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惑星ガイアのものがたり  作者: Tossy
はじまりのものがたり2
421/426

174.配属希望

「配属希望先を4つ考えなきゃならないのか。」


勉強会でメンバー全員が集まった時にアンゲルが呟いた。


「そうですね。第一希望にならない事もあると書いてありましたね。」


モンさんも溜息混りに呟いている。


「ぅぅぅ。」


イルデさんは元気が無い。


今日配布された配属先の申請書の説明文書には4つの希望する配属先を記載することが厳命されていた。4つ記載されていない場合には希望していない研究室に配属することになるらしい。

希望する研究室がある場合にはかならず4つの希望先を記載しなければならない。


まあ、オレは未だ決めていないから、これから考えるだけなんだが、イルデさんみたいに最初から強く希望している研究室がある場合には他の研究室に回される可能性があるってのは辛いかも知れない。


配属先の希望調査と配属先の決定手順についての説明ではこんな事が記載されていた。


各自が希望する配属先は第一希望から第四希望まで4つの研究室を記載する。

各研究室の第一希望の人数が6人より多かった場合には准教授判断で6人を選択する。

選から漏れた場合には第二希望以下のいずれかの研究室で選択が行なわれる。

希望が集中した場合には各研究室の上限を調整して希望研究所のいずれかに配属する。

もし4つの希望が全て記載されていなければ希望は無かったものとして人員の少ない研究所に配置する。


まあ、妥当じゃないかな。このやり方だったら、希望しなかった研究室に無理矢理配属させられるって事は無い。


「これって、誰も希望しない研究室があったら、その研究室には配属する人が居ないって事かな?」


ハムがそんな事を言った。そんな事もあるかも知れない。でも、それは、仕方が無いんじゃないかな?


「それはオレ達が考えることじゃないだろう?」


アンゲルがハムに応えた。


「それは、そうだね。」


納得したのかハムは頷いていた。


「そんな事より、どう希望先を選択するかだよ。オレは石炭化学研究室一択だったんだけど、最初の6人に入らなかったら、他の研究室に配属するかも知れないんだろ。

まいったな……。」


「人気のある研究室は集中しそうですよね。」


「そうなんだよな。石炭化学研究室なんて一番人気があるんじゃないか?」


「そうかも知れませんね。でも、電気研究室とか機械研究室、天然物研究室といったところは人気があるんじゃありませんか?無機化学研究室は未だ良く分かりませんけれど屹度人気がありますよ。」


「えっ、天然物研究室も?」


「それはそうでしょう。私達が仮配属された時にはアセチルセルロースの工場を建てて、その後は魔骨レジンを作ってますから。実績が目に見える研究室は人気があると思いますよ。

私達みたいに考案税のお零れを貰えたり、自分の力で考案税を申請出来るかも知れませんでしょう?」


「そう……。」


「でもイルデさんは大丈夫じゃありませんか?キキ准教授とは仲良くしているのでしょう?」


「そうかな……。」


「そうか!これから准教授に取り入ればひょっとすると……。」


アンゲルが突然大きな声を上げた。


「それは、ダメだと書類に書いてありますよ。」


それにモンさんが応えた。


「えっ?何処に」


「ほら、最後のところに小さな字ですけど書かれてあります。」


そこには「なお研究業務の妨げになるような行為を禁止する。目に余る行為があった場合には希望を無効とする。」とあった。

これって、そういう意味だったのか。


「えっ、それじゃキキ准教授のところに遊びに行けなくなるの?」


「それはこの文が意味通りなら大丈夫じゃありませんか?気になるのでしたらキキ准教授に訊いてみたら良いと思いますよ。」


「分かった。」


イルデさんは、メーテスに来てからキキ准教授の元に週に2,3回の頻度で遊びに行っていた。色々と研究のアイデアを出し合っていると言っていた。

これは取り入るというよりは仲良く研究をしているという感じだな。


「うーん。真面目に他の希望先を考えなきゃならないのか……。」


アンゲルは唸り始めた。


どうやら今日は勉強会という訳には行かなそうだ。

一応、無機化学研究室の資料を貰っているけれど、教科書として以前貰ったものと然程違いは無かった。

比較的最近発見されて精錬に成功した金属についての記述があったが、資料の最後に記載されているだけだ。

それ以外は何時かの機会に読んだことのある内容だった。

仮配属が始まった頃ならばこの資料は必要だったかも知れないけれど、今となっては知っていることが殆どだ。

だから、今日の勉強会で急いで勉強するという必要もない。


「ハムやモンさんはどうするんです?」


オレは唸っているアンゲルを横目に見ながら訊いてみた。


「オレも天文研究室一択なんだけど、大丈夫じゃないかな。人気という点ではそれほど無いと思うんだよ。」


「私も気象研究室ですからね。大丈夫だと思います。でも万が一がありますから、好ましいところを選んで埋めておこうと思ってます。」


「そうだな。万一ってのがあるから、配属されても困らないところを選んでおくのは大事だな。」


「人気ってそんなに違いがあるのか?」


「ああ、あると思うよ。モンさんが言っていたみたいに目に見える成果がある研究室は人気だな。

旧同僚と希望先について話をすることがあるけれど、物理研究所だとやっぱり電気研究室や機械研究室は希望しようとしている連中は多いね。化学研究所だと、無機化学研究室や石炭化学研究室、天然物研究室が多いみたいだ。」


「分析化学研究室や薬剤研究室は?」


それまで黙っていたマラッカが口を開いた。


「希望しているヤツを見たことは無いな。」


とハム。


「そうですね。私もありませんね。」


モンさんも同じみたいだ。


「そうか……。」


マラッカは安心した様子で呟いた。


「そう言えばマラッカはどっちにするか悩んでたんだよな?」


「そうなの。でも今日の無機化学研究室で話を聞いて分析化学研究室にしようかなと思っている。

メーテスで何か新しいものを始めた時には分析化学研究室が一番最初に対応しているみたいじゃない?

何だか面白そうだと思ったのよ。

もし分析化学研究室の選択から落ちたら、薬剤研究室で可愛い鼠の世話をするわ。

分析化学研究室と薬剤研究室の両方ともそれほど人気が無いんだったらどっちかには入れるんじゃないかしら。」


「そうなのか。マラッカも決めたのか……。」


そう言えば、マラッカは今日の説明の時に頻りに分析の方法を訊いていたな。

しかし……あれほど鼠を嫌っていたのに、可愛い鼠の世話って……。

さて、オレはどうしようか。


「ミケルはどうするの?」


マラッカがオレに訊いてきた。


「未だ決めてないんだ。無機化学研究室の様子を見てから、ゆっくり考えようかと思っていたんだけど、早めに決めた方が良いかな。希望するところに配属されるとは限らないみたいだし。」


「そうか、まだ半月の猶予があるんだった。でも私は第一希望は分析化学研究室で第二希望は薬剤研究室で決めたわ。」


「なあ、今考え付いたんだけど、第二希望から第四希望まで人気の高いところにしたら、第一希望を優先してもらえるんじゃないか?」


それまで唸っていたアンゲルが突然声を上げた。


「さあ?どうでしょう。4つの希望のどこかに配属されるということしか決まってないみたいですけど。それで良いんですか?」


モンさんがアンゲルに応えた。


「いや……そうか……最初の選択で選ばれなかったら、そうなるのか……。やっぱり最初で選んでもらえないとダメってことか……どう思う?選ばれると思うか?」


「ギウゼ准教授がどう思っているかなんて誰にも分かりませんよ。」


「やっぱり直接訊きに行った方が良いのかな?」


「そんな事をして、研究の邪魔をしていると思われたら悲惨な事になりますよ。」


「そうだな。うーん。どうしようか……。」


「アンゲルはやけに第一希望にこだわるね。」


「ハムは良いよ。それほど人気の無い天文研究室を希望しているんだから。オレは石炭化学研究室に配属されたいんだよ。」


「何でそこまで拘るんだ?」


第一希望に拘っているアンゲルに訊いてみた。


「一番気に入ったからだよ。石炭ってのは何をするのにも必要だろう?

電気も石炭から作れるし、機械研究室で見た内燃機関を動かすのも石炭から取れたものだし。

オレの実家は鉄道が通ったことで凄く変わった。鉄道を動かしているのも、大型船を動かしているのも飛行船を動かしているのも石炭じゃないか。

これから王国中が石炭を使うことで発展していくんだよ。」


随分と強い想いがあるもんだと感心してしまった。


「それに、オレはこれまで生きてきてこういった事で望みが適ったことが無いからな。

魔法が使えなかったのもそうだし、文官になった時もオレは法務省や財務省に行きたかったんだ。

希望した配属先に配属されなかったのは成績がそれほど良くなかったオレの所為だけど。結局望みは適わなかった。

せめて、今回ぐらいは希望するところに入りたいじゃないか。」


初めて聞いたな。そんな事を想っていたのか……。

オレは、そんな風に想ったことがない。


魔法が使えなかったのは少しだけ悔しかったけど、弟が魔法を使えるのが分かって、両親が悲しそうな顔をしなくなったから良かったと思ってた。

文官になった時は何も考えてなかった。

ようやく実家に迷惑を掛けずに暮せると安堵しただけだった。


アンゲルに何と言葉を掛ければ良いか分からなくなった。


「きっと大丈夫よ。私達結構勉強したじゃない。准教授は随分勉強してますねって褒めてくれていたわ。」


何も言えなくなったオレとハムに代わってマラッカがアンゲルに声を掛けた。


「そうか?」


「そうですよ。屹度その努力を憶えていてくれてますよ。」


モンさんもマラッカに同調した。


「それなら良いんだが……」


「そんな風に思っているんでしたら、なおの事、変な工夫なんかしないで第一希望がダメだった時のことを考えて後で後悔しなくて良いところを選ぶべきですね。」


「そうだな。確かに。残りの9の研究室のうち良いと思える3つを選ぶってことか。」


「そうですよ。最悪でもその4つのどれかに配属させてくれるんですから、ちゃんと選んだ方が良いですよ。」


「確かにそうだ。」


アンゲルはようやく落ち着いた。

それから、皆でこれまで仮配属した研究室がどうだったかを話して勉強会の時間は終わった。


翌日の午前中はヨーランダ准教授の講義を受けた。

知っている事が大半だった。

どうやらヨーランダ准教授にもそれが分かったのか、今週の残りの日に最近の精錬方法の成果についての講義をすることになった。

そして、来週以降はケイ素単結晶の加工方法の検討に注力して欲しいと言われた。

アイルさんが希望している文官の仮配属が終了するまでに、ケイ素ウェハーの加工方法を完了させたいので協力をお願いするとも言われた。


オレは担当する切断の道具の切断方法の検討を行なった。


他のメンバーは、

アンゲルはチョコラルスキー法とフロートゾーン法の結晶成長条件の検討、モンさんとハムは研削条件の検討、イルデさんは研磨条件の検討、出来上がった結晶やウェハーの分析はマラッカと手が空いているメンバー、主にアンゲルが対応している。


結晶の成長については、良く良く話を聞くとニケさんの時間魔法を使って大体の条件は決まっていた。温度変動や回転変動の状況による結晶の出来具合を見るのが主な業務だという。

それは回転数や温度の制御装置のPIDというパラメーターの設定をして、回転数や温度の変化の記録を取って結晶の状態の確認をする。

総台数は8台と多いのだが、設定してしまえば何時間もただ待っているだけなので、一人で対応することになった。


台数は多いのだが、設定してしまえば何時間もただ待っているだけなので、一人で対応することになった。


それぞれの分担で作業を始めた。


准教授からは多結晶高純度ケイ素は失敗を怖れずに使って欲しいと言われた。

失敗したケイ素は、純度を上げる工程に戻して原料として使うんだそうだ。


その週はジーナは忙しかったのか研究室には現れなかった。


その週を終えた休日に、ジーナと待合せてボーナ商店に本縫いの衣装の確認をしに行った。

衣装を見てみたいというメンバーも付いてきた。


メンバーが一緒なのを見てジーナは驚いていたけれど、結婚式の衣装をメンバー達が見てみたいというのを了承した。


「あらあらあら。今日は大勢ですね。あら?アセチルセルロースの時の方達ね。」


リリスさんは、オレ達がアセチルセルロースを作る時に仮配属されていたのを憶えていたみたいだ。


「アイルさんとニケさんから結婚式で使う宝飾品を預かってますから、今日はそれも付けてみましょう。でも、吃驚しました。素晴しい宝飾品ですね。

宝飾品に合わせてジーナさんの衣装は少し変更させてもらいました。」


リリスさんに案内されて別室に入った。

部屋の中には店の従業員の人が何人か居て、部屋に入るとジーナはその人たちに促されて垂れ幕の向こう側に消えた。


オレもオレの衣装を着るために別な垂れ幕の中に入った。

今度は苦労することなくボタンを付けていった。

衣装は体に合っていた。問題は無さそうだ。


モーニングを着てみると、オレの上着は少しだけ形が変わっていた。

首から掛ける宝石が見えるように、胸のあたりが少し広く開くようになっていた。

アイルさんとニケさんに貰った宝石を首から下げて外に出た。


「おっ、お前はそんな格好をするのか?何だか見違えるな。」


アンゲルの感想にメンバー達はオレを見て頷いていた。


「どうですか?体には合っていますか?」


リリスさんがオレに訊ねた。


「ええ。大丈夫です。」


「そうですか。それなら良かったわ。」


メンバー達が興味津々といった感じでオレの方を見ている。


「何だか着慣れなくって。変じゃないか?」


「見慣れない衣装だけど、素敵ですね。」


マラッカは褒めてくれた。


「何だか高級な食事処の給仕みたいに見えるな。」


アンゲルには素見ひやかされた。


「近くで見たことが無かったけど変わった衣装ですね。」


ハムがそんな感想を言った。

オレは衣装がどうなっているのかとか、ボタンというものがあって、それを付けるのが少し大変だといった説明をした。

リリスさんは、オレ達が係わったアセチルセルロースで織った布を使っていると説明してくれた。

そんな話をしていたら、ジーナが垂れ幕の布の向こう側から外に出てきた。


先日見た衣装より豪華になっていた。


「わぁ。凄いわ。」


「そうですね。ジーナさん綺麗ですわ。」


「綺麗。」


ジーナを見た女性のメンバーは声を上げた。

ジーナはオレの傍までやってきた。


「ミケルどう?」


「……ああ。綺麗だ……。」


オレはそれ以上の言葉を出すことが出来なかった。

ティアラとネックレスが輝いていて、衣装も装飾が多くなっていた。

ネックレスに合わせて胸元が大きく開いていて、ジーナの豊かな胸が存在感を増していた。

オレとジーナは大きな鏡の前で二人で並んで互いの衣装を見た。


「おいおい。何だよこれは。」


「吃驚ですね。でもお似合いですよ。」


「そう?ありがとう。

でも、リリスさん。衣装の変更って少しじゃないですよね?」


「あの宝石を付けると衣装が負けてしまいますからね。折角の衣装が負けるなんて許せませんから。」


衣装の至る処に装飾のためのレース地の飾りがあった。

確かに前の衣装のままだったら宝飾品に負けてしまっていたかも知れない。

リリスさんは頻りにジーナに衣装に不具合が無いかを聞いていた。

ジーナの衣装は少し直すところがあったみたいで、何度か直しが入った。


結婚式の衣装の後はジーナはカクテルドレスに着替えて、オレはタキシードに着替えた。


女性達からは賞賛され、アンゲルとハムにオレは素見された。

どちらの衣装も宝飾品に合うように少し変更されていた。


「では、結婚式の前日に最終確認にいらしてくださいね。」


リリスさんにそう言われてオレ達はボーナ商店を出た。

色々と作業があったり、メンバー達の感想に付き合っていて大分時間が掛かった為、店を出た時には昼食に良い時間になっていた。先日リーサと一緒に食事を摂った食事処で、メンバーと一緒に昼食を食べることにした。

席に着いて昼食の注文を終えた。


「素敵だったわね。」


「そうね。思っていたより素晴しかったですね。」


「綺麗だった。」


マラッカとモンさん、イルデさんが其々衣装の感想を言った。


「ジーナさんが羨しいわ。私も結婚式をするんだったらあんな衣装を着たいわ。

でも、ミケルがダメだったから誰か相手が必要なのよね。」


「そうですね。お相手が居ないと結婚は出来ませんものね。」


「私は未だ良い。仕事が大事。」


「そうね。まず配属先で仕事に慣れないと。だけど何処に配属することになるのかしら。」


モンさんが不安気に呟いた。


「あら?希望した配属先に勤めるんじゃないんですか?」


ジーナは不思議そうに訊いてきた。


それからオレ達は配属先をどう決めるのかをジーナに説明した。

その間に注文した食事がやってきた。

昼食を食べながら説明を続けた。


「そんな風に配属先を決めるんですか。

あっ、そうか。何処かの研究室に希望者が殺到したら困ったことになるんでしょうね。どの研究室も大切な研究をしてますから。」


「それはそうなんだろうけれど、選択される側からしてみたら悩むよ。」


アンゲルが応えた。


「そうね。でも、こればかりは仕方が無いわよ。」


マラッカが諦め顔で言った。


「それで、ミケルはどこを希望するか決めたの?」


ジーナがオレに訊いてきた。


「いや。まだ決めてない。」


「でもあと2週間でしょ?」


「ああ、それは分かっている。幾つか候補は考えているんだ。」


「へぇ。何処?」


「いや、まだ決めた訳じゃないから。」


「気になるわね。」


「まあ、決めたら教えるよ。」


「そう。

あっそうそう。ミケルに伝えなきゃならないことがあるのよ。

結婚式の後の宴会する場所なんだけどね。マリエーレが困ってしまって神殿に相談したらしいのよ。」


「神殿?」


「ええ。何だか凄い人数になりそうじゃない?宴会が出来る場所が無いらしいの。」


「そうだな。オレが聞いた人数だけでも凄かったからな。それで、結局何人ぐらいになりそうなんだ?」


「d1,000人(=1,728人)を越えそうなのよね。」


「えっ。d1,000人って。本当か?」


「そうなのよ。

何だか凄いことになっちゃったわ。

大人数が収容できる宴会場を探したんだけど、神殿の他だとスタジアムとグラナラ城ぐらいしか無いんですって。

スタジアムもグラナラ城もマリムから離れているでしょ。

それで、神殿を貸してくれないかって相談したらしいわ。

神殿って災害が起こった時の避難所としても使える様になっているんですって。

そんな場合に備えて神殿はd100,000人(=248,832人)以上の人が収容できるそうよ。

大ホールならd2,000人までなら大丈夫らしいわ。」


「神殿で宴会しても良いのか?」


「結婚式に関連した宴会だから良いことになったみたい。」


「そんな事って……あるのか?」


「聞いたことは無いわね。」


オレ達が話しているのを聞いて、メンバーは驚いて食事を止めていた。


「d1,000人って何だよ。それ。」


「それって費用はどうするんですか?」


呆気に取られていたメンバーのアンゲルとハムが声を出した。


そうだ。d1,000人分の飲食代って、d1,000ガリオン(=3,456万円)は越えるんじゃないか?


「そうなのよね。でもどうにかなるのよ。」


どうにかなるのか?d1,000ガリオンだぞ。


「どうにかなるって言っても……」


「宴会の飲食費はご領主様やリリスさんやボロスさんが負担してくれることになっているのよ。それに他の有力な商店主や工房主はご祝儀をはずんでくれるくれるって言ってたわ。」


「えっ?」


「ご領主様の件はグルム・セメル宰相が伝えに来ててくれたわ。」


オレも含めたメンバー全員が絶句した。


ご領主様までジーナの結婚を祝ってくれるのか?


「ご領主様って、それはどういう?」


「ほら、先週ミケルが私達の結婚式が噂になっているって言ってたでしょう。

ちょっと気になったから、どういうことになっているのか調べたのよ。

それで忙しくなっちゃって。ミケルのところにも行けなかったわ。

ミケル、寂しかった?」


「いや……まあ、そうだな。」


ジーナが訪問してこなかったのはそんな理由だったのか。


「そう、寂しかったのね。ふふふ。」


「そうだな。

いや、そうじゃなくって、ご領主の侯爵様がどう関わっているんだ?」


「あっ、そうそう。

それはね。どうやらリリスさんは新しい衣装を売るために、ボロスさんは電子レンジや新しい道具類を売るために私達の結婚を大分宣伝していたみたい。

その所為でマリム中の話題になってて、宴会の参加者が増えたのよ。

侯爵様については、セメル宰相が言うにはニケさんの我侭から特殊な衣装で結婚式を挙げることになってその所為で騒ぎになって申し訳ないという感じかな。

その償いということで、宴会に出席する人が増えた分はご領主様やボーナ商店とエクゴ商店が負担してくれることになったのよ。

だから、神殿の大ホールにどれだけ人が集まっても、飲食代だけはどうにかなるの。

でもね。大事になっちゃった。

ミケル、ゴメン。」


「いや、それは良いけど。それよりジーナこそ大変じゃないのか?」


「まあ、今さらね。仕方が無いわ。」


しかし……。オレの結婚式にマリム中から人が集まるって……吃驚だな。

実家の連中はどう思うだろう……。

まあ、成る様にしか成らないか。


食後、オレとジーナは日用品の道具類を見て回ることにした。

一緒に居たメンバーは特に何もする事が無かったらしく、オレ達と同行することにした。


道具類を見て回りながら、オレはアンゲルとハムに素見され続けることになったのだが、それも仕方が無い。


夕食の飲み会をしてジーナと別れた。


その翌日から無機化学研究室での作業は淡々と続いていった。

講義が無くなった分、進み方が早くなったと准教授は喜んでいた。

最終週の始めには大体の条件を定めることが出来た。


アイルさんとニケさんがやってきて、コンビナートにケイ素ウェハーの工場を建てた。

相変わらずあっという間に出来上がってしまった。


仮配属の前日の勉強会の時間に、オレ達は配属希望の申請書を書いた。


メンバー其々が書いた希望を互いに見せ合った。


アンゲルは石炭化学研究室、無機化学研究室、天然物研究室、分析化学研究室。

モンさんは気象研究室 、物理研究室 、電気研究室、分析化学研究室。

マラッカは分析化学研究室、薬剤研究室、天然物研究室、物理研究室。

ハムは天文研究室、物理研究室、電気研究室、気象研究室。

イルデさんは天然物研究室、分析化学研究室、薬剤研究室、石炭化学研究室。


誰も機械研究室を書いていなかったのはハムとセテ准教授が言い争いになった所為だろうか?

オレも何となくあの准教授は苦手だったから、皆もそうなんだろう。

オレの申請書を見たメンバーは少し驚いていたけれど……。


翌日の勤務後、メンバー全員で申請書を事務棟に出しに行って、長かったオレ達の仮配属期間が終了した。

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