42話災厄との再会
「あれ? 逃げ出した負け犬君じゃないか」
ムラサメの部屋に入った、アユムの目の前には過去に自分を殺そうとした1人の男がいた。
「大輝、お前がなんでここにいる」
高そうな鎧や盾を身につけた大輝は、アユムを見ると笑った。
「ハハッ、なんで君なんかが一丁前に一級品の装備を持ってるの?」
そう言って、大輝が指さしたのはスズキがアユムに作った刀『滅龍刀・氷柱』だった。
大輝とアユムの間に漂う殺気に大輝の仲間が冷や汗をかいている横でムラサメは興味なさそうにそっぽを向いていた。
「まぁ、逃げ出した君になんて用はないよ」
大輝はアユムから目線を外すと、そっぽを向いているムラサメの方に目線を移した。
「それで、考えていただけましたか?」
考える?一体大輝はムラサメに何を。
「……なんのことだ?」
「いやいや、知らないフリをしないでくださいよ」
明るく笑っている大輝の目は笑っていないことを、その場にいたムラサメ以外は分かっていた。
「いや、知らないフリと言われても本当に知らないぞ?」
「お弟子君、この成金冒険者みたいな子と知り合いなの?」
「な、成金……僕は!」
大輝が大きな声で勇者と言うことを察したアユムは。
「こんな、悪趣味な金ピカ装備の知り合いなんていませんよ」
「悪趣味だと? 底辺のお前にそんなことを言われるとはな」
自分より下だと思っているアユムに馬鹿にされた大輝は怒りのあまり今にも剣を抜きそうだ。
「おい、大輝そう怒るなって」
怒りで理性を失ってる大輝に落ち着くように大輝の仲間が促すと、大輝も剣を抜くのはまずいと剣を抜くのをやめた。
「ったく、リーダーがそんなんでどうすんだよ」
「えっ、アンタがまともとかマジで珍しくね?」
「助かりました。このままだと、大輝君は剣を抜いていましたから」
大輝の後ろに並んでいる三人の仲間が順に安堵したのか口々に言葉をはっするが、三人の顔には恐怖の色が濃く出ている。
おそらく、ムラサメのただならぬ圧を感じとったのだろう。
もし、大輝が剣を抜いてアユムに斬りかかっていたら自分達の首は飛んでいたかもしれないと。
「ほら、リーダーもう一度ムラサメさんに聞いたらどうだ?」
「それも、そうか」
「先程は取り乱して申し訳ない、もう一度言う。我々の教官として王都に来て欲しい」
「教官? 君たちに私の剣術を教えろと言うことか?」
ムラサメに教官として、王都に来いだと。もし、ムラサメがオッケーしたら俺は……。
そんな、アユムの不安は一瞬にして無くなることになる。
「どうですか? 貴方の剣術や伝説は王都で聞いてきました。それに、伝説の侍ムラサメが貴方のような美しい人だなんて」
「えっ、嫌だよ? 私自分の好きな子にしか教えないし君みたいな女の人を裏で性欲のはけ口にしか思ってない人とか嫌だし」
「私も、ここにいても王都の知人から聞くんだよね。今回の勇者はどうしようもない女たらしってね」
ムラサメがズバズバと物事を言うものだから、大輝の怒りは再び沸点に達した。
「いい気にならないでくださいよ? 僕が女性に剣を向けないと思ってませんか」
そういうと、大輝はムラサメに勇者専用武器の聖剣を向けた。
あいつ、ムラサメに剣を向けやがって。
って、なんで俺はムラサメの心配をしてんだ。
「フンッ、その顔に傷をつけられたかなかったらお願いを聞いてもらえませんかね?」
「僕が世界一になるには、貴方の技が必要なんです」
返答次第では、大輝はムラサメに攻撃を仕掛けるだろう。
それでも、ムラサメは意思を曲げることはなく大輝の願いをあっさりと断った。
「だから、無理。君はタイプじゃない」
自分の好みじゃない……それだけの理由で断れるのはムラサメくらいだろう。
「そうですか」
そのまま、大輝は握っていた聖剣を握り直してムラサメに斬りかかって行くとその間に割って入る人物がいた。
「ムラサメさんを傷つけないで!」
フェンがムラサメの危機を感じて、持ち前の素早さを生かして2人の間に割って入ったのだ。
大輝の攻撃は割って入ってきた、フェンの肩にあたりフェンの肩からはおびただしい量の血が流れ出した。
「あーあ、ムラサメさん貴方がお願いを聞いてくれないから別の人に危害が加わったじゃないですか」
血のついた聖剣から血を拭き取っている大輝をみて俺はこの世界にきてから本気で人を殺したいと思った。
「てめぇ、ふざけんな。俺の相棒を!」
「お弟子君、今は一刻も早く回復魔法を!」
ニヤニヤと笑う大輝の横を通って、フェンの所に行こうとすると背中に鋭い痛みを感じた。
何があったのかと、後ろを向くと大輝が再び斬りかかってこようとしていた。
下から上へと斬り上げようとしていた聖剣はツルのようなものに巻きつかれていて微動だにしなかった。
「なんだ、このツルは!!」
「私の大切な友達とアユムさんを傷つけるなんて……絶対に許せない!!」
泣きながら、植物を操るドライアードのライの姿があった。
「魔物のくせに、勇者にたてつくんじゃねーよ」
大輝は腐っても勇者、冷静に火魔法でツルを焼き払うとライの髪の毛を掴み更にムラサメを脅し始めた。
「おい、弟子のアユムが大切なんだろ? なら、そのアユムの従魔を殺されたくなかったら言うことを聞いて俺にアンタの技術の全てを教えろ」
「いい加減にしろよ! 大輝」
「黙って……ろ? あれ、頭がクラクラする」
大輝は急に、ふらつき始めると床に倒れてしまった。
「大輝! お前ら何しやがった」
「マジで意味わかんないんですけど〜なんで大輝君が倒れてるの?」
「もしかして、あの子がやったんじゃ」
大輝の仲間の一人剣士の女の子が見る先にはさっきまで大輝に捕まっていたライがいた。
「今はそんなことより、フェンだ!」
さいわい、大輝の邪魔が短く済んだのでアユムの回復魔法で回復したフェンは軽い貧血で済んだ。
「君たち、勇者君は倒れたみたいだけど。まだやるの?」
ムラサメが刀を抜いて残りの三人に問うと、三人は意外にも素直に大輝を連れて引き下がっていった。
「ごめんね、お弟子君トラブルに巻き込んじゃって」
「いや、大丈夫だ。でも、教官になれって一体何が」
「いやー、私有名人だからさ」
ムラサメは上手くはぐらかして答えてはくれなかった。
なぜ、大輝にあんなにも……考えても答えは出てこない。
「お弟子君、君のお仲間も助けれたみたいだし本格的にこの国から出て行こうか」
「また、ここにいる限りこういうことがあるかもしれないから」
ムラサメと話し合った結果、和の国を出ることなり俺はフェンとライと一緒に荷造りをしてスズキさん達に別れを告げに行った。




