔石を取り出し、人形の胸へ埋め込む。


魔力を流し込む。

淡く魔石が光った。


「歩け」

「止まれ」

「右を向け」


命令に合わせてゴーレムが動く。ちょっと動きはぎこちないが、初めてにしてはいいだろう。


「……!」

「土人形は基本魔法だ、普通は術者が常に操作する。それが操作をせず命令だけで動くだと?」


さらに顔が近付く。


「仕組みは?もっと複雑な命令は?活動時間は?戦わせられるのか?改良できるか?」

「近い近い!」


俺は苦笑する。


「まだ試作段階だ」

「これ以上はこれから考える」

「なんでこんな発想になる?」


少し考え、俺は笑った。


「男なら一度くらい考えないか?」

「自分だけのゴーレムが自由に動いて、一緒に戦ってくれるって、クラウスも思うだろう?」

「…男のロマンですか、否定は致しません」

クラウスにも心当たりがある様だ、若い時に憧れたのだろうか…。

ノアは数秒黙り込む。


「……」

「まぁ、人形が動けば良いなどは、子供の時に考えるな」

「だろ?」

「でも普通は妄想で終わるし、大人は考えないから、作ろうとは思わない」

「でもやれるならやりたいだろう?試したくなる性格なんだ」


ノアは深く息を吐いた。


「変な奴だ」

「よく言われる」


一通り披露し終わる頃には、日も傾き始めていた。

ノアはまだ興奮が冷めない様子で、何冊ものノートへ何かを書き込んでいる。

俺はそんな姿を見ながら口を開いた。


「ノア」

「なんだ」

「俺の仲間にならないか」

「仲間?」

「一緒に研究してほしい。俺は発想を考える、ノアはそれを研究して、実用できるようにしてほしい」


しばらく沈黙が続いた。

やがて、小さく口元が緩む。


「……面白そうだな」

「本当か?」

「ああ」


俺は思わず笑みを浮かべた。


「決まりだ」

「この場所じゃ研究にも限界があるだろう。俺の屋敷に、ノア専用の魔法研究所を作る。そこで好きなだけ研究したらいい」


ノアの目が大きく見開かれた。


「……専用?」

「ああ」

「必要な設備も揃えるし、素材も用意しよう」

「……待ってる」


しばらく何も言わなかったノアだったが、小さく頷く。

その声は、今まで聞いた中で一番うれしそうだった。

こうして俺は、変わり者の魔術師ノアという、心強い仲間を迎えることになった。


帰り際、クラウスがノアに話しかけている。なんだか、圧を感じる。…ノアがちょっと引いてるんだが。


「ノア様。是非、引越しまではこのまま現状維持でお願い致します」

「……」

「お願い致します」

「…努力する」


クラウス…やっぱり許せなかったんだな。

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