GWの観測会〜俺たちの観測会はこれからだ編〜
本編第14話『GWの観測会』の後のエピソードです
少々マニアックなお話ですがよろしければ
「そろそろ時間なので、機材の撤収お願いします」
星空に魅入られて、どれくらいの時間が経っていたのだろうか。
退場してしまった幸田部長の代わりに、松井先輩と佐藤先輩が中心となって機材の撤収の指揮を取る。
「全く、最後の最後まで退屈しないね」
どこか淋しげだけれども、楽しそうに笑う松井先輩。
「⋯⋯大丈夫、新しい星達も輝きを増しているから」
引き継ぎを終えて、ほっとしたのか満足気な竹内先輩。
「フフフ、物語は終わらないわよ」
都築先輩の物語については、不穏な気がするのでスルーしよう。
「これでだいたい片付いたかな」
「お疲れ様でした。終わったら炊事棟に集合お願いします」
荷物をまとめて、高木先生の車に積み込んだ後、僕達は結星先輩の案内で再び集合していた。
「それでは、あらためて先輩方お疲れ様でした」
入部からほぼ1ヶ月経たない間だったけれども、星の動きや星座について教えてくれた竹内先輩。
星の種類や性質について自分で撮った写真と共に解説してくれた松井先輩。
神出鬼没で謎の知識を披露してくれた都築先輩。
短い間だったけれど、初心者の僕にも優しく教えてくれたおかげで今こうして、星空を楽しめる事が出来ている。
僕にとって初めての観測会は、ただ言われるがままだったけれど、来年の今頃は少しは成長して、この場所に立っているのだろうか。
そんな事を思いながら先輩達を見送った後、僕達はあらためて部室に戻り、機材の片付けとメンテナンスをしていた。
「軽く拭くだけでいいからね」
先輩達の指導に従って、機材に付いていた土や湿気を拭き取って風通しの良い窓ぎわに置いていく。
「お疲れ様!! 後は任せておけ!!」
「えっ、いいんですか?」
そう言うと、メンテナンスの終わった機材とは別の大きなリュックをごそごそとやり出す遠山先輩。
機材を収納するまでしばらくかかるはずだけれど、もしかして、後の片付けは、任せて帰ってしまっても良いのだろうか。
ただの、脳筋⋯⋯じゃなくて、アウトドア好きな先輩だと思っていたけれど、本当は責任感の強い先輩なのかも。
「違うよ〜。遠山君達はただの趣味だから〜」
「趣味?」
宮前先輩の説明によると、遠山先輩と佐藤先輩はこの後、別の観測もするらしい。
「⋯⋯流星群、ですか?」
話の輪に結星先輩も加わって教えてくれたのは水瓶座η流星群という天体ショーがあるらしい。
「ハレー彗星からのお土産ね」
水瓶座なのにハレー彗星?
確か76年くらいに地球に近づく彗星だったっけ。
「流星群の◯◯座というのは、流星群の中心になっている見える方角に見える星座から付けられるのよ」
流星群の正体は彗星が残していった塵がほとんどなんだとか。
ハレー彗星の残していった塵は今回のGWと10月にも流星群として観測出来るらしい。
今回の流星群は、深夜2時頃からが見ごろらしく、さっきのリュックの中にはキャンプ用のグッズが準備されているのだとか。
「そんな時間まで」
「本当は幸田部長も参加予定だったらしいよ」
この先そんな専門的な分野までついていけるのだろうかと少し不安になる。
「夏休みになったら、合宿で観測会があるからまた勉強しましょう」
うん、結星先輩と一緒に勉強出来るのなら楽しいかもしれない。
さっきの不安は一体。我ながら調子がいい話だとは思う。
「そういえば、1人分野営セットが余ったな⋯⋯」
ん?なんだか佐藤先輩がおかしな事を呟いたような⋯⋯
「確かにローテーション的にもう1人欲しいな!!」
あれっ、遠山先輩まで?
そういえば本当は、幸田部長が参加するはずだったのか。
「おい、信満」
「勝志さん、嘘ですよね」
佐藤先輩から突然名指しされて、何かを悟った様な大山君。
「大丈夫だ。家には俺からちゃんと説明しておくから」
「嫌だー」
もしかして、代わりの犠牲し⋯⋯観測当番を探している?!
「すいませーん。初めての観測会で疲れたのでお言葉に甘えてお先に失礼します」
「あ、ちょっと待ってよ」
大山君のそんな声が聞こえた気がしたけれど、僕は慌てて部室を飛び出して家へと急いだのだった。
GWが明けた後、僕と矢口君、高塚さんの3人はろくろく眠れずに明け方まで先輩達に付き合わされた大山君の苦労話を、延々と聞かされる羽目になったのだった。




