GWの観測会(2026版!?)
「牧田君、大変よ!」
その日天文部の扉を開けた瞬間、結星先輩が僕の姿を見つけて駆け寄ってきた。
いつもは落ち着いている結星先輩のその様子に、僕は、一体何が起きたのかと思わず身構える。
「落ち着いて下さい、先輩。一体何が」
「あのね、古くなっちゃったの」
「古くなっちゃった?」
何か部室に期限がきれるような物が置いてあったっけ。
もしかして、宮前先輩が家庭部で作った試作品かな。
「違うの。ネタが古くなっちゃったの」
ネタ? やっぱり生ものがあったのか。
「そうじゃなくて、観測会の話よ」
「観測会?!」
「ほら、本編って、作者が書くのが遅くて週一更新だから、GWの観測情報が去年の物なのよ」
「えっ?!」
なんだかおかしな展開になってきたな⋯⋯
「あのね、今年は月齢も違うし、火星だってそんなに明るく無いし、このままじゃ読者さんが勘違いしちゃうでしょ」
「先輩、メタ過ぎでは?」
「とにかく細かい事はいいから2026年度版をやり直すのよ!」
「嘘でしょ?!」
◇ ◇ ◇
ーー気がつくと僕は、自然公園の芝生の上に立っていた。
周りを見渡すと、夕闇の迫る夜空に向けられた望遠鏡と部員達の姿が見える。
久しぶりに見る竹内部長達の姿も⋯⋯そういえばこの観測会から、幸田部長と結星先輩に引き継がれたのだったっけ。
「幸田君ならさっき病院へ行ったわよ」
「そうだ、確か乱入してきた犬に追いかけられて⋯⋯」
「犬じゃ無くて、蜂に刺されたのよ」
「あれっ?」
「あっ。これは没ネタの方だったわ」
「えっ?」
「いつかやるかもしれない話の為に変更したのよ」
結星先輩が何を言っているのか良くわからないけれどスルーしておいた方が良いのかも。
「だいたい、毎回よく分からないネタを仕込んでおくから余計に本編を書くのが遅れるのよ」
腰に手を当てながら少しむくれる結星先輩も可愛いな。
「とにかく、これ以上余計な事を考えていると、このお話が間に合わなくなるからさっさと進めるわよ」
なんだかよくわからないけれど、とりあえず結星先輩に言われるがままに僕は観測場所へと向かっていった。
◇ ◇ ◇
「それじゃあ、そろそろ始めましょうか」
「まずは初心者でもわかりやすい、金星から見つけてみよう」
先輩達の案内に従って暗闇を増していく西の空を見上げると、少し黄色がかかったひときわ目立つ星をすぐに見つける事が出来た。
「あんなに明るいんですね」
「この時期の金星は太陽と月の次に明るい星だから」
今までは何気なく見上げていた星達、明るさなんて気にした事は無かったけれど、確かにその存在感は他の星達とは全く違っで見えた。
「今度はこちらで見てごらん」
セッティングしてあった望遠鏡であらためて観測すると一層目立つその明るさと迫力。
「綺麗ですね」
そのまばゆい輝きは確かに金色っぽく、美の女神、ビーナスと呼ばれるのもよくわかる気がした。
「そろそろ木星も見ごろだな」
言われるがままにもう少し左上の方角を見ると、もう1つ白っぽく輝く星があった。
「今年は並んで観測出来るからついてるな」
「贅沢をいえば月が少しまぶしすぎるけどね」
ちょうど今の時期は満月らしく、遅めの時間帯になるとかえって星の観測には向いていないそうだ。
「フラワームーンって言うのよ」
満月に名前があるんだ。
「今年の5月は31日にもう1回あって、こちらはブルームーンね」
その後も、木星近くに出ている、双子のカストルとポルックスの説明や⋯⋯
「ストップ!」
「?!。 いきなりなんですか結星先輩」
「その先は本編でやったからカットよ」
「いいんですか?」
「いいのよ」
こうして僕の初めての観測会は無事(?)終わったのだった。
⋯⋯こんな終わり方でいいのだろうか。
「いいのよ、番外編なんだから」
「だからメタいですって」
「そんな事より本編でも早くこれくらいの距離感になりたいわね」
「えっ」
「だいたい作者がすぐに脱線するのがいけない」
「先輩、それ以上は⋯⋯」
To be continued⋯⋯!?




