第38話早朝に鳴り響く音
「カンッ! カンッ!」
何だこの音?
昨夜の楽しい晩ご飯から、一夜明けトイレに行くために起きたアユムがトイレに行って用を済ませ部屋に戻ろうとすると。
スズキが経営している、お店の奥から。まだ、朝早いというのに、なにかを叩いているような音が聞こえてきた。
スズキさんが、何か作ってるのか?
何をしているのか気になったアユムがお店の奥にある作業場を除くと真剣な表情でハンマーを振るっている一人の男性がいた。
「スズキさん? 何を作ってるんですか」
アユムがスズキに近づいて聞いてみるが、黙々とハンマーを振るっているスズキから返事は返ってこない。
あれ?聞こえてないのか。
その、真剣さを見て邪魔をするのは悪いと思ったアユムは横でその作業を大人しく見ることにした。
まだ、うす暗い外から暗さが完全に無くなったあたりでスズキはその黙々と作業していた手を止めた。
「よし! こんなもんかな」
「おっ、終わったんですか?」
その、作業を終わるのを待っていたアユムはいつのまにか、その素人目から見てわかるほどのスズキの腕の良さに見惚れていた。
その、作業が終わったのを確認して気になっていた完成品を見ようとスズキに声をかけると。
まさか、すぐそばに人がいると思っていなかったスズキは驚いた。
「うぇっ!? なんで、いるの!?」
「いや、邪魔しちゃ悪いかなって」
作業中にかけていた眼鏡をクイッとかけなおし、作っていた物をサッと隠したスズキは平然を装って。
「そっか、結構時間も経ってることだし朝ごはんでも食べに行こうか!」
と話を変えようとするが、作っていた物が気になっていたアユムには意味が無かった。
「いや、その前に何作ってたんですか?」
たぶん、武器だと思うんだけどな。
「えーーと、言わなくちゃダメかな?」
「ぜひ知りたいです!」
その、好奇心旺盛な目を見て言わないのは可哀想だなと思ったスズキは隠すために被せていた布を取りアユムの目の前に置いた。
「これは……刀ですか?」
「あぁ、刀だよ」
やっぱり、武器だったのか。あの短時間でこんなカッコいい刀を作るなんて凄いな!
差し出された刀の鞘はアユムの装備しているワイバーンの鱗を白に色付けしてあり、刃の部分は透き通るような白さで無駄な装飾などが一切ない。
研ぎ澄まされた一品だった。
でも、何でこんな朝早くに刀を作ってたんだろう。
「あぁ、その顔は何でこんな朝っぱらから刀作ってんのこの人って感じだね」
考えていたことを、読まれたアユムは驚愕の顔をしたが君は意外と顔の表情が豊か何だよと言われる。
「じゃあ、何で刀をこんな時間に作ってたんですか?」
「うん、それはね」
「うん、それは?」
「君にいきなり、刀を渡して驚かせたかったんだよ! 驚く君を見てこの刀の名前はね的なことを言いたかったんだよ!!」
その、いきなりの熱量に驚くアユムにスズキは。
「異世界の先輩らしく、かっこいいところを見せたかったんだよ!!」
と力説した。
「なんか……すみません」
「いや、いいよ。ドッキリ失敗しただけだから」
そう言う異世界の先輩の背中はひどく悲しそうだった。
その後、しばらく落ち込んでいたスズキのご機嫌を取り僕の窮地が訪れたら最高の武器作ってくださいよと言ったら。
「確かに、これは最高とはまだまだ言えないな。うん! アユム君の窮地に伝説に残るような武器を『これ、使えよ』って渡す方が確かにかっこいいね!」
そう言って、機嫌をなおしたスズキは置いていた刀を手に取りアユムに手渡した。
「今の僕の腕と素材で作れる最高の刀だよ」
見た目的に寒さを感じさせる刀は触ってみると、冷たいということはなく。一人の職人の熱い気持ちが伝わってきた。
「さっきは、取り乱してごめんね」
「気を取り直して! 言わせてもらうよ。その刀の名前はね」
「滅龍刀【氷柱】だよ。ゲームにありそうだろ?」
「滅龍刀ってこの武器の素材格下の氷竜ですよ」
そう言ってツッコミをいれるアユムによく言ってくれたと言わんばかりの笑顔を見せた。
「そんなの、僕の腕で作れる最高の刀だよ? 格上の龍をも倒してくれって意味だよ!」
スズキさん、自分の腕に自信があるんだろうな。この世界に来て10年だからな……積み重ねてきた経験が違う。
「いやーー、滅龍刀シリーズに新しいのが入ったな」
待て、今新しいのが入ったって聞こえた。どういうことだ……まさか。
「スズキさん? 新しいシリーズって」
「いや、今まで氷竜は扱ってなかったんだけど、毒竜や火竜、雷竜って言ったいろんな種類の竜で刀を作ったからね。滅龍刀シリーズは僕の代名詞だよ!」
まて、アイツの持っていた刀も滅龍刀シリーズなのか?
「アイツの刀はどうなんだ!」
「アイツ? あぁ、ムラサメのことね! オリジナルだよ」
なんでだよ!!俺もオリジナルがいい。
シリーズ化してるのかよ……いやでも、氷竜は扱ったことが無かったということは。
「氷竜の刀としては一番目なのか?」
「うん、そうだね。まず、僕は素材は基本自分で集めてもらうからシリーズ化って言ってもあまり本数は出回ってないけどね」
「でも、氷柱って名前は日本を少し思い出すだろ? こっちでは、氷柱が通じないからね」
「でも、なんで氷柱なんだよ? 寒い日によく出来るとんがった氷だろ」
「いやね、刀を作ってる時に名前考えてたんだけどね。閃いたんだよ! どんな、硬い装甲も貫く刀……氷柱だ! って」
「まぁ、そんなガッカリしないで。君の窮地が訪れたら、素材さえくれればその時はオリジナル作るからさ!」
「まぁ、今はこれでいい。ありがとう」
そう言って、刀を鞘に納めると。礼をいい、絶対に専用の武器を作ってもらうと新たな決心をすることになった。
「お礼はいいよ、アユム君のおかげでシリーズも増えたしね。それに、楽しみも増えたしね」
「楽しみ?」
「うん、アユム君にオリジナル作る時にどんな景色が待っているのかなって……今から楽しみだよ」
「それ、どんな窮地が訪れるのかなってことだろ!」
「あっ、バレた? でも、異世界の人は色々と巻き込まれるのが定番だろう?」
そう言って、悪い笑みを始めてみせたスズキとそれに対して文句を言うアユムは。その後、ムラサメとフェンに新たな旅の前の休息として買い物や外食に連れ回されるのだった。




