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第37話和やかな時間

 

「で、これは一体どういうことだ?」


 指示された魔物を倒して、和の国に帰ったアユムが目にしたものは白のフリフリのメイド服を着せられたフェンとムラサメが料理を作っているところだ。


 慣れない手つきで、一生懸命野菜を切っているフェンの様子を見て癒される反面。


 慣れないことをさせて、怪我でもしたらどうしようという親心のような気持ちを抱いたアユムは横で熟練の技のような手際を見せるムラサメに事情を聞いた。


「あれ? もう、帰ってきたのお弟子くん。私の計算ではもう少しかかると思ったんだけどな」


 そりゃ、俺のステータスを把握しきれてないから予想も外れるよ。


「それより……」


「あっ! 気づいた? 可愛いでしょ!」


「あぁ、その服」


「そう、最近買った私の新しい部屋着! この、可愛さに気づくとはお弟子くん流石だね」


 なんか、噛み合ってないと思ったけど。お前の服が可愛いなって聞いたわけじゃない!


「違う! 俺が聞きたいのは、フェンの服だよ」


「えっ、違う」


 違うと聞いたムラサメの顔はさっきまでの元気いっぱいの状態から萎れた花のようになっていた。


「うん、そうだよね。お弟子くんが素直に褒めてくれるわけないよね」


 そんな、ムラサメをスルーしてフェンのとこに行こうとするアユムに一声かける人がいた。


「アユム君、女性には優しくだよ? ムラサメの顔を見たら分かるだろう?」


「何を言って欲しいのか」


「スズキさん、そりゃ分かってますけど」


 そう言って、アユムが落ち込んでいたムラサメの方を向くと味方を得て復活した様子でこちらを見て期待の眼差しを向けてきていた。


 これは、言うしかないか。なんか、悔しいから絶対面と向かっては褒めないからな。


「まぁ、アンタに似合っていて。結構、可愛いと思うぞ」


 それを聞いてガッツポーズをするムラサメとその様子を切なそうな表情で見るスズキを尻目に、ずっと会いたかったフェンの所に向かうと。


 未だ、野菜と格闘しているフェンがこちらの様子に気づいた。


「ご、ご主人様! えっ、えっ?」


 あれ?想像ではご主人様〜〜ってくると思ってたんだけどな、なんか歓迎されてない?


「どうした? 嬉しくないのか?」


「ちっ、違う! 嬉しい! でも、ムラサメさんにご主人様はまだ帰ってこないって聞いてて……それで」


 要するに驚いて、何が何だか分からなかったてことか。


 つまり、俺のことが嫌なわけではなかったのか。


「それにしても、その服どうしたんだ?」


 ずっと疑問に思っていた、前の世界であったメイド服を着ているのはどうしてと聞くと。


「これはね、リョウタさんが買ってくれたの! 男の人はこの服がとっても好きだって言ってたよ?」


 スズキさん、フェンに何余計なことまで教えてるんですか……。


「だから、ご主人様も好き?」


「うん、好き」


 そう言うまでが早かった、ムラサメの時のように考えることもなく。


 自分の気持ちに素直になり、抱きついた。


 ありがとう、スズキさん俺もメイド服大好きだよ。


「えへへ、ご主人様〜〜」


 その、蕩けるような顔のアユムとフェンの様子を見て嫉妬をするムラサメだが。


 二人の美男美女の邪魔をしてはいけないと本能が言っているのか、横にいたスズキリョウタをサンドバッグにする事で嫉妬を解消していた。


 そんの、スズキリョウタのおかげで二人の尊い命を失わずに済んだのであった。


 しばらくして、フェンとアユムの二人がお互いに満足した頃、素材集めが終わったのを思い出したアユムはスズキの所へと向かい素材集め完了の報告をした。


「あれ? スズキさん、なんでそんなにボロボロなんですか」


「ふふっ、ちょっと獰猛な獣に襲われてね?」


「まぁ、僕のことはいいじゃないか。それで、どうだったかい?」


 あぁ、素材集めのことを聞いているのか。


「バッチリですよ、途中でワイバーンに苦戦しましたが無事全て集めることができましたよ」


 そう言って、アユムがアイテムボックスから素材を取り出した。


「違うよ! そんな、ゴミ素材なんかどうでもいい。フェンちゃんのメイド服姿はどうだったのかを聞いてるんだよ!」


 ご、ゴミ素材なんかって……それを、必死に集めてた俺はどうなるんだよ。


 でも、フェンのメイド服に比べれば確かにゴミなのかもしれないな。


「スズキさん」


「なっ、なんだい?」


 アユムの気迫に驚いたスズキに放ったアユムの言葉は。


「アンタ、最高だよ」


 褒めの言葉だった。


「てことは、アユム君……君も、メイド服の良さがわかる仲間だったんだね!」


「あぁ、分かるよ!」



「フェンちゃん、おいでーー! 男達は盛り上がってるから、私と料理を作ろっか」


「うん! 作る、でもお野菜切るの難しいよ」


「大丈夫、今度は私が手伝ってあげるから!」


 与えなくていい情報からフェンを守るために、一緒に料理をしようと連れ出したムラサメのおかげもあるのか。


 メイド服の良さを熱く語る二人を邪魔するものがなくなったおかげで、より二人の会話に熱がこもる。


「でも、この世界にもメイド服なんてあったんですね」


「そうだよね、僕も驚いたよーーこの世界に来てから、城にメイド服を着たメイドさんがいたのは」


 うん?僕も?


「まさか」


 話のおかしな点に気づいたアユムが、スズキの方を見ると同じく遅れてそのおかしな点に気づいたスズキがアユムの目を見つめるという。


 腐女子しか喜ばないシチュエーションが出来上がってしまう。


「あのー? アユム君? 君、生まれってどこの国かな?」


「日本です」


 アユムがそう言った瞬間、スズキは懐かしい言葉を聞いたというような顔をしていた。


「君も異世界召喚されたんだね」


「そっか、やっぱり僕以外にも召喚されている人がいたんだね」


「僕はこの世界に来るまで、日本で学校に通っていたんだ」


 それから、スズキの昔話を聞いて分かったのは召喚された国は違うけど今から10年前同じ方法で勇者候補としてクラスメイトと一緒に召喚されたらしい。


 そして、その大半は魔王討伐と言われ。まだ、自分の能力を使いこなせないうちに戦いに駆り出され死んでしまったらしい。


「まぁ、僕の職業は鍛治だったからね。助かったんだけど、大切だった友達の死にすら立ち会えない無力感ってのは相当なものだったよ」


 そう言って、笑うスズキの顔は凄く悲しそうだった。


「そっか、でも久しぶりに日本人に会えて嬉しいよ」


「僕と一緒に召喚されて、今も生きているのは数人だからね」


「一人は、どっかの王様になったって言ってたな」


「いやー、メイド服語り合える男の子なんてこっちにはいなかったからね」


「王様っていうだから、その人も男なんじゃないのか?」


「だと思うよね? それが、姿を男の子に変えてる女の子なんだよね。固有スキルって言ってたね」


「へー、そんなのもあるのか」


「異世界って感じがするだろう?」


 その後も、日本での思い出を話しているとあっという間に夜になった。


 夜はフェンとムラサメが一緒に作ったご馳走が並んだ食卓を四人で囲んで賑やかな食事をとった。


「これ、唐揚げ?」


「アユム君、それは唐揚げなんだよ! 僕が、どうしても食べたくてこっちの世界の友人のムラサメにレシピを教えたんだ!」


「この、サクッとした衣とジュワッと溢れ出る肉汁……堪らないだろう」


「アンタ、本当に最高だよ」


 この世界に来て唐揚げが食べれるとはな。


「ご主人様、これ食べて!」


「これは、おにぎり!?」


 少し、いびつな形をした小さなおにぎりを持っているその手を見ると手が震えていた。


「ムラサメさんのように、上手くできなかったけど……頑張ったから、だから」


 お店で出てくるレベルのムラサメの料理を前にして自信を無くしたフェンを元気づけるためにも。


「食べるに決まってるだろ?」


 その、震える手からおにぎりを受け取ると豪快に一口で食べた。


 食べてくれた喜びと不安が入り混じった顔のファンに向かって。


「すっげぇ、美味いよ」


 それだけ言って、フェンの作った料理を次々と食べて始めから最後まで美味しいと笑顔で食べた。


 そんな、アユムの言葉に素直に喜びその後は、安心したのか大好きなご飯を美味しそうに食べ始めた。


「野菜も食うんだぞ? フェン」


「いっ、野菜……」


 アユムの差し出した野菜をさっき自分の差し出したおにぎりと重ねたフェンは、辛そうな顔をしながら野菜を口にした。


 頑張るフェンを応援するアユム達二人を楽しそうに見守る、ムラサメとスズキを含めた四人の楽しそうな笑い声に包まれながら。


 楽しい、晩ご飯の時間は過ぎていった。


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